採用予定の外国人材が、在留資格認定証明書の交付前に「短期滞在」で入国してしまった場合の対応方法

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社は英会話スクールを運営しており、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどの人材を講師として積極的に採用しています。現地の大学を卒業した人材を日本に呼び寄せるケースが多いのですが、なかには「早く日本に行きたい」という気持ちから、当社が申請した在留資格認定証明書が送付される前に観光目的の短期滞在で入国してしまう人がいます。このような場合、日本国内ではどのような手続きが必要となるのでしょうか。

 海外在住の外国人材を日本に呼び寄せる場合、通常は在留資格認定証明書の交付申請を行うことが一般的ですが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、シンガポール、韓国等との「短期滞在」での入国が比較的容易な査証免除国の国民である場合には、「短期滞在」の在留資格ですでに日本に入国しているケースも考えられます。そのような場合で在留資格の変更を希望する際は、入国管理局に詳細な理由書を提出し、具体的な理由を説明することが求められます。
 申請が受理されるケースもありますが、それはあくまで例外であり、「短期滞在」から他の在留資格への変更申請は認められないのが原則です。また最近では、在留資格認定証明書に伴う短期滞在から他の在留資格への変更申請が受理されないケースが増加しているため、本来の手続きの通り、在留資格認定証明書を持参して本国の大使館でビザ申請を行い、そのビザを持って日本に入国してもらうという実務を徹底したいところです。

解説

目次

  1. 従来の対応
  2. 最近の入国管理局の対応
  3. 受理された場合の対応
  4. 短期入国時の現実的な問題

従来の対応

 一般的には「短期滞在」から他の在留資格への変更は認められていません。しかし例外として、短期滞在(90日)で日本に滞在中に在留資格認定証明書が発行された場合には、国内で「短期滞在」から就労可能な在留資格への変更申請が受理されるケースがあります(通常、15日や30日の「短期滞在」では受理されません)。ただし、これについては明確な規定などがあるわけではなく、あくまでも「短期滞在」からの変更は受理しないというのが原則です。これまでは、一時帰国して本国の大使館などでビザ申請を行い再来日しなければならない申請者に便宜を図る意味合いで、例外として受理される場合がありました。

最近の入国管理局の対応

 入国管理局により対応が異なることがありますが、最近では認定証明書発行に伴う短期滞在の変更は受理されないケースが増加しています。変更を希望した際には詳細な理由書の提出が求められ、「なぜ在留資格認定証明書の交付申請をしているにもかかわらず、短期滞在で入国しているのか?」「帰国できない理由は?」といった質問への具体的な説明が求められます。

 変更許可申請が受理されなかった場合には、「短期滞在」の在留期限が到来する日までに必ず日本から出国しなければならず、仮に出国しなかった場合には不法残留となり退去強制手続きの対象となります

受理された場合の対応

 在留資格の変更許可申請が受理された場合には、短期滞在の在留期限にかかわらず、原則として審査結果が出るまではそのまま日本に滞在することが可能となります。審査の結果、就労可能な在留資格へと変更されれば、そのまま外国人社員として日本に滞在できることになります。

 このような場合には「短期滞在」の在留期限に注意しなければなりません。

 在留資格認定証明書交付申請はあくまでも海外にいる者を呼び寄せるための手続きであり、原則として申請人が日本国内に「短期滞在」で滞在していることとは何ら関係がありません。そのため、在留資格認定証明書の交付申請を行っていても、現在所持する「短期滞在」の在留期限は必ず守らなければなりません。「短期滞在」の在留期限ぎりぎりになってから在留資格認定証明書の交付申請を行った場合に、「在留資格認定証明書の交付申請を行っているから、短期滞在の在留期限が切れても滞在できる」と勘違いしているケースが見られるため注意が必要です。
 一方、在留資格の変更許可申請国内にいる者が対象の手続きです。これが受理された場合には審査結果が出るまでは引き続き在留することができ、「短期滞在」の在留期限が経過しても問題ありません

短期入国時の現実的な問題

 在留資格認定証明書の発行前に短期滞在で入国してしまうと、就労可能な在留資格への変更が完了するまでは在留カードが発行されません。在留資格認定証明書の発行を待って、在留資格変更の手続きを行い、許可が出るまでは早くても1~2か月程度の期間を要します。在留カードがないということは、外国人材が日本国内での身分証明書を持たないことを意味し、その間は住居の賃貸借契約、携帯電話の加入契約、銀行口座の開設など、ほとんどの契約行為ができません。また、この期間中の滞在費の支払い問題も発生するため、雇用企業に与える影響は決して小さなものではありません。

 外国人従業員の呼び寄せにあたっては、よほどの理由がない限り、本来の流れの通り、まずは在留資格認定証明書を持って本国の大使館でビザ申請を行い、そのビザをもって日本に入国するよう、採用した外国人材への連絡を徹底するべきです。

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