リモート会議での常時ビデオONの指示は「リモハラ」に該当するか

人事労務
岸田 鑑彦弁護士 杜若経営法律事務所

 リモート会議の際に、映像をオフにしたところ上司から「なんで映像を消したんだ!」と怒られました。映像を常にオンとすることを強要するのはパワハラではないでしょうか。また、テレワーク中の服装について、上司から通常勤務と同様の服装をするようにという指示があり、毎日服装のチェックがあります。モニターで映る上半身だけでなく、下半身の服装チェックもあります。ここまでやる必要があるのでしょうか。

 従業員は雇用契約に基づき使用者の指示に従って労務提供する義務があるため、テレワーク時の業務遂行方法に関する指示も基本的には会社に裁量があります。もっとも業務上必要のない指示やプライベートに介入する言動は、業務命令権の濫用やハラスメントに該当します。会社は違法か適法かの議論だけでなく、より働きやすいテレワークの実現という観点から業務遂行方法に関する指示について検討すべきです。

解説

目次

  1. テレワークで問題になるハラスメント
  2. テレワークも業務遂行方法の1つ
  3. オンライン会議で画面をオンにするよう指示することはできるか?
  4. 身だしなみの確認のため、画面に全身を映すよう指示することはハラスメントか?
  5. おわりに

テレワークで問題になるハラスメント

 テレワークを導入する会社が増えるにつれて、テレワーク中の業務遂行に関する指示や言動等がハラスメントではないかという問題(通称、リモハラ)が提起されています。たとえば、以下のような行為などがあげられます。

  • 同居者の声が入り込むことに対して非難する
  • オンライン飲み会の実施を強要する
  • 映像の背景に映るものに言及する
  • 化粧などに言及する

 この問題の背景には「普段はそんなに細かく指示を受けていない」、「オフィスでは上司の顔がこれほど近くにない」など、テレワークという働き方に対する従業員側の戸惑いと、上司がどのように指示してよいかわからない、コミュニケーションをとるときに安易に背景に映り込むものを話題にしてしまうなど、労使双方ともにテレワークに不慣れなことが原因と考えられます。まずは、テレワークとはどのような働き方であり、どのような点で通常業務と異なるのかを労使双方が理解することが重要です。

テレワークも業務遂行方法の1つ

 従業員には雇用契約に基づき使用者の指示に従って労務提供する義務があります。そのためテレワークにおける業務遂行方法についても基本的には会社に裁量があります。テレワークは通常業務と異なり、業務遂行状況を会社が直接確認できない以上、それに伴う管理に変化があるのは仕方がありません。したがって業務遂行方法に関する会社の指示に関しても、違法でない限り、従業員はその指示に従って業務遂行しなければなりません。

 もっとも業務上必要のない指示やプライベートに介入するような言動は業務命令権の濫用やハラスメントに該当します。テレワークの場合、従業員側が音声や映像の録音録画が容易であるため、ハラスメントの証拠が残りやすいという特徴があります。そのため会社としても言動には十分に気を付けるべきです。

オンライン会議で画面をオンにするよう指示することはできるか?

 通常出社での会議の場合には上司と部下が顔を合わせているはずであり、相手の表情を見てコミュニケーションを取りながら会議を行う必要性もあります。また、業務時間中ですから顔を見せられない事情も通常は考えにくいでしょう。したがって、オンライン会議において画面をオンにするよう指示することは、ただちにはハラスメントに該当しないと考えます。

 もっとも映った顔について「近くで見ると老けているな」とか「化粧がいつもより薄いな」などのハラスメント発言によって画面をオンにしづらくなる環境を上司が作ってしまっている可能性もあるため、やはり発言には気を付けるべきです。

 また、画面をオンにするよう指示したにもかかわらず従業員が従わない場合、ほかの従業員がオンライン会議に入っているところで理由を確認したり注意指導したりするのではなく、あとで個別に理由を確認して注意指導すべきです。オンライン会議は他の従業員も聞いています。そのような場で理由を確認することや注意指導することが適切かどうかという視点も常に意識してください。

 さらに、効率的な業務遂行として、簡単な業務報告などについては画面をオフにする、そもそもオンライン会議ではなくメールやチャットツールで済ませるなどの対応も検討すべきです。

身だしなみの確認のため、画面に全身を映すよう指示することはハラスメントか?

 そもそもテレワークにおいて身だしなみを整える必要があるか、という問題があります。しかし、あくまで従業員に対してその所定労働時間についてどのように勤務してもらうかを指示する権限は会社にあります。したがって業務上の必要性がある限り、会社が業務遂行中の服装について指示することはできると考えます。

 たとえばリモート会議などでお客様対応があり得る場合は、失礼のないよう常識的な服装で業務すべきですし、自宅からお客様対応等で外出する可能性がある場合も、すぐに取引先に行けるよう通常業務と同様の格好で業務遂行する必要もあります。また、それ以外の場合であっても就業時間中であることを考えれば常識的な格好で業務するように指示することは、ただちにハラスメントには該当しないと考えます。

 ただ、モニターに映っていない部分までチェックする必要があるのかは疑問であり、そのような必要性のないチェックやその際の言動等を含めてハラスメントに該当する可能性はあり得ます。会社は常識的な範囲で指示し、従業員も常識的な範囲の格好で仕事をするということに尽きるのではないかと思います。

おわりに

 テレワーク中の業務遂行方法については、各社がさまざまな考えに基づいて指示しています。上記の例のようにテレワーク中の服装についてとやかく言うこと自体がナンセンスであるという議論もあるでしょう。しかし、会社の業務遂行に関する指示が適法か違法かの問題と、今の時代に合った方法かどうかの問題は別です。テレワーク中の業務遂行方法については、新型コロナウイルスの感染拡大によって初めてテレワークを導入したような会社では、まだ手探りの部分もあろうかと思います。従業員の意見や感想も聞きつつ、各社に合ったテレワークによる業務遂行方法を確立していただければと思います。

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