建設業事業者が講じるべき石綿(アスベスト)対策とは

人事労務
小島 彰社労士 こじまあきら社会保険労務士事務所

 石綿(アスベスト)とはどのようなものでしょうか。建設業事業者に求められている対策について教えてください。

 石綿(アスベスト)はかつて日本の建設現場で広く使用されていた鉱物繊維ですが、重大な健康被害を引き起こすことが明らかになったことを受けて、現在では製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面的に禁止されています。
 建築物の解体などを行う事業者は、あらかじめ石綿使用の有無を調査する必要があります。

解説

目次

  1. 石綿の製造等は全面禁止されている
  2. 事前調査をする(石綿障害予防規則3条)
  3. 作業計画を立てる(石綿障害予防規則4条、5条)
  4. 隔離等の措置が必要な場合(石綿障害予防規則6条)
  5. 立ち入り禁止の措置をする場合

石綿の製造等は全面禁止されている

 石綿は、日本の産業に大きな影響を与えた製品です。熱に強く頑丈で、コストパフォーマンスにも優れていたため、これまで建築材料や化学設備などに多用されてきました。しかし、現在では石綿の製造、輸入、譲渡、提供、使用は全面禁止されています。石綿の粉じんを吸入することにより肺ガンなどの重大な病気を引き起こすおそれがあるためです。

 このような問題点をふまえ、事業者は、労働者の健康を守るため、建築物などを解体する際は「石綿障害予防規則」などに基づき、必要な石綿対策の措置を講ずる必要があります。

石綿対策のまとめ

石綿対策のまとめ

事前調査をする(石綿障害予防規則3条)

 建築物の解体や石綿除去などをする場合、事業者は、あらかじめその建築物などについて、石綿使用の有無を調査しなければなりません。その際には、目視や設計図書(設計図、仕様書、構造計算書など、建物の設計内容を示すさまざまな書類のこと)などにより、石綿使用の有無をしっかり確認する必要があります。

 しかし、対象建築物の目視による石綿調査を行う場合、石綿使用の事実が見落されやすいという目視調査に特有の欠点があります。これに対応するため、厚生労働省は「建築物等の解体等の作業における石綿ばく露防止対策の徹底について」という通達で、目視調査で見落としやすい例を示して注意喚起をしています。事前調査を行う事業者は、この例を確認しておくことが必要です。

 この通達では、内装仕上材、鉄骨造の柱、煙突内部、天井裏などの石綿使用の事実が見落とされやすい場所の例示や、「石綿が煙突内部の石綿建材の上にコンクリートで覆われている」などの特殊な建設技術を要因とした見落されやすい石綿使用の例示などが行われています。

 また、「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」では、事前調査の細かい方法などを示しています。

 たとえば、目視や設計図書などによる調査は、石綿作業主任者技能講習修了者などの「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者」が行うと規定されています。

 その他、分析による調査の際の手順も指定されおり、用いるべき分析方法は「日本工業規格(JIS)A1481-1、A1481-2若しくはA1481-3又はこれらと同等以上の精度を有する分析方法」であるとの定めがあります。そして、事業者は、調査結果の記録を作業場の見やすい位置に掲示し、その記録を40年間保存すべきことも示されています。

作業計画を立てる(石綿障害予防規則4条、5条)

 事前調査の結果、解体などを検討している建築物などにおいて石綿使用の事実が判明した場合は、「石綿障害予防規則」などに定めるさまざまな措置を講じる必要があります。

 その中で最初にすべきものが、作業計画の策定および所轄労働基準監督署長への届出です。作業計画については、次の①~③の事項を定める必要があります。その上で、実際の作業も当該計画に従って進めなければなりません。

  1. 作業の方法および順序
  2. 石綿粉じんの発散を防止し、または抑制する方法
  3. 労働者への石綿粉じんばく露を防止する方法

 実際に作業を行う際は、所轄労働基準監督署長への届出が必要です。
 この届出については期限が定められています。

 たとえば、耐火建築物または準耐火建築物における吹付け石綿の除去作業については、工事開始の14日前までに作業計画を届け出なければなりません。一方、建築物等(鋼製の船舶を含む)の解体等の作業のうち、以下の①~③の作業をする際は、工事開始前までに作業を届け出ることが必要です。

  1. 石綿含有の保温材・耐火被覆材等の除去作業
  2. 石綿等の封じ込めまたは囲い込みの作業
  3. ①以外の吹付け石綿の除去作業

隔離等の措置が必要な場合(石綿障害予防規則6条)

 事業者は、建築物等(鋼製の船舶を含む)の解体等の作業において、吹付け石綿の除去作業、石綿等の封じ込めまたは囲い込み作業、石綿等の切断等の作業を伴う石綿含有の保温材・耐火被覆材等の除去作業を労働者に行わせる際は、以下の措置を講じる必要があります。

  1. 作業場所をそれ以外の作業場所から隔離する
  2. 作業場所の排気に集じん・排気装置を使用する
  3. 作業場所を負圧(屋外よりも気圧が低い状態)に保つ
  4. 作業場所の出入口に前室を設置する

立ち入り禁止の措置をする場合

 事業者は、石綿を使用した建築物等(鋼製の船舶を含む)の解体作業などを行う際は、安全のために当該作業に従事する労働者以外の者が立ち入ることを禁止する必要があります。

 同時に、立ち入りの制限について周知させるため、見やすい場所に表示をしなければなりません。

作業計画の策定・所轄労働基準監督署長への届出

作業計画の策定・所轄労働基準監督署長への届出

【共有要素】
©小島彰 本記事は、小島彰監修「事業者必携 働き方改革法に対応! 建設業事業者のための 最新 労務管理・安全衛生・社会保険の法律と手続き」(三修社、2019年)の内容を転載したものです。
事業者必携 働き方改革法に対応! 建設業事業者のための 最新 労務管理・安全衛生・社会保険の法律と手続き

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する