新卒採用する外国人の在留資格を「技術・人文知識・国際業務」に変更する際の許可基準

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社では、日本の大学を卒業予定の外国人留学生を正社員として採用したいと考えています。外国人留学生が所持する在留資格を「技術・人文知識・国際業務」に変更する手続について、許可・不許可の基準などを詳しく教えてください。

 新卒採用を予定している外国人留学生の在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に変更申請する際には、在留資格の該当性、上陸許可基準への適合、その他の考慮要件にかんがみて許可・不許可が決定されます。雇用企業が虚偽申請を疑われたり、出入国管理及び難民認定法違反を問われるケースもあるため、本稿で詳しく解説していきます。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
  3. 「技術・人文知識・国際業務」の該当性
  4. 「技術・人文知識・国際業務」の許可基準
  5. 「技術・人文知識・国際業務」における職務内容の関連性とその緩和措置
  6. 「技術・人文知識・国際業務」の不許可事例
    1. 業務と在留資格の該当性の不一致
    2. 専門性と職務内容の不一致
    3. 雇用企業に問題があるケース
    4. 外国人自身に問題があるケース
  7. 虚偽申請と出入国管理及び難民認定法違反
  8. さいごに

はじめに

 外国人留学生の新卒採用などを行う企業は、出入国在留管理局に対して、その外国人の在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に切り替えるための変更申請を行うことになります。
 在留資格変更の申請について、出入国管理及び難民認定法20条3項は、「法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」と規定しています。

在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン

 出入国在留管理庁は「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」についての詳細な判断根拠として、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」を示しています。

 ガイドラインによると、①許可する際に必要な要件、②原則として適合していることが求められる要件、③相当性の考慮案件の3つの判断基準が設けられ、これらをもとに総合的に判断されることになります。

ガイドライン上の判断基準

①許可する際に必要な要件 在留資格の「該当性」
②原則として適合していることが求められる要件 「上陸許可基準」への適合
③相当性の考慮案件
  • 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
  • 素行が不良でないこと
  • 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  • 雇用、労働条件が適正であること
  • 納税義務を履行していること
  • 出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務を履行していること など

 ①の「在留資格の該当性」は必要条件となっています。そのため、就職先での職務内容が出入国管理及び難民認定法が定める「技術・人文知識・国際業務」などに定められた活動でなければ、許可されることはありません。
 ②の「上陸許可基準への適合」は、原則として適合が求められるものです。必ずしも必要とはされていませんが、可能な限り適合していることが求められます。
 ③の「相当性」については、「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由」があるか否かに関する代表的な考慮要素の一例です。そのため、これらの事情以外の条件で不許可となることも大いに考えられます。

「技術・人文知識・国際業務」の該当性

 「技術・人文知識・国際業務」とは、日本の公私の機関との契約に基づいて行う以下の業務に従事する外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。外国人雇用においては最も多く利用されており、外国人留学生の新卒採用の際には、ほとんどのケースで「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格の変更申請が行われることとなります。

 また、外国人社員が日本で行おうとする活動は、出入国管理及び難民認定法別表第1の2に規定されている在留資格の活動内容に該当していなければなりません。「技術・人文知識・国際業務」の場合、該当範囲は以下のとおりです。

  1. 自然科学または人文科学の分野に属する技術もしくは知識を必要とする業務
  2. 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務
※ただし、在留資格のうち、「教授」、「芸術」、「報道」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」または「興行」の在留資格に該当する活動は除く。
(出入国管理及び難民認定法別表第1の2)

 これら2つの業務は、理論上は区分されているものの、実務上では、活動内容が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。それぞれ許可となる基準が違うため、自社で行う業務がどちらに該当するかを正確に見極めたうえで、的確に申請を行う必要があります。

 単に外国人だからという理由で「翻訳・通訳」として申請した場合には、職歴等の要件で不許可であっても、「総合職」で申請した場合には許可が出るといったケースも多くみられます。そのため、申請にあたっては、在留資格の該当性を考慮することが非常に大切です。

「技術・人文知識・国際業務」の許可基準

 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するためには、申請人が以下の表の要件に合致していることが求められます 1

職務内容 該当性 上陸許可基準(概要)
技術 日本の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他自然科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
  1. 次のいずれかに該当すること
    1. その技術や知識に関連する科目を選考して大学を卒業し、または同等の教育を受けたこと
    2. その技術もしくは知識に関連する科目を選考して日本の専修学校の専門課程を修了したこと
    3. 10年以上の実務経験を有すること
  2. 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬
人文知識 日本の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文知識の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
国際業務 外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務
  1. 次のいずれにも該当していること
    1. 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発これらに類似する業務に従事すること
    2. 業務について3年以上の実務経験があること。ただし、大学卒業者が翻訳、通訳または語学の指導に従事する場合はこの限りではありません。
  2. 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬

