採用パターンに応じた外国人雇用の実務ポイント(2)- 中途採用と海外からの呼び寄せ

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社は外国人従業員の採用を検討していますが、海外在住の人材と日本国内在住の人材のどちらを雇用すべきか迷っています。「どんな職種でも問題なく働ける外国人を紹介する」とサービス内容を謳う人材紹介会社への相談も検討していますが、注意点などを教えてください。

 外国人の受入れ方法には、直接雇用、人材紹介などによる方法の2種類があります。日本国内に在住する外国人材の中途採用は現在、非常にニーズが高く、企業による人材の奪い合いの状況が続いています。そのため、ワークライフバランスを重視した就労環境の実現に務めることが不可欠と言えます。また、自社のニーズに合った人材紹介会社のサービスを有効活用しながら、自社独自の採用ノウハウを培っていくことも重要です。

 海外からの人材の呼び寄せは、外国人雇用の中でも最も難易度が高いと言われます。コスト面の負担も大きくなる傾向があるため、高度な技能を持つ外国人材を求める大企業で活用されるケースが多くなっています。人材紹介サービスを利用する場合には、採用後のトラブル予防と外国人材の円滑な活用のため、実績と十分なコンプライアンス意識を備えた企業のサービスを選ぶことがポイントです。

解説

目次

  1. はじめに
  2. ③中途採用
    1. 特徴
    2. 採用
  3. ④海外からの呼び寄せ
    1. 特徴
    2. 採用

はじめに

 外国人労働者の受入れ方法は、大きく分けて、以下の4つのパターンがあります。

  1. 外国人留学生のアルバイト採用
  2. 外国人留学生の新卒採用
  3. 中途採用
  4. 海外からの呼び寄せ

 それぞれに「直接雇用」と「人材紹介」を活用した2つのパターンがあるため、合わせて8つの選択肢があることになります。下の表では、各採用パターンのメリットとデメリットを比較しています。

外国人労働者の採用方法のメリット・デメリット比較

メリット デメリット
直接雇用 人材紹介 直接雇用 人材紹介
①外国人留学生のアルバイト採用
  • 採用ノウハウの蓄積
  • 定期採用、大人数の採用が可能
  • 業務の効率化
  • 採用ミスマッチの発生
  • すべてが自己責任
  • 自社での在留手続きの対応
  • 採用コストの増加
  • 採用ノウハウが蓄積されない
②外国人留学生の新卒採用
  • 自社の採用計画で進められる
  • 業務の効率化
  • 優秀な人材の確保
③中途採用
  • 採用ノウハウの蓄積
  • 低コストでの採用
  • 業務の効率化
  • 最適な能力重視の採用
④海外からの呼び寄せ
  • 専門性の高い人材の採用
  • 現地企業との関係強化
  • 業務の効率化
  • 最適な能力重視の採用
  • 海外での求人活動の代行

 ①外国人留学生のアルバイト採用と、②外国人留学生の新卒採用については、「採用パターンに応じた外国人雇用の実務ポイント(1)- 外国人留学生のアルバイト採用と新卒採用」を参照してください。本稿では、③中途採用、④海外からの呼び寄せについて解説していきます。

③中途採用

特徴

 外国人の中途採用の大きなメリットとして、業務に対する深い経験や専門的な能力をすでに身につけており、採用後すぐに戦力として活躍できるといった点があげられます。たとえば、語学力を生かして販売先を海外へと拡大したり、母国のネットワークを生かして新たな市場を開拓する外国人従業員のケースもよく見られます。海外との取引を拡大したい企業において、外国人従業員は日本人従業員と比べて圧倒的に有利と言えます。

 外国人従業員を雇用している筆者のクライアントの例では、外国人従業員を伴って商談に赴くと、以前は顧客から珍しがられることが多かったようです。しかしグローバル化が進展した現在では、外国人従業員を雇用していることを好意的に受け止める顧客が増えてきたといいます。また、外国人従業員が流ちょうな日本語で商品説明を始めると、それが話題となって商談がうまく進むケースも少なくないようです。

 このように、雇用企業に大きなメリットを与えてくれる外国人材の中途採用ですが、問題となるのは採用の難しさです。実力のある外国人材を求めているのは、日本企業だけではありません。たとえ同じ職種でも、日本で働いた場合と欧米で働いた場合では、年収に2倍近い差が出ることもあります。

 このような状況で日本企業を選んでもらうためには、お金以上の価値や働きがいを理解してもらうという視点が不可欠です。日本社会の安全性の高さ、食事のおいしさ、四季を通じた自然環境の美しさなどに加え、自社での働きがいをアピールすることで、外国人材の獲得に成功した企業は少なくありません。そのとき重要となるのが、ワークライフバランスです。魅力的な外国人材を採用し、定着させるための施策のスタートとして、自社の労働環境の整備に着手している企業も多くなっています

