特定複合観光施設(IR)の広告やキャンペーン等の留意点

知的財産権・エンタメ
高橋 基行弁護士 株式会社電通

 2018年7月に「特定複合観光施設区域整備法」が成立しましたが、カジノを含む特定複合観光施設(IR)の広告やキャンペーン等を行う上で留意すべき点を教えてください。

 カジノ事業やカジノ施設に関する広告や勧誘については、ギャンブルへの依存や青少年への有害な影響を防止する観点から、特定複合観光施設区域整備法 106条により特別な規制がかけられています。また、今後制定される予定のカジノ管理委員会規則や広告勧誘指針において、より具体的な規制が設けられる可能性があります。

 さらに、カジノ事業者が顧客をカジノ行為に誘引するための手段として提供する景品類については景品表示法が適用されないとするものの(特定複合観光施設区域整備法108条6項)、カジノ管理委員会規則により別途制限が設けられるものと予想されますので、そちらにも留意する必要があります。

解説

目次

  1. IR整備法と広告・勧誘規制について
  2. 広告・勧誘に関する規制について
    1. 広告・勧誘の内容に関する規制について
    2. 広告・勧誘の場所や方法に関する規制について
    3. 広告・勧誘先に関する規制について
    4. そのほかの広告・勧誘規制について
  3. 広告・勧誘規制遵守のための体制について
  4. 景品類に関する規制について

IR整備法と広告・勧誘規制について

 特定複合観光施設区域整備法(以下「IR整備法」)は、2016年12月に成立した特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律に基づき、カジノ施設を含む特定複合観光施設(以下「IR」)を導入する手続きや、IR事業者の義務や責任、そのほかIR事業に関する様々な規制等について定めたものです。本稿では、カジノ事業等の広告や勧誘等に関する規制について説明します。

広告・勧誘に関する規制について

 IR整備法では、カジノ事業やカジノ施設の広告や勧誘に関して、ギャンブルへの依存や青少年への有害な影響を防止する観点から、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等で定める広告規制にならった特別な規制を設けています。

 具体的にはIR整備法106条各項に規定しており、以下のとおり、1. 広告・勧誘の内容に関する規制、2. 広告・勧誘の場所や方法に関する規制、3. 広告・勧誘先に関する規制、4. そのほかの広告・勧誘規制について定めています。

広告・勧誘の内容に関する規制について

 広告等内容に関する規制として、カジノ事業やカジノ施設に関して広告や勧誘をするとき、以下の表示等をすることが禁止されます(IR整備法106条1項)。

  • 虚偽または誇大な表示・説明
  • 客観的事実であることを証明することができない表示・説明
  • 善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある表示・説明

 他方、カジノ事業やカジノ施設に関して広告や勧誘をするときには、カジノ管理委員会規則に従って、以下の事項を表示または説明することが義務付けられます(IR整備法106条5項)。

  • 20歳未満の者がカジノ施設に入場してはならない旨
  • カジノ施設の利用とカジノ行為に対する依存との関係について注意を促すために必要なものとしてカジノ管理委員会規則で定める内容

広告・勧誘の場所や方法に関する規制について

 特定複合観光施設区域(以下「IR区域」)や、国際線旅客ターミナル施設等の政令で定められた地域を除く場所では、カジノ事業やカジノ施設に関する屋外広告物の表示が禁止されます(IR整備法106条2項1号)。
 また、上記以外の場所においてカジノ事業やカジノ施設に関するビラやパンフレット等を頒布すること、また、同区域内でも20歳未満の者に対してそれらを頒布することが禁止されます(IR整備法106条2項2号)。

広告・勧誘先に関する規制について

 カジノ事業やカジノ施設に関して、20歳未満の者に対する勧誘は禁止されます(IR整備法106条3項)。
 また、カジノ事業やカジノ施設に関して勧誘をするに際し、その相手方がカジノ施設を利用しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含みます)を表示したときは、当該勧誘を継続する行為をしてはなりません(IR整備法106条4項)。これは、ギャンブルへの依存を防止するために、貸金業法16条4項を参考にした規制といえます。

そのほかの広告・勧誘規制について

 以上の各規制のほかに、カジノ事業やカジノ施設に関して広告や勧誘をする者は、20歳未満の者に対するその影響およびカジノ施設の利用とカジノ行為に対する依存との関係に配慮するとともに、その広告や勧誘が過度にわたることのないよう努めなければなりません(IR整備法106条6項)。また、この趣旨に照らして必要があると認めるときは、カジノ管理委員会が、広告や勧誘をするにあたって従うべき指針を示すことができるとしています(IR整備法106条9項)。

広告・勧誘規制遵守のための体制について

 IR整備法106条7項では、カジノ事業者は上記規制を遵守するために、以下の措置を講じなければならないとしています。

  • 従業者に対する教育訓練の実施
  • 行為準則の作成
  • 当該遵守に必要な業務を統括管理する者や監査する者の選任
  • そのほか、カジノ管理委員会規則で定める措置

 カジノ事業者およびその従業者は、この行為準則を守らなければならず(IR整備法106条8項、68条3項)、また、行為準則を作成または変更した際、カジノ事業者はカジノ管理委員会規則に従って、遅滞なくカジノ管理委員会に届け出る必要があります(IR整備法106条8項、72条2項)。

景品類に関する規制について

 IR整備法では、景品類についても規定しています。
 カジノ事業者が、顧客をカジノ行為に誘引するための手段として、カジノ行為に付随して物品、金銭、役務その他の経済上の利益を提供する場合には、当該景品類については不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)4条の規定は適用されないとしています(IR整備法108条6項)。

 これは、諸外国のカジノ事業においては顧客のカジノの利用状況に応じた「コンプリメンタリー(コンプ)」と呼ばれる物品やサービス等を提供することが一般的な商慣習となっていることによります。つまり、総付景品類については取引価額の20%の金額(取引価格が1,000円未満の場合は200円)を限度としなければならないとする景品表示法に基づく規制が仮にカジノ行為に付随する経済上の利益に適用されるとなると、わが国のカジノ事業ではそのような「コンプ」の提供が困難になるためです。

 ただし、IR整備法108条1項では、景品類の内容、経済的価値または提供方法が善良の風俗を害するおそれのあるものとしてカジノ管理委員会規則で定める基準に該当することのないようにしなければならないとされています。そのため、上記「コンプ」のみならず、来店誘因のための景品類の提供についても、カジノ管理委員会規則における景品類に関する規制に留意する必要があります。

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