広告表現に対する「不快だ」というクレームへの対応と予防法

知的財産権・エンタメ
松尾 剛行弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 「不快だ」というクレームに対して気を付けることは何ですか?

 事前に第三者等がどのような意見を持つであろうかを検討し、そのリスクについて広告主とも相談した上で、一部の人が「不快」に思ってでも伝えたいメッセージがある、という場合には、クレームに対してその旨を説明しましょう。

解説

 クレームの中には「自分が不愉快に感じる」というものが少なくない。基本的には、広告は潜在的購入者の注目を集め、直接・間接に商品・サービスの購入意欲を高めようとするものであることが多いところ、潜在的購入者を不愉快にするような場合には逆効果となることが多い。ここでは、炎上商法、卑下・自虐、差別・ステレオタイプ・ポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)、アニメ絵・萌え絵等について簡単に触れたい。

 まず、炎上商法は、意図して炎上する場合と、意図しないで炎上してしまう場合の双方がある。まず、あえて極端なことを言って注目を集めるという、意図的な場合を検討したい。炎上すれば、多くの人が批判をすることになるが、例えば「1,000万人に見てもらい、990万人に嫌われても10万人に商品を買ってもらえればそれで元が取れる」という発想から、あえて炎上をして知名度を上げることがある。いわば、「悪名は無名に勝る」という発想である。この場合、短期的にはそのような形で一定程度売上げを伸ばしたり知名度を上げることができるものの、例えば、いわゆる「ゆるキャラ」が炎上を繰り返した結果、コラボレーション等がうまくいかなくなった事例等、炎上によって、他の信用を重視する主体(協業予定者や潜在的協業対象等)との関係が悪化したり、その後のコラボレーションが困難となる可能性には十分に留意が必要である。

 これに対し、意図せずに不快な表現をし、訂正・謝罪に追い込まれるパターンもいくつかあるが、最近では、卑下・自虐による炎上が目に付く。例えば、ある小売業者は2019年のバレンタインキャンペーンにおいて、女性同士が一見仲がよい様に見せているが、実は後ろで足を引っ張っているというような広告を行った。広告の意図としては、意図的に炎上させようというよりも、ターゲットである年代の女性にとっての「あるある」や自虐ネタを想定していたのではないかと推測される。もっとも、潜在顧客を 「落とす」ないしは「貶める」表現は、潜在顧客の印象を悪くする可能性が高く、卑下・自虐ネタのつもりが、その意図が伝わらず、クレームを受けて訂正・謝罪に追い込まれる可能性には十分留意が必要だろう。

 また、近年では、差別・ステレオタイプ・ポリティカルコレクトネスの問題がある。例えば、外国人に関するステレオタイプ、性別に関するステレオタイプ等を強調する広告については、「差別だ」という観点からの批判がされ、訂正・謝罪に追い込まれることも多い。最近では、やや過剰反応と思われるようなクレームがインターネット上で増幅し訂正・謝罪に追い込まれるパターンもあり、常にそのような「運動」に影響されるべきかは問題であるが、少なくとも広告代理店としては、少数派の人がこれを見たらどう感じるか等の観点を踏まえてレビューし、リスクがあれば、広告主にリスクを告知するのが必要である。

 なお、いわゆる、アニメ絵・萌え絵については、特に公共的主体がこれを利用することに対してクレームがつくことがある。ただし、(広告ではないが)NHKによるVチューバーの起用に対してインターネット上で反対運動が起こったものの、NHKが起用を継続する等、クレームがついたからといって必ずしも訂正・謝罪する必要はない、という対応も徐々に増えていることには留意が必要である。

©松尾剛行 本記事は、松尾剛行著「広告法律相談125問」(日本加除出版、2019年)の内容を転載したものです。
広告法律相談125問
  • 参考文献
  • 広告法律相談125問
  • 著者:松尾剛行
  • 定価:本体 2,700円+税
  • 出版社:日本加除出版
  • 発売年月:2019年7月

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