イベント実施上の法的留意点と手続

知的財産権・エンタメ
小松 真理子弁護士 株式会社電通

 当社ではインターネットメディアの運営を行っているのですが、このたび読者を集めた大規模なイベントの実施を考えております。イベント実施上必要な手続きや、その他の留意事項について教えてください。

 イベントの開催に際しては、どのような場所でどのようにイベントを運営するのかというイベントの「実施」に関連する留意点と、どのようなコンテンツを提供するのかというイベントの「内容」に関する留意点を踏まえ、多方面の法規制に対応する必要があります。

解説

目次

  1. イベントの実施において必要とされる事項
    1. 屋外広告物の設置に関する対応
    2. イベント会場の設備・運営に関する対応
    3. コンパニオンや会場スタッフ、モデル等の起用に関する対応
    4. 飲食物の提供、および衛生・環境に関する対応
    5. 産業廃棄物の処理に関する対応
  2. イベントの内容に関連して留意が必要とされる事項
    1. 来場者の個人情報の取得時に関する対応
    2. 来場者の肖像撮影に関する対応
    3. プレゼントや特典等の提供に関する対応
    4. 映像、楽曲、キャラクター等のコンテンツの利用に関する対応
  3. まとめ

イベントの実施において必要とされる事項

 一般の参加者を集めてイベントを行う際、公共の場所等で実施される場合が多いため、公共の利益や第三者の権利を侵害する可能性が少なくなく、これを規制する様々な法規制を遵守する必要があります。たとえば、イベントの実施場所に関わる法規制としては、イベントを公共の場所で実施する場合には使用場所・使用形態により、道路交通法、道路法上の許可の取得が求められます(道路交通法77条、道路法32条)。また警察が、警察法2条1項で定められる責務にもとづいて事故防止対策等を講じるために、イベント主催者は管轄の警察署への事前相談が必要となる場合があります

屋外広告物の設置に関する対応

 イベントを告知するための看板やスポンサー看板等の屋外広告物を設置する場合は、屋外広告物条例にもとづき屋外広告物許可申請手続きを行い、知事等から許可を受ける必要性が生じる場合もあります。たとえば東京都では、東京都屋外広告物条例8条に定められています。

イベント会場の設備・運営に関する対応

 イベント会場の設備・運営に関わる法規制として、不特定多数の参加者が集まる場所での催事では、火災予防の観点から、消防法・火災予防条例にもとづき、消防署長への開催届出等の手続きが必要となります。例として、東京都では火災予防条例第59条の3に定められています。

 また、イベントにおいて舞台装置や大型モニター、ステージ等を設置する場合、それらの設置が建設業法上の「施工」に該当する場合は、施工を実施する業者が必要な許可(建設業法3条)を保有しているかを確認のうえ、建設業法上求められる項目を規定した請負契約(建設業法19条)を適切に締結する必要があります

 またイベント実施体制に関連して、イベント主催者だけでは来場者や関係者の生命・身体・財産上の安全を確保できない場合は、会場の警備を警備会社に委託することを検討する必要があります。この場合、警備業法は、警備業務を営む事業者は公安委員会から警備業の認定を受けていなければならないと定めていることから(警備業法4条)、警備業を委託する場合(再委託の場合も同様です)は当該認定を受けた業者を適切に選定する必要があります

コンパニオンや会場スタッフ、モデル等の起用に関する対応

 イベント会場でコンパニオンや会場スタッフ、モデル等を起用する場合も注意が必要です。労働者派遣法により、日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者については、原則として労働者派遣が禁止されているため(労働者派遣法35条の4)、これらの人材派遣を受ける場合には、「派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約が労働者派遣法に違反するものではないこと」の誓約等を、派遣元事業主から求める等の対策をとることが必要です

飲食物の提供、および衛生・環境に関する対応

 さらに、衛生・環境に関わる法規制として、イベントで飲食物の提供を行う場合、また不特定多数を対象として調理食品の提供を行う出店店舗は、食品衛生法にもとづき営業許可申請手続を行い、都道府県知事から許可を受けることが必要になります(食品衛生法52条)。出店社がもともと食品事業者でない場合でも、反復継続して不特定多数を対象に対価を得て食品を提供する行為は食品衛生法上の営業行為とみなされますので、注意が必要です。

