派遣労働者・派遣会社への対応

人事労務
弁護士法人淀屋橋・山上合同

 緊急事態宣言により業務量の減少を受けて休業を検討していますが、派遣労働者、または、派遣会社に対して休業補償しなければならないのでしょうか。施設の利用停止が出ている場合とそうでない場合とで差異はありますか。また、派遣契約を中途解除するにあたって留意すべきことはありますか。

 詳細は解説を参照ください。

解説

目次

  1. 派遣労働者に対する休業補償
  2. 派遣契約の中途解除
※本記事は、弁護士法人 淀屋橋・山上合同/編著「Q&A 感染症リスクと企業労務対応」(ぎょうせい、2020年)の内容を転載したものです。

派遣労働者に対する休業補償

 まず、派遣先は、派遣労働者とは直接雇用契約関係にありませんので、派遣労働者に対して直接休業補償をすることを考える必要はありません。

 派遣先の派遣会社に対する休業補償の是非は、基本的には、Q7(書籍参考)で解説した考え方によることになります。すなわち、まずは、派遣契約書の取決めによることになり、それがなければ民法の規定によって対応するとともに、原則は協議、合意によって対応してください。
 もっとも、緊急事態宣言が発令されたことによって、必ずしも派遣先の責によるべき事由とはいいがたいのではないかという点が問題となります。
 この点も、Q28(書籍参考)で詳述したとおり、一般の会社は、宣言に基づいて必ず休業する義務があるわけではありません。あくまで休業要請に応じて自主的に休業することになります。
 厚生労働省から新型コロナウイルス(SARS-CoV2)対策で令和2年4月10日に出された派遣労働者に関するQ&Aによっても、緊急事態宣言下における都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受け、事業を休止した場合ですら、「労働者派遣契約の履行を一時的に停止する場合や、労働時間や日数など労働者派遣契約の内容の一部を変更する場合には、それに伴う派遣料金等の取扱いについては、民事上の契約関係の話ですので、労働者派遣契約上の規定に基づき、派遣元と派遣先でよく話し合い、対応してください」としか記載されていません。
 そうすると、派遣先と派遣元とでは、一般的には派遣先が顧客であり、力関係で優位に位置することが多いため、結局休業補償をしない、という結論になりがちです。また、施設利用停止が出ている場合には、不可抗力の要素が強くなりますので、原則として、派遣料金や休業補償の支払いは不要であるとの考え方がベースになりそうです。ただし、派遣労働者の休業手当については派遣元会社任せ、というのでは、非常事態における負担の公平な分担という考えには反することになり、悩ましいところです。

派遣契約の中途解除

 業務量の減少によって、派遣先が派遣契約を中途解除する場合には、基本的には、派遣先は、自らの都合により労働者派遣契約を解除する場合に該当し、新たな就業の機会の確保や休業手当等の支払いに要する費用の負担等の措置を講じなければなりません(労働者派遣法29条の2)。この点、派遣先の都合によるかどうかについては、個別の事例ごとに判断されるものであるとして、前記厚生労働省Q&Aでは、「緊急事態宣言下における都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受けて派遣先において事業を休止したことに伴い、労働者派遣契約を中途解除する場合であっても、一律に労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる義務がなくなるものではありません」とされています。この考え方は、結局、施設の使用制限がなされたとしても、一時的臨時的と判断できる場合には、直ちに契約解除を要するとは限らないし、また業種によってはテレワーク等で対応できる場合もあるため、直ちに派遣先の責に帰すべきではないとはいいがたい、という点が背景にあると考えられます。
 また、労働者派遣契約の中途解除が派遣先の都合によらないものであっても、派遣先指針(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示138号。最終改正:平成30年厚生労働省告示428号)第2の6の(3) )に基づき、派遣先は、関連会社での就業をあっせんするなどにより、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要です。
 したがって、派遣先としては、中途解除はなるべく避けつつ、契約に基づいて派遣元と協議して対応してもらうことになるでしょう。なお、厚生労働省では、感染症対策の一環として、派遣労働者に対するテレワークの活用も推奨しているところです。

Q&A 感染症リスクと企業労務対応

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