介護保険サービス事業者が提供するサービスの種類と手続きの流れ
人事労務介護保険サービス事業者が指定を受けるサービスの種類と手続きの流れを教えてください。また、指定事業者になるために必要な要件や介護サービスの種類についても教えてください。
介護保険サービスには都道府県の指定を受けることが必要なサービスと、市町村の指定を受けることが必要なサービスがあります。
一般的に、指定申請は、①都道府県や市町村との事前相談、②必要書類の作成、③申請、④審査、⑤指定、という流れで進んでいきます。
指定事業者になるためには一定の要件を満たすことが求められるほか、提供する介護保険サービスの種類ごとに指定を受けることが必要な点に注意してください。
解説
目次
事業者として指定を受ける
介護保険のサービスにはさまざまな種類がありますが、サービスを提供する事業者になるためには都道府県や市町村の指定を受けることが必要です。都道府県の指定を受けることが必要なサービスと、市町村の指定を受けることが必要なサービスがあります。
指定申請の手続きの流れ
指定申請は、①都道府県や市町村と事前相談、②必要な書類を作成、③役所の担当窓口で申請、④審査、⑤指定、という流れが一般的です。指定前に説明会や研修が行われている自治体もあるので、事前相談の段階で確認しておく必要があります。また、申請の時期についても事業開始日の2か月前末日までなど、申請期限が決まっている自治体が多いので計画的に進めましょう。
申請後、事業所としての各サービスの人員基準、設備基準、運営基準などを満たしているかどうか、申請者(事業者)やその法人役員が欠格事由に該当していないかどうかを審査します。基準を満たしていれば指定が行われ、サービスを開始することができます。
介護サービスはこのような基準に基づく指定を行っていることに特徴があります。新規申請以外にも、人員配置が変更になった場合の変更申請や6年に一度は指定更新を行う必要があります。
指定事業者になるための必要な要件
介護保険事業者の指定を受けるためには、以下のような条件を満たしている必要があります。
- 法人であること
- 人員基準、設備基準を満たしていること
- 運営基準を満たし、適切な事業の運営ができること
- 欠格事項に該当しないこと
居宅サービスについての指定
指定が必要な居宅サービスには、下図のようなサービスがあります。
介護給付、予防給付の各サービスの指定は都道府県が行います。都道府県の指定の事務は、指定都市および中核市に移譲されています。そのため、都道府県(指定都市、中核市)の担当窓口に事前相談を行う必要があります。健康保険法で保険医療機関や保険薬局としてすでに指定されている医療機関などが、訪問看護や訪問リハビリテーションなどを行う場合は、指定申請を行わなくてもサービスを開始できます(みなし指定)。
施設サービスについての指定
指定が必要な施設サービスには、下図のようなサービスがあります。
介護給付の各サービスの指定は都道府県が行います。なお、施設サービスの場合、指定申請を行う前に土地の取得や施設整備の準備などがあるため、都道府県の施設整備計画に沿って募集が行われます。募集に応募して選定され、工事の着工などを経て指定申請を行うという流れになります。
地域密着型サービスについての指定
指定が必要な地域密着型サービスには、下図のようなサービスがあります。
介護給付、予防給付の各サービスの指定は市町村が行います。そのため、市町村の担当窓口に事前相談を行う必要があります。
2018年4月からは「保険者(市町村)の機能強化」が行われています。地域のマネジメントを推進するため、保険者である市町村が介護サービスなどの供給量を調整できるように、指定拒否や条件付加のしくみが導入されています。これにより、地域密着型通所介護事業所などの数が市町村の介護保険事業計画の見込み量に達している場合に、事業所の指定を拒否することが可能になっています。
介護サービスと指定権者
介護サービス | 指定権者 | |
---|---|---|
居宅サービス・ 介護予防サービス |
訪問介護 | 都道府県 (指定都市、中核都市) |
(介護予防)訪問入浴介護 | ||
(介護予防)訪問看護 | ||
(介護予防)訪問リハビリテーション | ||
(介護予防)居宅療養管理指導、通所介護 | ||
(介護予防)通所リハビリテーション | ||
(介護予防)短期入所生活介護 | ||
(介護予防)短期入所療養介護 | ||
(介護予防)特定施設入居者生活介護 | ||
(介護予防)福祉用具貸与 | ||
特定(介護予防)福祉用具販売 | ||
施設サービス | 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、 介護療養型医療施設、介護医療院 |
都道府県 (指定都市、中核都市) |
地域密着型サービス・ 地域密着型予防サービス |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 市町村 |
夜間対応型訪問介護 | ||
地域密着型通所介護 | ||
(介護予防)認知症対応型通所介護 | ||
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | ||
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | ||
地域密着型特定施設入居者生活介護 | ||
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | ||
看護小規模多機能型居宅介護 | ||
その他 | 居宅介護支援、介護予防支援 | 市町村 |
介護予防・生活支援サービス事業 | 市町村 |
その他のサービスについての指定
① 居宅介護支援、介護予防支援
居宅サービスなどのケアプラン作成がおもなサービス内容です。これまで都道府県による指定でしたが、2018年4月からは市町村が指定を行うことになりました。
背景には、保険者(市町村)の機能強化があります。ケアプランは、介護保険利用者と地域でサービス提供を行う事業所の橋渡し的存在です。ケアマネ―ジャーを育成、指導、支援することが、サービスの質向上には欠かせないため、市町村単位でそれらを行えるしくみが作られました。
② 介護予防・生活支援サービス事業
介護予防・生活支援総合事業の中には、一般介護予防事業と介護予防・生活支援サービス事業があります。後者の介護予防・生活支援サービス事業は、訪問型サービスと通所型サービスに分かれており、これまであった介護予防訪問介護や介護予防通所介護がこの事業に移行しました。
これらの訪問型サービスと通所型サービスを「第1号事業」といい、市町村の指定を受ける必要があります。

- 参考文献
- すぐに役立つ 入門図解 最新 介護保険【サービス・費用】と介護施設のしくみと手続き
- 監修:若林 美佳
- 定価:本体 1,800円+税
- 出版社:三修社
- 発売年月:2019年8月

行政書士事務所 わかば