産業廃棄物の処理に関する対応

 加えて、イベントの廃材として木片やプラスターボード等の産業廃棄物が排出される場合、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)にもとづいてこれらの産業廃棄物を適切に処理しなければなりません(廃棄物処理法12条)。

イベントの内容に関連して留意が必要とされる事項

来場者の個人情報の取得時に関する対応

 来場者対応に関わる法規制として、イベント参加者から住所、氏名といった個人情報を取得する場合には、個人情報保護法に従ってその利用目的等を通知または公表する必要があります(個人情報保護法18条)。この通知・公表の方法は内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法でなくてはならず、ウェブサイトにプライバシーポリシーを掲載する方法が多く採用されています。

来場者の肖像撮影に関する対応

 参加者の肖像が含まれる映像や写真等を、後日広告等で利用することを想定している場合は、参加者の肖像権やプライバシー権等の権利を処理しておく必要がありますので、参加者から事前に広告等での肖像利用について同意書を取得しておく必要性があります

プレゼントや特典等の提供に関する対応

 イベントの来訪者に対してプレゼントや特典等の提供を行う場合は、景品表示法上の景品規制を守る必要があります。景品規制は、物品やサービスの提供が事業者と消費者の間の「取引に付随」して行われる場合に、提供可能な景品の上限額と、景品の総額の上限を規律するもので、一定の取引条件を満たす消費者に一律に景品を提供する場合(総付景品)と、抽選等の方法で選別された消費者に景品を提供する場合(懸賞)とで、規制内容が異なります(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」〔昭和52年公正取引委員会告示第5号〕、「「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準」〔昭和52年4月1日事務局長通達第6号〕、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」〔昭和52年3月1日公正取引委員会告示第3号〕)。

映像、楽曲、キャラクター等のコンテンツの利用に関する対応

 イベントで用いるコンテンツに関わる法規制にも留意する必要があります。イベントで使用する映像、楽曲、キャラクター等の著作物についてはその著作権について事前に権利処理を行っておく必要がありますし、楽曲についてはJASRAC等の著作権等管理事業者が権利している楽曲を使用する場合には、当該著作権等管理事業者に届出を行うなどの手続が必要です。加えて、イベント名等の名称についても、第三者が当該イベント名を商標出願・登録していないか、事前に調査を行っておくべきです

まとめ

 このように、イベントには不特定多数の参加者が来場するため、身体・生命・財産上の様々な権利に配慮する必要性があるとともに、当該イベントで提供するコンテンツの内容自体についても、第三者の権利を侵害する内容とならないように留意する必要があります。開催するイベントの特性を踏まえ、問題となりそうな法分野について適切に勘所を備えておくことが重要でしょう。  

本稿で解説したイベント実施時に留意すべき法令、権利
- イベントに関わるシチュエーション 留意すべき法令、権利
1. イベントの実施において必要とされる事項 イベントを公共の場所で実施する場合 道路交通法、道路法
警察法
イベント告知用看板やスポンサー看板等の屋外広告物を設置する場合 屋外広告物条例
不特定多数の参加者が集まる場所での催事 消防法・火災予防条例
舞台装置や大型モニター、ステージ等を設置する場合 建設業法
イベント主催者だけでは来場者や関係者の生命・身体・財産上の安全を確保できない場合 警備業法
コンパニオンや会場スタッフ、モデル等を起用する場合 労働者派遣法
飲食物の提供を行う場合 食品衛生法
イベントの廃材として木片やプラスターボード等の産業廃棄物が排出される場合 産業廃棄物処理法
2. イベントの内容に関連して留意が必要とされる事項 イベント参加者から住所、氏名といった個人情報を取得する場合 個人情報保護法
参加者の肖像が含まれる映像や写真等を、後日広告等で利用することを想定している場合 肖像権、プライバシー権
イベントの来訪者へプレゼントや特典等の提供を行う場合 景品表示法
イベントで映像、楽曲、キャラクター等の著作物を使用する場合 著作権
イベント名等の名称 商標出願・登録

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