新型コロナでテレワークを行う際に長時間労働を予防する方法

人事労務
小笠原 理穂弁護士 小笠原六川国際総合法律事務所

 当社では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除後もテレワークを推奨しています。ただ、テレワークは残業などの労働時間の管理が難しく、また、長時間労働になりやすいのではないかと懸念しています。これらの問題にどのように対応するべきか教えてください。

 労働時間管理のためには、始業・終業時刻の報告や記録の方法(Eメール・電話・勤怠管理ツール等)をあらかじめ決めておくこと、始業・終業時刻を変更したり業務を中断したりする場合のルールについても事前に決めておくことが必要です。
 また、テレワークにおける長時間労働を防ぐ手段として、主に次の4つがあげられます。

  1. メール送付の抑制
  2. システムへのアクセス制限
  3. テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止
  4. 長時間労働を行う者への注意喚起

解説

目次

  1. はじめに
  2. 労働時間の管理
  3. 長時間労働への対策
  4. 事業場外みなし労働時間制
  5. 労働時間管理における注意点
    1. 安全配慮義務への配慮
    2. パワーハラスメントの防止
  6. おわりに

はじめに

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言や外出自粛要請を受け、在宅勤務(テレワーク)を導入する企業が急増しました。テレワークは労働者にとっては満員電車を避けたり、子育てや介護と仕事の両立手段になるといったメリットがあります。企業にとっても業務効率化による生産性の向上やオフィスコストの削減など、多くのメリットがあると考えられます。

 他方、テレワークは労働者が上司の目の届かない場所で就労し、また、家事や自宅でのプライベート生活との境界線も明確ではないため、労働時間の管理が難しいのが現実です。
 そこで、本稿では、テレワークにおける残業等の労働時間の管理方法や、長時間労働への対策について解説します。

労働時間の管理

 テレワークとは、インターネットなどのICT(情報通信技術=Information and Communication Technology)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方で、勤務場所から離れて、自宅などで仕事をする働き方のことを指します(厚生労働省「 テレワーク導入ための労務管理等Q&A集」2頁)。

 このテレワークを導入する場合においても、労働基準法等の労働基準関係法令が適用されます。そして、企業は一定の場合(労働基準法41条に定める者およびみなし労働時間制が適用される労働者)を除き、労働者の労働時間を適切に管理する責務を負っています(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
 そして、労働者の始業・終業時刻を管理するために、企業は労働者の始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ決めておくことが有用です。

【規定例】
第●条(労働時間)
 在宅勤務時の所定労働時間及び始業・終業時刻は、就業規則第●条の定めるところによる。
2 会社は、業務の必要性がある場合、前項の始業・終業時刻を繰り上げ、又は繰り下げることがある。
【規定例】
第●条(業務開始及び終了報告)
 在宅勤務者は、勤務開始および終了について、電子メール(電話)により所属長(使用者)に報告しなければならない。

 労働時間の適正な把握のためには、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、記録することも考えられます。また、労働者からの自己申告の場合の労働時間の把握方法としては、始業・終業時に所属長へEメールや電話等で連絡をするほか、勤怠管理ツールを導入している企業は当該ツールを活用したり、業務中に常時通信可能な状態にしておくなどの方法が考えられます。

 テレワークの場合、労働者が終業連絡をした後にもサービス残業をするといった可能性もあることから、始業・終業の時間だけではなく、業務時間帯のなかで定期的に業務遂行状況を確認したり、休憩等についても具体的に把握しておく必要があります。そのうえで、報告がなされなかったり、報告内容に疑義があるといった場合には、その都度指摘して、適切な労働時間管理をするよう心がけましょう。

 

長時間労働への対策

 テレワークにおける労働時間管理の方法については上記のとおりですが、企業は単に労働時間を管理するだけではなく、長時間労働による健康障害防止を図ることも求められています

 テレワークにおける長時間労働を防ぐ手法として、厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、次の4つの方法があげられています。

(1)メール送付の抑制
(2)システムへのアクセス制限
(3)テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止
(4)長時間労働を行う者への注意喚起

(厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」18頁)。

(1)メール送付の抑制

 役職者等から、時間外、休日または深夜におけるメールを送付することを自粛するよう命じます。

(2)システムへのアクセス制限

 テレワークを行う際、社内システムに外部のパソコン等からアクセスする形態をとっている場合は、深夜・休日はアクセスできないよう設定します。

(3)テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止

 時間外、休日、深夜労働の原則禁止や使用者等による許可制とすることを就業規則や在宅勤務規定等に明記します。

【規定例】
第●条(時間外労働等)
 在宅勤務者が時間外労働、休日労働又は深夜労働をする場合は、事前に所定の手続きを経て所属長(使用者)の許可を受けなければならない。※

(※ 時間外労働を原則禁止としたうえで、やむを得ない事情がある場合かつ事前の許可を得た場合のみ行うことができるとする内容に変更することも可能です)

(4)長時間労働を行う者への注意喚起

 テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、長時間労働が生じた労働者に対する注意喚起を行います。
 具体的には、管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示するといった方法により行います。

事業場外みなし労働時間制

 労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な場合、その事業場外労働については一定の時間労働したとみなす、「事業場外みなし労働時間制」が適用されます(労働基準法38条の2)。

 テレワークは事業場外で行われる業務の典型であることから、この事業場外みなし労働時間制の適用を求めたい企業もあると思います。しかし、テレワークにおいて、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるというためには、以下の要件をいずれも満たす必要があります(厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」5頁)。

  1. 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(=情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態を指す)
  2. 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 事業場外みなし労働時間制を適用する場合には、上記のガイドラインに沿った対応が必要です。
 また、事業場外みなし労働時間制を適用する場合であっても、使用者は労働者の勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有している点に注意が必要です。

労働時間管理における注意点

安全配慮義務への配慮

 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っていますので(労働契約法5条)、テレワーク導入における時間管理の場面でも、長時間労働の防止による健康保持など、安全配慮義務に配慮した対応が必要となることに注意が必要です。

パワーハラスメントの防止

 2020年6月にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されました(大企業は2020年6月、中小企業は2022年4月施行)。

 テレワークにおける長時間労働を予防するために使用者が労働時間を管理することは必要です。一方で、労働者が常に使用者の監視下にあると感じられるような言動(過度な執務確認、休憩時間への介入等)や、メールやチャットでの配慮を欠いた言動は、パワーハラスメントにあたるとされる可能性もあるため、注意しましょう。

おわりに

 テレワークにおいて、労働者の労働時間管理を適正に行い、残業や長時間労働を防ぐためには、就業規則や在宅勤務規定、労働者との個別合意などによって規程を制定し、事前に労働者に周知することが必要です。
 また、必要に応じて、労働時間や業務内容の見直しを適時に行い、テレワーク労働者の残業や長時間労働を防ぐ方策を講じる必要があるでしょう。

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