なぜ就業規則を作成しなければならないのか

人事労務
小島 彰社労士 こじまあきら社会保険労務士事務所

 現在8人の従業員を雇用している当社では今後、段階的に従業員を増員することを予定しています。就業規則の作成が必要と聞いたのですが、なぜ就業規則を作らなければならないのでしょうか。また、就業規則にはどのような役割があるのでしょうか。

 常時10人以上の労働者を使用する経営者には就業規則を作成することが義務づけられており(労働基準法89条)、違反した場合には30万円以下の罰金が課せられます。就業規則の作成は、労使間のトラブルを未然に防ぐ機能があるため、経営者と従業員の双方にとって非常に重要なものです。

解説

目次

  1. 就業規則とは何か
  2. ルールはなぜ必要なのか

就業規則とは何か

 就業規則とは、会社にとって必要不可欠なルールブックだといえます。経営者の頭の中にある社内のルールや、法律で定められた事項などを社内の全員に同じように適用することによって、従業員の行動の統一化を図ります。たとえば、就業規則に「会社の始業時刻は午前9時00分とし、終業時刻は午後5時00分とする」というルールを置くことによって、従業員の行動をある程度統制し、会社運営が効率的に行うことが可能になると期待されています。

 労働基準法89条には、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、(中略)就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と規定されています。この要件に該当する会社は、就業規則を作成することを法的に義務づけられているのです。これに違反して就業規則を作成しないと、30万円以下の罰金が科せられます。

 労働基準法上の「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、給料(賃金)を支払われる者とされています。雇用形態が正社員、パートタイム労働者、アルバイト、契約社員など違っていても、それらすべてを含めた労働者に適用されます。たとえば、パートタイム労働者・アルバイトなど、合計10人で構成されている会社も、法的に就業規則の作成が義務づけられます。

 労働基準法において、就業規則に必ず記載すべき事項として挙げられているのが、①始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、②賃金、③退職(解雇も含む)です。つまり、就業規則は労働条件に関することを明確にするルールです。近年では、労働基準法や最低賃金法などの法令に関し、従業員が権利意識に目覚め、必要な要求を発信するようになりました。会社がこれらの要求をふまえ、法令に違反しない形で、会社の実情にあわせた就業規則の作成が求められています。

ルールはなぜ必要なのか

 さまざまな考え方を持つ人が会社に集まると、その認識の違いから小さなトラブルが生じたり、自分の利益のために会社や他の従業員に危害を加える人もでてきます。これらを未然に防ぐ意味からも、会社において一定のルールを定めることが重要になります。具体的には、仕事の内容を評価する明確な指針や、成果に対して公平かつ正当に報いる報奨の制度などを就業規則上に明記しておく必要があります。

 もっとも、就業規則は単に作成するだけではなく、文書化して従業員全員に配布(紙に印刷したものを配布する場合の他、パソコンなどで誰でも閲覧できる状態にした場合も含む)の上、その内容を周知することが必要です。いかに立派な就業規則を作成しても、その就業規則の存在を知らされていない従業員には、その就業規則は適用されません。この場合、原則として労働基準法などの法令の基準によってその従業員の処遇が決まることになります。

適切な就業規則を定めることによって得られる効果

就業規則が不適切 就業規則が適切
経営者
  • 会社の規則を従業員に周知しなくてはならない
  • 従業員を公平に取り扱うのが難しい
  • 会社のルールを全従業員に適用することができる
  • 就業規則の通りにするだけで従業員を公平に取り扱える
  • 従業員が疑問点を自己解決してくれる可能性が高い
従業員
  • 給与や待遇の明確な基準がないため境遇が不安定
  • 労働条件などに関する疑問を上司や経営者にいちいち確認しなければならず不便
  • 給与・待遇の基準が明確なので安心して働ける
  • 求められていること・禁止されていることを把握できる
  • 労働条件などに関し疑問があったらすぐに就業規則で確認できる

 就業規則は、遵守すべき法令の制限はあるものの、それ以外は経営者が自由に決めることができます。言葉や表現方法も自由ですが、トラブルを防止するためにあいまいな表現やまぎらわしい言い回しは避け、すべての従業員が読んで理解できる内容にするべきです。

 経営者自身の言葉で、①従業員がやるべきこと、②従業員がやってはいけないこと、③従業員になった場合に保障される権利とその権利を行使する場合の手順、④会社として従業員のためにやらなければならないこと、⑤従業員がルールに違反した場合のペナルティ、⑥従業員の給与体系、⑦会社の進むべき方向など、についてまとめてみましょう。法令に沿っているか、加えておくべき項目はないかなどを社会保険労務士などの専門家に見てもらうことで、就業規則は完成します。

 従業員の側から見ると、賃金や配置などの待遇に関する決定権を握っている会社との関係は、やはりよい形で保っておきたいという立場の弱さがあるのも事実です。このため、過度の成果を要求されたり、過酷な労働を強いられてもなかなか異論を唱えることができません。そのときに、一定の労働条件が就業規則に明記されていれば、それを根拠に改善を求めたり、労働基準監督署など公的機関に相談するなどの手段を講じることができます。このような事情からも、会社には就業規則の作成が必要とされているのです。

 一方で、就業規則をきちんと整備し、勤怠管理なども確実に行っていれば、会社側はそれを根拠に自身の正当性を主張することも可能になります。就業規則の作成は、労使間のトラブルを未然に防ぎ、会社としての立場を主張する根拠といえるため、従業員のためだけでなく、経営者にとっても就業規則は非常に重要なものだといえます。

©小島彰 本記事は、小島彰監修「事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル」(三修社、2019年)の内容を転載したものです。
事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル

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