小売等役務商標制度とは

知的財産権・エンタメ

 当社はスーパーマーケットを運営していますが、個々の商品や、個々の商品の販売サービスではなく、様々な商品を取り扱うスーパーマーケットのサービスを示すものとして、店舗の看板や店員の制服に表示するマークなどを商標として登録することはできますか。

 小売事業者や卸売事業者は、取扱商品ごとに商標登録する以外にも、顧客に対する便益(サービス)の提供を指定役務として、店舗名や屋号等について商標登録を受けることが可能です。そのため、スーパーマーケットのほか、百貨店や問屋、商社などは、店舗の看板、店員の制服、ショッピングカート、レジ袋等に使用する商標などを「小売等役務商標」として商標登録できます。

解説

目次

  1. 「小売等役務商標制度」とは
  2. 「小売等役務商標制度」のメリット
  3. 「小売等役務商標」の登録手続
  4. 他者による商標登録がある場合
  5. まとめ

「小売等役務商標制度」とは

 かつては、小売業者等が使用する商標について、商品や役務そのものの広告宣伝に表示する商標(値札に付ける標章、折込チラシに付する標章)は保護されていましたが、店舗の看板、店員の制服、ショッピングカート、レジ袋等に表示する商標については保護の対象とはされていませんでした。

 このような制度の下で、他者による商標の使用を防ぐためには、取り扱う個々の商品について商標登録をしなければならず、スーパーマーケットや百貨店のように取扱商品が多岐にわたる場合には、多くの商品分野で登録手続を行うための手間や費用の負担は小さくありませんでした。

 そこで、商標法の一部が改正され、平成19年(2007年)4月1日、小売業者・卸売業者が使用する目印・マークをサービスマーク(役務商標)として保護する制度である「小売等役務商標制度」が施行 1 されました(商標法2条2項)。

商標法2条(定義等)
この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
2 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。

「小売等役務商標制度」のメリット

 小売等役務商標として登録する場合、多岐にわたる商品を取り扱う小売業者等であっても、「小売サービス」という1つの分野で商標権を登録することもできるため、個々の商品について多くの商品分野で登録手続をすることに比べて、手間や費用の負担が軽減されることになります。

 また、一般的な商標登録で、個別の商品や役務に付された商標が保護されるのとは異なり、小売等役務商標制度においては、ショッピングカートや店員の制服、レジ袋等に表示する商標についても包括的に保護の対象とされることになります。

 「小売等役務商標」としての「使用」には、小売業者等が取扱商品の値札、折込みチラシ、価格表、レシート、ショッピングカート、買い物かご、陳列棚、会計用レジスター、店舗の看板、店舗内の売り場の案内板、店舗内の売場の名称、店員の制服・名札、レジ袋、包装紙等に標章を表示することなどがあげられ、また、テレビ広告やインターネットにおける広告などに標章を表示することも含まれます 2

「小売等役務商標」の登録手続

 日本では登録主義が採用されているため、たとえ商標を自己の商品・役務に長年使用していたとしても、商標登録をしなければ、商標権を取得することはできません。

 個人、法人において、小売等役務商標の権利取得を希望する場合には、特許庁に商標登録出願手続を行う必要があります。特許庁においては、実体的要件(商標法3条、4条)、形式的要件(5条、6条)などについて審査されることになります。

 小売等役務商標制度の対象としては、衣料品店や八百屋、肉屋、酒屋、眼鏡屋、本屋、家具屋、家電量販店、飲食料品スーパー、コンビニエンスストア、ホームセンター、百貨店、卸問屋等のあらゆる小売業、卸売業が含まれます。また、カタログ、テレビやインターネットを利用した通信販売も対象となります 3

 ただし、商標は自己の商品・役務(サービス)を他者の商品・役務と区別する目印として使用するものであるため、多くの事業者が使用する「山田商店」や「大阪屋」といった商店名については、自他役務の識別力が乏しいことから、通常商標登録は認められません。

他者による商標登録がある場合

 前述のように、多くの事業者が使用する「山田商店」や「大阪屋」といった商店名については、通常では商標登録が認められません。ただし、特定の事業者の商標として全国的に有名である場合など、商標登録が認められる可能性があります。

 仮に、他者に先に小売等役務商標として商標登録された場合であっても、改正法の施行(平成19年(2007年)4月1日)以前から使用していた商標については、特に周知されていなかったとしても、従来業務の範囲内であれば、使用を継続することが許されます 4。なお、周知性があった場合には、従来業務の範囲に制限されません。

 また、他者の商標登録が認められたことについて不服がある場合、登録公報の発行後2か月以内であれば、登録を取り消すための異議申立てをすることが可能です(商標法43条の2)。登録後5年以内であるならば、登録を無効にするための無効審判を請求することも可能です(商標法47条1項)。

まとめ

 以上のように、小売業者・卸売業者が使用する目印・サービスマーク(役務商標)については、「小売等役務商標」として商標登録することが可能です。百貨店やスーパーマーケットだけでなく、実店舗のないカタログ販売、テレビショッピング、インターネットの通信販売も対象となりますので、小売業者・卸売業者の方々で、従来使用していた、または、これから使用するつもりのサービスマークがある方は、商標登録をご検討ください。


  1. 意匠法等の一部を改正する法律(平成18年6月7日法律第55号) ↩︎

  2. 参照:特許庁「小売等役務商標制度に関するよくあるQ&A」(2007年3月)Q4 ↩︎

  3. 参照:特許庁「小売等役務商標制度に関するよくあるQ&A」(2007年3月)Q3 ↩︎

  4. 参照:特許庁「小売等役務商標制度に関するよくあるQ&A」(2007年3月)Q5 ↩︎

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