出典:ACROSEEDが作成

「技術・人文知識・国際業務」における職務内容の関連性とその緩和措置

  「専攻と職務内容の関連性」は、在留手続上では非常に重要なポイントですが、最近では職種において文系と理系を明確に区別することが難しいケースも多く、また、新入社員には幅広く様々な分野で経験を積ませてキャリアアップを図りたいと考える企業が増加しています。そこで、法務省は「大学における専攻科目と就職先における業務内容の関連性の柔軟な取扱いについて」(平成20年7月17日法務省入国管理局長通達)を公表し、基準を緩和しています

 この公表資料によると「現在の企業においては、必ずしも大学において専攻した技術又は知識に限られない広範な分野の知識を必要とする業務に従事する事例が多いことを踏まえ、在留資格「技術」及び「人文知識・国際業務」の該当性の判断に当たっては、(略)柔軟に判断して在留資格を決定する」とし、この取扱いの周知徹底を図るために地方入国管理局長(当時)へ通知しています。

 そのため、大学卒業者の場合には雇用企業での職務内容と外国人留学生の卒業した学部・学科との関連性が薄い場合でも、許可が出る可能性は考えられます。ただし、あくまでも「柔軟に判断する」という表現にとどまっており、「関連性は必要ない」と規定されているわけではありません。学歴と業務内容の関連性が高ければ高いほど、在留資格の変更が許可される可能性は高まりますので、慎重な対応を心がけてください。

「技術・人文知識・国際業務」の不許可事例

業務と在留資格の該当性の不一致

 外国人雇用における在留資格の変更が不許可となる最大の原因は、在留資格の該当性です。つまり、自社で行わせる業務が、そもそも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当していない、という理由によるものです。

 特に最近の外国人雇用では、外国人従業員が総合職として採用されることが多いため、雇用企業が外国人従業員を日本人従業員と同様に考えることが多いようです。しかし、外国人従業員を社内研修のために店舗や工場に配置したり、ジョブローテーションさせることなどは、在留資格の該当性の点で問題が生じやすいポイントといえます。

 このような業務があることについて、出入国在留管理局に知らせることなく在留資格を取得した場合、たとえ一時的な研修などであっても、不法就労となる可能性が出てきます。雇用企業による虚偽申請が疑われるおそれもあるため、とりわけ慎重な対応が求められます。

専門性と職務内容の不一致

 不許可の理由として多いのが、「外国人本人が持つ専門性と職務内容の不一致」です。就労可能な在留資格は、「外国語が話せる」「経営学の知識がある」「貿易業務の経験がある」といった外国人本人が持つ専門性と実際の職務内容が一致しない限り、原則として許可されません。

 たとえば、日本の大学で経済学を学んだ外国人留学生が卒業後に金融機関に入社する場合などは、許可が下りやすく、逆に服飾の専門学校を卒業した外国人留学生が金融商品の営業業務を行う場合などは、専門性の不一致として不許可となる可能性が高いといえます。ただし、このような場合でも当該外国人を雇用する合理的な理由とその根拠を示すことができれば許可となることもあり得ます。

雇用企業に問題があるケース

 会社の提出した決算書の内容から判断して、外国人従業員を正社員として雇用できる可能性が少ない場合や、会社の規模があまりにも小さい場合など、雇用企業の事業の継続性に問題がある場合などが該当します。その他には、行おうとする業務に対してあまりにも多くの外国人社員がいる場合など、社内全体で外国人社員が占める比率が偏っている場合には、外国人を雇用する必要性に疑問が持たれ、問題となることがあります。

 また、申請後、出入国在留管理局が本人確認のために企業に連絡したところ、平日の昼間であるにもかかわらず誰も電話に出ないような場合には、企業の実在性が疑われるケースもあります。また、出入国在留管理局から電話での問い合わせがあることも想定して、雇用する外国人従業員について社内に周知しておくことも重要です

外国人自身に問題があるケース

 過去に出入国在留管理局とトラブルを起こしていたり、出入国管理及び難民認定法違反を犯していた場合などです。雇用企業として対応が難しいケースですが、面接時などにそれとなくたずねておくことも有用です。