採用

 直接雇用の場合には、自社のウェブサイトでの募集や就職フェアなどへの出展、ハローワークなどの公共機関のサービス利用、得意先や縁故などを活用した募集が一般的です。自社で直接雇用を行うことで、採用ノウハウの蓄積や低コストでの採用が可能となります。

 しかし、採用までの期間にゆとりがない場合や国籍、言語、能力など採用者の条件が絞り込まれている場合などには、人材紹介会社が提供するサービスを利用して、業務の効率化を図るケースが多いようです。特に中途採用の場合は、人材紹介だけでなく、国籍や言語に特化した求人サイトなどもあるため選択肢は大いに広がります。

 最近は外国人材に特化した人材紹介会社も増えており、そのような企業のサービスにすべてを任せる方法が最も簡便です。とはいえ、外国人材の採用が決まった場合には、年収の30%前後の紹介料を請求されるのが一般的です。コスト面を考慮しながら、自社で直接雇用する外国人材と専門特化した人材紹介会社に依頼する人材に区別をつけて、個別に対応していくことが、採用ノウハウの蓄積につながっていきます。

④海外からの呼び寄せ

特徴

 外国人雇用のなかで最も難しいとされているのが、外国人材を海外から呼び寄せるケースです。海外在住人材の呼び寄せは、高度な技能を持つ人材や事業の命運を左右するようなキーマンを採用する場合に用いられることが多く、雇用企業はそれなりのコストをかけて迎え入れることになります

 一般的に、海外から呼び寄せた人材は日本に滞在した経験を持たない場合がほとんどで、日本語を話せる人材は限られます。そのため、空港への送迎から日常生活全般に関して日本語のサポートが必要となる場面が少なくありません

 近年では、英語での対応ができる市区町村役場が増えたものの、不動産の賃貸借契約や携帯電話の申し込み、電気・ガスの使用方法など、未対応の部分も多く残っています。この点は雇用企業の配慮が求められるところです。さらに、採用する外国人材が家族を伴って来日する場合には、その渡航費用、お子さんの学校の入学手続きサポートなど、企業側の負担も増えていきます。そのため、海外人材の呼び寄せに関しては、体制が整った人事部門を持つ大企業が活用している例が多いようです。

 2019年4月に施行された改正出入国管理及び難民認定法により新たに創設された在留資格「特定技能1号」では、前述したサービスの提供(特定支援)が雇用上の義務(出入国管理及び難民認定法2条の5第5項、6項、8項)とされています。最近では、このサービスのみを専門的に請け負う特定支援会社も増加しています。

 現在のところ、特定支援会社のサービス利用は「特定技能」での入国者に限定されていますが、サービスのノウハウは一般の外国人材などへの転用が可能なため、今後、この分野のサービスが拡大していくことも予想されています。そのため、今後は中小企業においても海外人材の呼び寄せへの対応が容易となり、さらに外国人雇用が活発化するものと考えられます。

採用

 海外からの呼び寄せによる外国人材採用に関しては、高度な能力を持つ人材の採用が中心となるため、縁故採用や国際的な人材紹介会社のサービスを利用するのが一般的です。人材紹介会社のサービスを利用するためには一定のコストがかかりますが、海外における求人活動の代行などにより、求める人材を効率的に探すことができるでしょう。しかし、一部には海外での採用時に賄賂を使っていたことが明らかになり在留申請が不許可となったり、募集内容を応募者に正しく伝えておらず入国後に就労条件をめぐってトラブルとなるケースも見られます。

 上記のサービス利用を検討する際は、採用後のトラブル予防と外国人材の円滑な活用のため、やや費用面の負担が増える傾向があるものの、実績と十分なコンプライアンス意識を備えた企業を選ぶことがポイントとなります。

 以上、様々な外国人雇用の方法について説明しました。一口に「外国人雇用」と言っても採用の方法は多くあり、どの方法が自社に最適かを見分けながら対応していく必要があります。また、人材紹介会社のサービスを活用する際は、十分なコンプライアンス意識を備え、良い点も悪い点も誠実に説明できる企業を選ぶことが、不要なトラブルを回避するために有効です。

 外国人雇用においては、在留手続きが発生するため、数年後の在留期間の更新時や永住許可申請時などに思わぬトラブルが生じることも考えられます。そのためにも、長期的な視点を持ち、常にコンプライアンスを意識した対応に徹することを心がけてください。

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