著作権侵害またはその恐れのある作品の広告使用を回避するポイント

知的財産権・エンタメ
松尾 剛行弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 著作権についてはどの程度調査が必要ですか?

 完全に調べきるのは難しいですが、情報通信等に関する技術を利用して合理的調査をするとともに、最低限の自衛として、クリエイターに不侵害の表明保証をさせましょう。

解説

 著作権侵害や、仮に著作権を侵害していなくても「パクリ」として社会的に非難される事態は頻繁に生じる。厳密な意味での著作権侵害には当たらなかったとも論じられるが、東京オリンピックのロゴマーク騒動では、ネットを中心とした大炎上によって、再度ロゴマークを選び直す事態にまで至った。

 このような事態をできるだけ避けるという観点から、クリエイター(制作会社)との間の契約書に、「甲(制作会社)は、乙に対して提出する全ての成果物の権利処理を万全に行い、成果物が著作権その他の第三者の権利を侵害したり、(権利侵害の有無を問わず)社会的に非難されるようなものではなく、かつ、そのようなおそれもないことを表明し保証する。万が一、第三者から成果物について請求、異議、クレーム、訴訟等が生じた場合、甲はその費用及び責任で乙を防御し、乙を免責せしめる。」等という表明保証(及び違反の場合、補償・防御に関する条項)を入れるべきだ、とアドバイスする弁護士もいる。

 しかし、(そもそもこのような条文を交渉上入れられるかという問題等はともかく)このような表明保証(及び補償・防御に関する条項)があれば問題がないということでは全くない。契約にそのような一条を入れただけで、何ら合理的な調査もせずに、「パクリ」と非難され得る広告を流通させれば、権利者から強いクレームを受けて訴訟沙汰にもなりかねないし、社会的に非難され、広告主からの信頼を失うだろう。それではどうすべきか。

 まずは、信用できるクリエイター(制作会社)を選ぶということであろう。新しい会社と取引する場合には、これまで他の広告代理店との関係できちんとしたものを出してきている履歴(トラックレコード)があるか、トラブルになった例があればそれはどのようなものか(注: 悪質なクレーマーに巻き込まれただけという場合もあるから、過去トラブルになっていれば取引しないというのではなく、どのようなトラブルかが重要だろう。)等をきちんとチェックすべきである(注: 逆にいえば、そのような信用のできる制作会社を選ばず、例えば、キャッチコピー等を公募して、大賞を決めてこれで大々的に宣伝するといった企画は、問題がある作品が送られる可能性は高い以上、通常以上に類似性等のチェックを厳しくすべきである。)。

 次に、類似性チェック等の合理的な調査をすることである。その場合には、テクノロジーを活用すべきであり、類似性チェック専用のサービスやサイトが多く存在する(注: 例えばGoogle画像検索には、画像から類似画像を検索できる機能があるので、無料で簡単に類似チェックをすることができるが、秘密保持契約を結んでいないGoogle等に対し未公表のキャッチコピーや広告クリエイティブ案を渡すべきかという問題は残るだろう。)。

 更に、制作会社から、どのような作品を参考にしたかや、権利処理としてどのような処理をしたか(していないか)及びなぜそれでよいと考えているか、場合によっては制作会社自身がどのような類似チェックをしたかを説明させることである。例えば、「この部分はこの作品のアイディアを、この部分はこの作品のアイディアを参考にしましたが、こういう理由で単なるアイディアを参考にしたただけで、著作権の問題はないと考えています」等という説明を踏まえて調査するのと、そういう前提がない中で調査をするのでは異なる。また、制作会社に一次的調査をさせてその結果を参考にすれば、効率は上がる(ただし制作会社の調査結果を「うのみ」にしてはならない。)。なお、再委託等の場合の具体的権利処理については、『広告法律相談125問』Q22(⇒52頁)を参照のこと。

 そのような対応をした上での最低限の自衛策として、上記のような文言を入れるべきであるものの、『広告法律相談125問』に記載の下請法等(⇒165頁)の問題があり、どこまでその文言が有効かという点も疑問がないではない。その意味では、やはり、1つの方法でよしとするのではなく、なすべき対策を尽くすことが重要であろう。

©松尾剛行 本記事は、松尾剛行著「広告法律相談125問」(日本加除出版、2019年)の内容を転載したものです。
広告法律相談125問
  • 参考文献
  • 広告法律相談125問
  • 著者:松尾剛行
  • 定価:本体 2,700円+税
  • 出版社:日本加除出版
  • 発売年月:2019年7月

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