多数当事者の債権・債務に関する民法改正の主なポイント

取引・契約・債権回収 公開 更新
定金 史朗弁護士 DT弁護士法人
  1. 改正民法の下では、連帯債務者の一人について生じた事由の効力が他の連帯債務者に及ばないという「相対的効力の原則」について、旧民法よりも徹底されたと聞きましたが、その詳細について教えてください。

  2. 改正民法により、不可分債務ないし不可分債権が成立する場面が旧民法よりも限定されたと聞きましたが、その詳細について教えてください。

  3. 改正民法により、連帯債務者間の求償に関する要件が明確化されたと聞きましたが、その詳細について教えてください。
  1. 旧民法は、連帯債務者の一人に生じた事由の効力は、他の連帯債務者には及ばないという相対的効力の原則をとりながら、連帯債務者の一人に生じた事由の効力が他の連帯債務者にも及ぶ(絶対的効力を有する)という例外的な場面を広く認めていました。これに対し、改正民法は、履行の請求、免除等を絶対的効力事由から除外し、相対的効力の原則を徹底させました。

  2. 旧民法は、不可分債務または不可分債権が成立する要件として、債権の目的が性質上不可分である場合と、性質上可分だが当事者の意思表示によって不可分とされる場合を認めていますが、改正民法は、性質上不可分である場合に限り、不可分債務または不可分債権が成立するものと規律を改めました。

  3. 改正民法は、連帯債務者の求償権に関して、連帯債務者は自己の負担割合を超える額を弁済等しなくとも、他の連帯債務者に対して各自の負担割合に応じて求償することができる等の従来の判例法理を明文化しました。

解説

目次

  1. 相対的効力の原則の徹底
    1. 改正の内容
    2. 実務上の留意点
  2. 不可分債務・不可分債権
    1. 改正の内容
    2. 連帯債権
  3. 連帯債務者間の求償権に関する見直し

※本記事の凡例は以下のとおりです。

  • 改正民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正後の民法
  • 旧民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正前の民法

相対的効力の原則の徹底

改正の内容

 連帯債務とは、その目的が性質上可分であり、各債務者がそれぞれ債権者に対して全部の履行をすべき債務をいいます。連帯債務者の一人について生じた事由の効力は、他の連帯債務者には及ばないのが民法上の原則で、これは相対的効力の原則と呼ばれています(旧民法440条)。
 しかし、旧民法は相対的効力の原則をとりながら、連帯債務者の一人に、履行の請求、更改、相殺、免除、混同、時効の完成等の事由が生じた場合、その効力は他の連帯債務者にも及ぶ(絶対的効力がある)として、広く例外を認めていました。

 もっとも、連帯債務者間に密接な関係がない事例もあるなど、広く絶対的効力を認めることに対する批判がありましたので、改正民法は、債権者からの履行の請求、免除、時効の完成を絶対効力事由から除外し、相対的効力事由にしました(改正民法441条本文、439条1項、440条)。ただし、債権者と他の連帯債務者の一人が「別段の意思表示を表示したとき」には、当該他の連帯債務者に対する効力はその意思に従うとされています(改正民法441条ただし書)。

実務上の留意点

   履行の請求、免除、時効の完成が相対的効力事由になりますので、債権管理上の注意が必要です。
 たとえば、期限の定めのない債務については、履行の請求をした時点から履行遅滞になりますが、改正民法の下では、連帯債務者全員との関係で履行遅滞にするためには、連帯債務者全員に対して履行の請求をする必要があり、請求から漏れた連帯債務者は履行遅滞に陥らないことになります。このような事態を避けるために、連帯債務者との契約に、債権者が一部の連帯債務者に対してのみ履行の請求をした場合に、その効力は他の連帯債務者にも及ぶといった特約を設けることが考えられます

不可分債務・不可分債権

改正の内容

 不可分債務とは、複数の債務者が同一の不可分な給付を目的として負う債務をいい、不可分債権とは、同一の不可分な給付を目的とする債権について、複数の債権者がいる場合を指します。

 旧民法は、不可分債務または不可分債権が成立する要件として、債権の目的が性質上不可分である場合と、性質上可分だが当事者の意思表示によって不可分とされる場合を認めていますが、改正民法は、性質上不可分である場合に限り、不可分債務または不可分債権が成立するものと限定しました(改正民法428条、430条)
 加えて、改正民法は、従来の不可分債務のうち意思表示により不可分とされていたものを「連帯債務」と整理し、また従来の不可分債権のうち意思表示により不可分とされていたものを、新設した「連帯債権」と整理しました(改正民法432条)

連帯債権

 連帯債権とは、その目的が性質上可分であり、各債権者がそれぞれ債務者に対して全部または一部の履行をすべきことを請求できる債権をいい、旧民法には明文の規定はないものの解釈上認められてきたものです。
 連帯債権者の一人について生じた事由の他の連帯債権者に対する効力については、連帯債務と同じく相対的効力しか生じないのが原則であり(改正民法435条の2)、絶対的効力を有する①履行の請求・弁済、②更改、③免除、④相殺、⑤混同以外の事由は、(別段の意思表示がない限り)他の連帯債権者に対して効力を生じないものとされています(改正民法433条ないし435条)。

連帯債務者間の求償権に関する見直し

 改正民法は、自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が他の連帯債務者に求償するための要件として、共同の免責を得た額が自己の負担割合を超えなくとも、他の連帯債務者に対して各自の負担割合に応じて求償することができるという判例法理を明文化しました(改正民法442条1項)

 また、求償権の額について、原則として連帯債務者が支出した金額としつつ、連帯債務者が支出した額が共同の免責を得た額を超える場合には、共同の免責を得た額を基準とする旨もあわせて明文化されています(改正民法442条1項かっこ書)。

【関連するBUSINESS LAWYERS LIBRARYの掲載書籍】

『我妻・有泉コンメンタール民法[第7版] 総則・物権・債権』
発売日:2021年04月01日
出版社:日本評論社
編著等:我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明
BUSINESS LAWYERS LIBERARYで読む


『改正債権法コンメンタール』
発売日:2020年10月05日
出版社:法律文化社
編著等:松岡久和、松本恒雄、鹿野菜穂子、中井康之
BUSINESS LAWYERS LIBERARYで読む


『物権法[第2版](日評ベーシック・シリーズ)』
発売日:2019年01月15日
出版社:日本評論社
編著等:秋山靖浩、伊藤栄寿、大場浩之、水津太郎
BUSINESS LAWYERS LIBERARYで読む

<追記>
2020年4月2日:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)の施行に伴い「現行民法」の記載を「旧民法」に改めました。

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する