【2021年3月施行】 改正会社法で創設された社債管理補助者制度とは?

コーポレート・M&A
金井 俊樹弁護士 三宅坂総合法律事務所

 当社は資金調達を行いたいと考えており、その手段の1つとして社債の発行を検討しています。その検討にあたり、社債の管理に関して調べていたところ、「社債管理補助者」という制度が最近創設されたことを知りました。
 この「社債管理補助者」という制度はどのようなものなのでしょうか。

 社債管理補助者制度は、社債権者のために、社債発行会社が社債の管理の補助を第三者に委託する制度です。
 社債管理者制度と同様に、社債権者の保護を図るためのものですが、社債管理者制度と比べて権限や裁量が限定され、より簡便に利用できる制度として、2021年3月に施行された改正会社法によって創設されました。

解説

目次

  1. 社債管理補助者制度の概要
    1. 制度創設の背景
    2. 社債管理者制度との比較
  2. 社債管理補助者の設置
    1. 社債管理補助者を設置することができる場合
    2. 社債管理補助者の資格
  3. 社債管理補助者の主な権限
  4. 社債管理補助者の主な義務

社債管理補助者制度の概要

制度創設の背景

 社債を発行する場合、会社は、原則として社債管理者を定め、社債権者のために、社債の管理を行うことを委託しなければなりません(会社法702条本文)。
 もっとも、実際のところは、会社法上の例外規定(会社法702条ただし書、会社法施行規則169条)を用いて、社債管理者を置かずに社債の発行を行うことが多いといわれています。この背景には、社債管理者は、広範な権限や裁量を社債権者のために適切に行使しなければならないという点で責任が大きく、また資格要件も厳格であるため、担い手の確保が難しく、社債管理者の設置コストも高くなるという事情がありました。
 他方で、社債管理者が置かれていない社債についてデフォルトが発生した場合に、社債権者が自ら権利行使を行うことの負担は大きく、社債権者の保護が十分に図られていないという問題点も指摘されていました。

 以上を踏まえ、改正会社法(2021年3月1日施行)によって、社債権者の保護を図りつつ、社債管理者制度よりも権限や裁量を限定し、それに伴って責任やコストも小さく利用しやすい制度として、社債管理補助者制度(会社法714条の2)が新たに創設されました。

社債管理者制度との比較

 社債管理者制度と社債管理補助者制度との共通点および相違点は、主に以下のとおりです。

共通点
  • 社債発行会社が第三者との間で委託契約を締結し、社債の管理に関する事務を委任する
  • 社債権者の保護を図るために設置される 等
相違点
  • 社債管理者と比較して、社債管理補助者はその権限や裁量が限定されている
  • 社債管理者と比較して、社債管理補助者はその資格要件が緩和されている 等

社債管理補助者の設置

社債管理補助者を設置することができる場合

 社債管理補助者は、社債権者が自ら社債の管理を行うことを前提として、その管理の補助を行うという位置づけとなっています。そのため、社債管理補助者は、社債管理者を定めることが必要とされていない場合(以下①の場合。会社法702条ただし書、会社法施行規則169条)に設置することができるとされています(会社法714条の2本文)。
 もっとも、この場合であっても、担保付社債の場合には、社債の管理は信託会社が行うことになるため(担保付社債信託法2条2項等)、社債管理補助者を置くことはできません。
 以上をまとめると、社債管理補助者を置くことができるのは、以下の(1)および(2)の双方を満たす場合です。

(1)社債管理者を定めることを要しない場合(以下①または②のいずれかの場合)

① 各社債の金額が1億円以上である場合

② ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50を下回る場合


(2)社債権者が有する社債が担保付社債ではない場合

 なお、社債管理補助者を設置する場合、社債の募集をする際に、社債管理補助者に関する事項を定める必要があります(会社法676条8号の2)。

社債管理補助者の資格

 社債管理者は社債の管理に関する広範な権限や裁量を有するため、社債管理者になることができる者は、その権限や裁量を適切に行使することが期待できる、銀行や信託会社等の一定の資格を有する者に限定されています(会社法703条、会社法施行規則170条)。
 他方、社債管理補助者は、その権限や裁量が限定されているため、資格要件が一定程度緩和されており、社債管理者になる資格を有する者のほか、弁護士および弁護士法人も社債管理補助者になることができるとされています(会社法714条の3、会社法施行規則171条の2)。

社債管理補助者の主な権限

 社債管理者は、社債の管理を行うために必要となる包括的な権限と広い裁量を有するのに対し(会社法705条)、社債管理補助者は、社債管理者よりも権限や裁量が限定されています。
 具体的には、社債管理補助者の法定権限は、社債管理者が有する権限の一部のみとされ(会社法714条の4第1項)、その他の権限は、委託契約で定める範囲内で発生する約定権限とされました(会社法714条の4第2項)。ただし、下記の約定権限のうち、②に属する行為の一部(社債の全部についてする支払請求、社債の全部に係る債権に基づく強制執行等)、ならびに③および④に属する行為については、社債権者集会の決議によらなければ行うことはできません(会社法714条の4第3項)。

法定権限
  1. 破産手続、再生手続または更生手続への参加
  2. 強制執行または担保権実行手続における配当要求
  3. 清算株式会社に対する債権届出
約定権限
  1. 社債に係る債権の弁済の受領
  2. 社債に係る債権の保全に必要な裁判上または裁判外の行為
  3. 社債の全部についてする支払猶予、その債務の不履行によって生じた責任の免除または和解、社債の全部についてする訴訟行為または破産手続、再生手続、更生手続もしくは特別清算手続に属する行為
  4. 社債の総額について期限の利益を喪失させる行為

 なお、約定権限については、委託契約により、上記以外の権限を付与することも可能であり、逆に上記の権限を除外または縮小することも可能です。

社債管理補助者の主な義務

 社債管理補助者は、主に「公平誠実義務」(社債権者のために、公平かつ誠実に社債の管理の補助を行う義務)および「善管注意義務」(社債権者に対し、善良な管理者の注意をもって社債の管理の補助を行う義務)を負います(会社法714条の7、704条1項、704条2項)。
 これらの義務は、社債管理者の義務と共通していますが、社債管理補助者は裁量の限定された権限のみを有するため、社債管理者と比較して、義務違反に問われるリスクは限定的であると考えられています。

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