在留資格「特定活動」で卒業後の外国人留学生を採用するには

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社はレストランチェーンを営んでおり、現在は数名の外国人留学生をアルバイトで雇用してホールや厨房で働いてもらっています。卒業後はそのうちの数名を正社員として採用したいと考えていますが、一般的な「技術・人文知識・国際業務」ではこのような業務に就くことができないと認識しています。ところが、最近では「特定活動」の在留資格で採用することが可能になったと聞きました。詳細を教えてください。

 2019年5月30日に法務省告示が改正され、在留資格「特定活動」による新しい外国人従業員の受入れ方法が創設されました。これは日本の大学卒業者が日本国内にある企業において、日本の大学等において修得した広い知識、応用的能力等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。

解説

目次

  1. 改正の概要
  2. 「特定活動」の対象者
  3. 「特定活動」の職務内容
  4. 「特定活動」の雇用形態
  5. さいごに

改正の概要

 2019年5月30日に「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(平成30年6月13日法務省告示第178号)が改正され、在留資格「特定活動」による新しい外国人従業員の受入れ方法が創設されました。

 従来の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、一般的なサービス業務や製造業務などがメインとなる職務は認められませんが、「特定活動」においては一定の要件を満たせば、このような活動も可能となり、外国人留学生が就職時に飲食店や小売店での一般的なサービス業務や製造業務に就くことができる可能性が開けてきました 1

 以下、出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン」(令和元年5月策定。以下、「ガイドライン」)に沿って解説していきます。

「特定活動」の対象者

 特定活動の在留資格は、日本の大学を卒業または大学院の課程を修了して学位を授与された人で、高い日本語能力を有する方が対象となります。

(1)学 歴
 日本の4年制大学を卒業または大学院の課程を修了し学位を授与された方に限られ、短期大学および専修学校の卒業、ならびに外国の大学の卒業および大学院の修了は対象になりません。

(2)日本語能力
 1)日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する人
 2)大学または大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した人は、上記 1)を満たすものとして取り扱われます。
 なお、外国の大学・大学院において日本語を専攻した方についても、上記 1)を満たすものとして取り扱われますが、この場合でも、併せて日本の大学・大学院を卒業・修了している必要があります。
(ガイドライン 2「対象者」)

「特定活動」の職務内容

 特定活動の職務内容は、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」である必要があります。「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは、「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務が該当します。単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務は該当しません(ガイドライン 3「「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」について」)。

 そのため、貴社のような飲食店に採用され、日本人に対する接客を行うことや、店舗で外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うものは該当しますが、単に厨房での皿洗いや清掃にのみ従事する業務は対象外となります(ガイドライン 5「具体的な活動例」)。

 さらに、日本の大学または大学院において修得した広い知識および応用的能力等を活用するものと認められる必要性がありますが、具体的には従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること、または、今後、その業務に従事することが見込まれることを意味します(ガイドライン 4「「本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること」について」)。

「特定活動」の雇用形態

 特定活動の雇用形態としては、公私の機関の常勤の職員として行うその機関の業務に従事する活動であることが求められるため、フルタイムの職員としての雇用に限られ、短時間のパートタイムやアルバイトは対象になりません
 また、契約機関の業務に従事する活動のみが認められるため、派遣社員として派遣先で就労することも対象外となります(ガイドライン 6「契約形態等」)。

 さらに、給与については「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定められており、在留審査においては地域や個々の企業の賃金体系を基礎に、同種の業務に従事する日本人と同等額以上か、また、他の企業の同種の業務に従事する人の賃金を参考にし、昇給面を含めた日本人大卒者・院卒者の賃金を参考にして判断されます。また、元留学生が海外等において就職し、実務経験を積んでいる場合、その経験に応じた報酬が支払われているかどうかについても確認されます(ガイドライン 7「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」)。

 なお、契約機関が適切に雇用管理を行っている必要性があり、社会保険の加入状況等についても確認が求められています。(ガイドライン 6「契約形態等」)

さいごに

 現在は外国人観光客の増加などによりインバウンド需要が高まっており、また、外国人留学生の就職率を50%にまで向上させることを目指すことが「日本再興戦略改訂 2016」で閣議決定されています。本改正は、これらの課題に対応するためのものですが、単なる単純労働に従事できるわけではないことに注意してください。

 従来は「技術・人文知識・国際業務」でもこのような職務内容で許可が下りることがありましたが、その取扱いや許可の基準が不明確な面も指摘されており、本改正はこのような職務における明確な線引きを設けたものと考えられます。

 あくまでも、学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていることが「特定活動」の在留資格の取得条件となっているため、職務全体のうち「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務がどの程度含まれるか、その割合が問題となると考えられます。そのため、自社の職務内容を明確に洗い出したうえで、慎重に在留申請を行うことが必要となります。


  1. 法律上資格を有する方が行うこととされている業務(業務独占資格が必要なもの)および風俗関係業務に従事することは認められません。 ↩︎

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