テレワークにおける人事評価の方法と、制度を変更する際の留意点

人事労務
池田 香織弁護士 小笠原六川国際総合法律事務所

 当社では、新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、従業員の大部分についてテレワークを実施しましたが、今後もこれを継続していくことを検討しています。
 テレワークを実施する場合、従来のやり方では適切な人事評価を行うことが難しいと言われていますが、今後、人事評価制度を見直す必要があるのでしょうか。また、人事評価を行う際にはどのようなことに留意する必要があるでしょうか。

 いかなる人事評価制度を採用するかは当該企業次第ですが、テレワークの実施にあたり、従来型の事業場への出勤を前提とした人事評価制度から成果主義を前提とした人事評価制度へ移行することが考えられます。
 テレワークにおける人事評価にあたっては、テレワークを行う労働者の業績評価等について、評価者や労働者が懸念を抱くことがないように、評価制度および賃金制度を明確にすることが望ましいと言えます。
 なお、テレワークを行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければなりません(労働基準法89条2号)。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 人事評価の意義・従来の方法
  3. テレワークとは
  4. テレワークにおける人事評価の方法(成果主義の導入)
  5. テレワークにおける人事評価にあたっての留意点
    1. 人事評価制度を再構築する際の留意事項
    2. 成果主義に基づく人事評価を行う際の留意事項
  6. おわりに

はじめに

 昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大防止、政府による緊急事態宣言、休業要請等に応じて、在宅勤務等のテレワークを実施した企業も多いのではないかと思います。その際、問題となるものの1つが人事評価です。テレワークは、これを行う労働者の勤務実態の把握が難しく、従来型の事業場への出勤を前提とした人事評価が当てはまらなくなるからです。本稿では、テレワークにおける人事評価の方法と制度を見直す際の留意点について解説します。

人事評価の意義・従来の方法

 人事評価とは、労働者の業績や能力を評価することです。賃金、賞与、昇進・昇格・降格等の判断基準となるほか、能力開発、適正配置などの決定に際して用いられることもあります

 人事評価の基準は、一般的に、次の3つの評価項目から構成されます。

能力評価
成績評価
情意評価

 ①能力評価では、判断力、企画力、技術・知識など②成績評価では、仕事の質・量、達成度など③情意評価では、熱意、協調性などが評価要素となり、これらを点数化・総合化して従業員の評価・査定が行われます。
 具体的には、事業場での日常の勤務や実績を通じて、当該従業員の能力や仕事ぶりを評価する形で行われています。

テレワークとは

 テレワークとは、労働者が情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を利用して行う事業場外勤務をいいます。

 一般に、テレワークの形態については、以下の3つに分類できるとされています。

  1. 在宅勤務
    労働者の自宅で業務を行う勤務形態
  2. サテライトオフィス勤務
    労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する勤務形態
  3. モバイル勤務
    ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う勤務形態

テレワークにおける人事評価の方法(成果主義の導入)

 これまで、日本では、テレワークを導入したとしても、週に1、2日程度の在宅勤務で、事業場に出勤して働く時間のほうが長い例が多く、従来型の事業場への出勤を前提とした人事評価制度を維持している事業者が多数でした。

 しかし、テレワークを主たる勤務形態とする場合は、これを行う労働者の勤務実態の把握が難しく、事業場への出勤を前提とした人事評価制度では、適切な評価を行うことができないのではないかとの指摘があります。

 そこで、このような本格的なテレワークの実施にあたっては、これに適した人事評価制度を再構築することが考えられます。一般的には、勤務態度や時間などは評価の中心におかず、成果を重視するやり方が、テレワークの評価には適していると言えます。

 そうした評価方法として代表的なものに、「目標管理制度」があります。目標管理制度とは、職務目標を上司と部下とで話し合い、これを担当する部下自身が目標を設定し、達成方法を考え、主体的に行動するよう管理する制度であり、その目標達成状況に応じて評価を行うことになります。

 よって、テレワークを主たる勤務形態とする本格的なテレワークの実施にあたっては、従来型の人事評価制度を見直し、目標管理制度等の成果を重視する制度を導入することが考えられます。

テレワークにおける人事評価にあたっての留意点

人事評価制度を再構築する際の留意事項

 テレワークは、これを行う労働者の勤務の実態が、評価する者の目には見えづらい勤務形態です。そのため、テレワークを実施する場合、評価する側は、部下の仕事の評価が難しいと感じ、評価される側は、自分の仕事が適切に評価されているのか不安に感じるようです。

 そこで、人事評価制度を再構築する際には、テレワークを行う労働者の業績評価等について、その評価者や労働者が懸念を抱くことがないよう、評価制度および賃金制度を明確にすることが望ましいと言えます。

 特に、業績評価や人事管理に関して、テレワークを行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましいでしょう。

 なお、テレワークを行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければならないこととされています(労働基準法89条2号)。

成果主義に基づく人事評価を行う際の留意事項

 人事評価を行う場合には、当該評価が強行法規(労働基準法3条の均等待遇等)に違反しないことのほか、これが公正になされることが必要です。

 そして、「いつまでに何をする」といった形で、仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、テレワークの場合であっても職場での勤務と同様の評価が可能であるので、評価者に対して、労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないように注意喚起することが望ましいと言えます。

 また、テレワーク開始から一定期間ごとに、評価者である上司とテレワークを行う労働者の間で、業務内容とその成果について共通理解を深めることが重要です。

おわりに

 人事評価は、従業員の能力を最大限に活用し、モチベーションを高め、企業を発展させるうえで重要な意味をもつものです。そのため、テレワークを実施するにあたって、人事評価制度をいかに構築するか、いかに適切な人事評価を行うかは、今後の重要な課題となってくるでしょう。

 その際、テレワークを実施している労働者とそうでない労働者の評価が公正に行われるよう、評価者である上司とテレワークを行う部下のコミュニケーションを徹底すること、特に上司の部下に対する働きかけを促すなど、上司の意識啓発を行っていくことが重要と言えます。

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する