テレワークを続ける社員・従業員のメンタル不調への予防と対応(ラインによるケア)

人事労務
星野 悠樹弁護士 杜若経営法律事務所

 当社では、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、テレワークでの就労を原則としています。テレワークでの就労が長期化する中、業務上のミスや業務能率の低下が見てとれる社員がいます。メンタル不調の疑いもあると見ていますが、テレワークを継続する社員に対してどのような対応が必要なのでしょうか。

 テレワークでの就労は、孤立感を感じやすかったりプライベートとの境界が曖昧になりがちであったりすることから、オフィスでの就労よりもメンタルヘルスに影響を及ぼしやすい面があります。テレワークを実施している企業においては、テレワークによりメンタルヘルスが悪化しやすい要因を押さえて、メンタルヘルスケア対策を確立することが重要です。

解説

目次

  1. テレワーク(在宅勤務)の長期化によるメンタルヘルスへの影響
  2. 「コミュニケーションの問題」に対する対応
  3. 「労働時間把握の問題」に対する対応
  4. 「就労環境の問題」に対する対応
  5. おわりに

テレワーク(在宅勤務)の長期化によるメンタルヘルスへの影響

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークや在宅勤務が推奨され、積極的にテレワーク(在宅勤務)を導入する企業が増えています。業種・業態によっては、テレワークを原則的な勤務形態とする企業も見られるところです。

 テレワークでの就労が長期化した場合にメンタルヘルスを悪化させる要因としては、主に以下の3点があげられます。

テレワーク長期化によるメンタルヘルス悪化の主な要因
  1. 物理的に同じ職場にいるわけではないため、企業側からすると社員の健康状況等を把握し難く、社員側からすると簡単に相談することが難しい(コミュニケーションの問題)
  2. オフィスでの勤務に比べて労働時間を把握管理することが難しく、時間外労働や残業が生じやすい(労働時間把握の問題)
  3. 起床から就寝まで基本的に同じ場所で仕事と私生活を行うため、仕事に集中することが難しい(就労環境の問題)

 以下では、これらの要因(問題)ごとに考えられるメンタルヘルスケア対策を述べます。

「コミュニケーションの問題」に対する対応

 社員のメンタルヘルスケアにおいては、「ラインによるケア」が機能することが極めて重要です。「ラインによるケア」とは、管理職が行う心の健康に関する職場環境等の改善と社員に対する相談対応です。ラインによるケアで大切なのは、部下の言動や表情などから部下が「いつもと違う」ことに上長が早く気づくことです。これにより、適切な初動対応が可能となり、社員のメンタルヘルスが悪化する事態を防ぐことができます(「ラインによるケアとしての取組み内容」について、厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」の16頁~19頁において詳述されています)。

 しかしながら、テレワークでの就労が長期化する場合、日常的に顔を合わせる頻度が減るため、「ラインによるケア」が十分に機能しなくなるおそれがあります。そこで、対策として、ウェブ会議による1on1ミーティングを定期的に開催することなどにより、上長が部下の生活リズムや健康状況を確認するとともに、悩みや不満などを聴く機会を設けることが有益と考えられます。さらに、部下からの相談内容等によっては、産業医とのウェブ面談や外部のメンタルヘルス窓口の利用を勧めることが考えられます。

 また、上司や同僚との間でのコミュニケーションが減ると、孤立感などからメンタルヘルスが悪化することも考えられます。そのため、就労時間内においても、従前以上に、ビジネスチャットツールなどを活用した上司や同僚との連絡、あるいは(一定範囲内での)雑談などを積極的に推奨していくことも有益と考えられます。

「労働時間把握の問題」に対する対応

 上記1で述べたとおり、テレワークでの就労は、オフィスでの勤務に比べて労働時間を把握管理することが難しく、時間外労働や残業が生じやすいです。テレワークだからこそ労働時間管理が必要であり重要であるといえます。

 したがって、業務報告書等の提出や勤怠システムへの入力により、社員に毎日の始業時刻、終業時刻等を報告してもらうように徹底すべきです。

「就労環境の問題」に対する対応

 企業の対応としては、社員がテレワークでの仕事に集中して取り組めるようにするとともに、健康を害することがないよう必要な助言等を行うことが重要です。

 たとえば、子供がいる社員の場合、子供に時間や場所を取られてしまうことにより、仕事に集中できない環境になることが多いと考えられ、ストレスを溜めてしまう可能性があります。企業の対応としては、家族に対して業務の開始と終了について宣言すること等を社員に勧めることにより、家族の協力を得やすくなる環境づくりを後押しすることが考えられます。

 また、テレワークでの就労は、就寝時間、起床時間が不規則となりやすく、生活リズムを崩しやすいため、企業の対応として、毎日決まった時刻に就寝・起床し、生活のリズムを一定にすることが望ましいことをメッセージとして伝えていくことが有益と考えられます。

 さらに、適切な作業環境を準備するよう助言することも重要と考えられます。自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備のポイントについては、厚生労働省ウェブサイト「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」で公表されている以下の図表が参考となります。企業の対応としては、以下の図表を参考として、テレワークを行う際の作業環境整備について助言を行うことが有益と考えられます。

出典:厚生労働省ウェブサイト「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」

出典:厚生労働省ウェブサイト「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

おわりに

 Withコロナ時代にあっては、テレワークでの就労が長期化することが十分に想定されます。テレワークでの就労は、以上で述べてきたとおり、オフィスでの勤務に比べて社員のメンタルヘルスに影響が及びやすいです。企業の対応としては、テレワークでの就労により社員のメンタルヘルスが悪化する要因をおさえたうえで、各社にあったメンタルヘルスケア対策を確立していただくことが重要です。

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