卸売業者が関与する場合の取適法(改正下請法)適用判断
競争法・独占禁止法 更新当社(資本金5億円)は食品・飲料の小売業者です。当社は、当社が販売するPB商品を卸売業者A社から仕入れており、卸売業者A社は、お菓子の製造業者であるB社にこのPB商品を製造させています。卸売業者A社の資本金は2億円、製造業者B社の資本金は1億円ですが、この取引に取適法(改正下請法)が適用されることはありますか。また、仮に取適法が適用される場合に留意すべき事項があれば教えてください。
卸売業者が関与する取引では、卸売業者が取引内容の決定等に関与しているか否かによって、誰と誰の取引関係について取適法(改正下請法)上の資本金に関する基準または従業員に関する基準を判断するかが異なってきます。そのため、卸売業者が関与する取引において取適法の適用の有無を判断するにあたっては、卸売業者に委託している業務の内容が何かという点に留意して判断する必要があります。
具体的には、卸売業者が取引内容の決定等に関与している場合は、小売業者・卸売業者間の取引と、卸売業者・製造業者間の取引それぞれについて、取適法の適用があるかを検討することになります。他方で、卸売業者が取引内容の決定等に関与していない場合は、小売業者から製造業者に対する製造委託であると考え、その製造委託に対して取適法の適用があるかを検討することになります。
なお、卸売業者が取引内容の決定等に関与していない場合で、小売業者から製造業者に対する製造委託に取適法が適用される場合、委託事業者としての取適法上の義務を負うのは小売業者になり、小売業者に対して取適法上の遵守事項の規定(取適法4条)が適用されることになります。
解説
目次
取引内容による取適法の適用判断
事業者が業として行う販売の目的物たる物品の製造を他の事業者に委託することは、取適法(改正下請法)上の「製造委託」(取適法2条1項)に該当します。そのため、食品・飲料の小売業者または卸売業者が、お菓子の製造業者にPB商品の製造を委託することは、取適法上の「製造委託」に該当します。

資本金基準または従業員基準による取適法の適用判断
そして、物品の製造委託に該当する場合で、①資本金3億円超の法人事業者が資本金3億円以下の法人事業者または個人事業者と取引をする場合と、②資本金1,000万円超3億円以下の法人事業者が資本金1,000万円以下の法人事業者または個人事業者と取引をする場合、または③常時使用する従業員数が300人超の法人事業者が、常時使用する従業員数が300人以下の法人事業者または個人事業者と取引をする場合は、取適法の適用を受けることになります(取適法2条8項・9項)。
詳しくは、「下請法が適用される製造委託とは」を参照ください。

それでは、小売業者が卸売業者から商品を仕入れ、卸売業者が製造業者に製造を委託している場合には、取適法上、誰を委託事業者、誰を中小受託事業者としてこの資本金基準または従業員基準を判断するのでしょうか。
卸売業者が取引内容に関与している場合
公正取引委員会は、この点について、卸売業者が、製品の仕様や中小受託事業者の選定、製造委託等代金の額の決定等の取引内容に関与している場合には、小売業者が委託事業者となり、卸売業者がその中小受託事業者となり、また、それとは別に卸売業者が委託事業者となり、製造業者がその中小受託事業者となり、それぞれの関係で資本金基準または従業員基準を判断するとしています。

卸売業者が取引内容に関与していない場合
また、これとは異なり、卸売業者が製造委託の取引内容にまったく関与せず、注文書の取次ぎや製造委託等代金の請求、支払い等だけを行っている場合は、小売業者が委託事業者となり、製造業者がその中小受託事業者となり、小売業者と製造業者との間で資本金基準または従業員基準を満たすかを判断するとしています。

卸売業者が関与する具体的事例への当てはめ
卸売業者であるA社がPB商品の規格や仕様の決定、中小受託事業者や製造委託等代金の決定に関与している場合
設例の場合をみてみますと、卸売業者であるA社がPB商品の規格や仕様の決定、中小受託事業者や製造委託等代金の決定に関与している場合は、小売業者と卸売業者、卸売業者と製造業者の、資本金と常時使用する従業員数を比較することになります。そして、小売業者の資本金が5億円であるのに対して、卸売業者の資本金は2億円ということですから、小売業者と卸売業者との間の取引は、取適法の適用がある製造委託に該当することになります。
これに対して、卸売業者の資本金が2億円であるのに対して、製造業者の資本金は1億円ということですから、卸売業者と製造業者との間の取引は製造委託に関する資本金基準を満たさないということになります。
もっとも、卸売業者の常時使用する従業員数が300人を超えており、製造業者の常時使用する従業員数が300人以下である場合には、従業員基準を満たすことになるために、卸売業者と製造業者との間の取引には、取適法が適用されることになります。一方で、この卸売業者の常時使用する従業員数が300人以下であるなど、従業員基準も満たさない場合、卸売業者と製造業者との間の取引には、取適法の適用がないということになります。
卸売業者が事務手続の代行のみを行い、取引内容の決定等に関与していない場合
一方で、卸売業者が事務手続の代行のみを行い、取引内容の決定等に関与していない場合は、小売業者と製造業者の資本金とを比較することになります。そして、小売業者の資本金が5億円であるのに対して、製造業者の資本金は1億円ということですから、製造委託に関する資本金基準を満たし、この取引には取適法が適用されることになります。
卸売業者が関与する取引の留意点
3-2のように、卸売業者が事務手続の代行のみを行い、取引内容の決定等に関与していない場合は、小売業者が製造業者に対して製造を委託したと考えることになりますので、中小受託事業者である製造業者に対して、委託事業者としての義務を負うのは小売業者となります。そのため、小売業者が4条明示の義務を負うことになります。
詳しくは、「下請法が適用される製造委託とは」を参照ください。
まとめ
以上のとおり、卸売業者が関与する取引では、卸売業者の関与の内容によって取適法の適用の有無についての判断も異なってきます。そのため、卸売業者が関与する取引において取適法の適用の有無を判断するにあたっては、卸売業者に委託している業務の内容が何かという点に留意して判断する必要があります。
弁護士法人大江橋法律事務所
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