 また、外国人従業員の以前の勤務先が出入国管理及び難民認定法に違反していた場合は、それだけで在留資格の申請が難しくなることもあります。特に、不法就労者を雇用していた企業や、外国人に就労可能な在留資格を取得させることだけを目的として雇用していた場合などでは、たとえ本人に問題がなくとも就労の正当性が問題視されることがあります。

 採用を行う際には、外国人本人とよくコミュニケーションをとり、これまでの経歴や職歴などをしっかりと確認しておくことをおすすめします。

 出入国管理在留局等では、申請に必要な書類のリストなどが配布されていますが、リストに列挙された書類だけを提出すれば十分というわけではありません。出入国管理及び難民認定法7条2項に「申請人は自ら在留資格に合致することを立証しなければならない」と定められているように、自らの主張に対してはその証拠を添えて立証することが求められています。そのため、基本的には申請を行う人が自ら説明の方法を考え、それに対する証拠を提出して許可を受けることになります。

 出入国在留管理局が「提出資料が不十分」と判断した場合には、追加資料の提出や具体的な説明が求められます。実際の手続上では、これらに対応していけばよいことになりますが、審査に時間がかかったり、申請者の意図とは異なる方向で審査が進んでしまうことで、不許可とされてしまうこともあり得ます。申請時には主張の論点をしっかりと整理するとともに、立証資料を前もって提出することが重要なポイントとなります。また、立証にあたっては、在留資格の該当性、適合性はもちろんのこと、申請が虚偽のものでない「真実性」も重要となります。立証に必要と考えられる資料等は、要求されていないものであっても、事前に提出することを心がけましょう

虚偽申請と出入国管理及び難民認定法違反

 外国人留学生の在留手続において最近増加している不正が、虚偽申請です。前述したように「技術・人文知識・国際業務」は、単に経験を積んだことにより有した知識では足りず、学問的・体系的な知識を必要とする業務である必要があります。

 そのため、皿洗いや料理の盛り付け、工場内での反復継続的な単純作業などは該当しません。ところが、最近ではこのような職種で外国人留学生を新卒採用し、申請時には「翻訳・通訳」などとして書類を提出するものの、実際の業務内容は単純労働である、という例が多く見られます

 特に、雇用企業側に外国人雇用に関する十分な知識がなく、人材紹介会社や採用コンサルティング会社などの指示の通りに申請した結果、虚偽申請とされるケースが出ています。このような場合、仮に雇用企業側が感知していなかったとしても、申請書には雇用企業の押印や採用担当者の署名があるため、原則として責任を逃れることはできません。そのため、雇用企業としても、基本的な出入国管理及び難民認定法の知識を身につけておく必要があります。また、外国人雇用において人材紹介会社等のサービスを活用する場合には、実績がありコンプライアンス意識の高い企業を選定することも非常に重要となります。

 さらに、雇用企業の不正として多く見られるのが、「キャリア形成の一環として一時的に店舗配置等を行う」という説明のもと、ずるずると単純労働に従事させ続けるケースです。これは飲食店等でよく見られます。「正社員採用に伴う現場研修を一定期間行う」といった説明を行ったうえで在留資格変更の許可を取得しますが、実際には研修期間終了後も店舗配置等の単純労働を継続させる方法です。

 出入国在留管理庁は、飲食店等では現場の業務を理解せずに幹部社員へと育成することが難しい点について、理解を示しています。そのため、年間で1~2か月程度の実習のための店舗配置とそれに伴う単純労働については、正式に許可が出ている事例も見られます。とはいえ、申請時に提出した計画通りに研修を進めることが大前提です。実際の業務の状況が、事前の計画に反する場合は不法就労と認定される可能性が非常に高いため、決してこのような申請は行ってはなりません。

 「技術・人文知識・国際業務」に該当する専門的な職務と単純労働は、その線引きがあいまいなことが多く、自社にとって都合のよい判断をしてしまいがちです。そのような場合には、行政書士などの専門家に意見を求めるなど、客観的な第三者の視点を考慮に入れて判断するとよいでしょう。

さいごに

 以上、新卒採用する外国人の在留資格を「技術・人文知識・国際業務」に変更する際の許可基準などについて説明してきました。「技術・人文知識・国際業務」は外国人雇用を推進するために重要な役割を担う在留資格の1つです。出入国管理及び難民認定法やガイドライン等で求められる要件をしっかりと確認したうえで、慎重に採用活動を進めていくことが、外国人雇用を成功させるためのポイントとなります。


  1. ただし、申請人が外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和61年法律第66号)58条の2に規定する国際仲裁事件の手続についての代理にかかる業務に従事しようとする場合は、この限りではありません。 ↩︎

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