親事業者が下請事業者に対して利益提供を求めることの問題点(利益提供要請の禁止)

競争法・独占禁止法
山本 翔弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 当社は、自動車メーカーの下請けとして自動車部品の製造を行っています。当社は、部品を製造するための金型について、自動車メーカーから支給を受けており、金型の所有権も自動車メーカーにあります。そのため、すでに製造が終了した部品の金型も廃棄することができず、倉庫の一部に大量の金型が長期間保管されている状態となっています。このように下請事業者に無償で金型を保管させることは下請法違反にならないのでしょうか。

 自動車部品等の製造を発注する時期を終えた後、親事業者が下請事業者に対し部品の発注を長期間行わない状況下において、下請事業者に無償で金型を保管させた場合には、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当し、下請法に違反するおそれがあります。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 「経済上の利益」を提供させる場合の具体例
  3. 金型の保管
  4. まとめ

はじめに

 下請法が適用される場合、親事業者には11項目の禁止事項が課されますが、禁止事項の一つとして、「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」(下請法4条2項3号)というものがあります。具体的には、下請事業者に製造委託等をした場合に、「自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」によって「下請事業者の利益を不当に害」することが禁止されています。

 「その他の経済上の利益」と書いてあるとおり、この禁止事項には、親事業者による様々な行為が広く該当する可能性がありますので、「下請代金の減額等、個々の禁止事項には該当しないが、下請事業者に不利益が発生しているな」と感じた場合には、「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に該当しないか否か検討することが肝要です。

「経済上の利益」を提供させる場合の具体例

 では、どのような行為が「自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」に該当するでしょうか。

 よく問題になるのが、下請事業者の従業員の無償派遣です。
 例えば、親事業者が営む店舗の新装開店セールなどにおいて、下請事業者の従業員を派遣してもらい、接客や販売促進活動を無償で行わせた場合には、親事業者が下請事業者から「経済上の利益」を提供させたと判断されるおそれがあります。
 また、親事業者の催事に対する協賛金を下請事業者に支払わせていた場合にも、「経済上の利益」を提供させたと判断されるおそれがあります(なお、協賛金を下請代金から控除することで支払わせていた場合には、別の禁止規定である「下請代金の減額の禁止」(下請法4条1項3号)に違反する可能性があります)。

 このように、協賛金、協力金等の名目を問わず行われる金銭の提供、労務の提供等の、親事業者による下請事業者に対する様々な行為が「経済上の利益を提供させる」に該当する可能性がありますので、注意が必要です。

金型の保管

 では、設例における下請事業者による金型の保管はどうでしょうか。

 まず、金型を用いた下請取引が継続している間に、親事業者が下請事業者に対し金型の保管を求めることは基本的に問題ありません。下請事業者が委託を受けた取引を遂行するうえで金型を下請事業者の支配下に留め置いておくことは不可欠だといえるからです。
 一方、すでに金型を用いた下請取引が終了している場合に、親事業者が下請事業者に金型を保管させ続けることは、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があります

 この点、親事業者の立場からすれば、「今は発注をしていないけれども、今後発注をすることがあるかもしれないから、金型を保管し続けてもらいたい」という場合もあるかもしれません。しかし、下請事業者は、金型の保管のためのスペースを確保しなければならず、結果として金型の保管のために費用が発生していることになります。そのため、新たな下請取引の発注の可能性がある場合であっても、下請取引の終了後、親事業者が下請事業者に対して金型の保管を求めることは、下請法に違反する可能性があります。

 このような場合、親事業者としては、最後の発注から一定期間発注がないものについては金型の返還を受けたり、下請事業者との間で金型の保管費用を別途支払うという合意を行って下請事業者に対して適正な保管費用の支払うことによって、「下請事業者の利益を不当に害」さないような措置を講じて、下請法違反と指摘されることを避けることが望ましいといえます。

まとめ

 設例の場合、すでに製造が終了した金型を含めて、倉庫の一部に大量の金型が長期間保管されているということですから、このように無償で金型を大量に保管させている親事業者の行為は下請法に違反するおそれがあります。 そのため、親事業者との間で、下請法の話も交えて金型の返還や金型の保管料について一度協議するのが望ましいでしょう。

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