永住権の取得を希望する外国人社員への対応

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社は、8年ほど前から優秀な外国人留学生の新卒採用を始め、現在は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人社員が約10名在籍しています。先日、1人の外国人社員から「永住権を取得したい」と相談されました。雇用企業として行うべき手続や注意点について教えてください。

 永住権取得はあくまでも個人的な事情によるものであり、雇用企業が関与すべき義務はありません。しかし、永住権取得をサポートすることで、外国人社員の勤労意欲が高まり人材定着につながるケースがあるほか、外国人社員を日本人社員と同様にどのような職務にも配置できる点など、企業側にもメリットがあります。外国人社員の立場を尊重しながら、自社の事情に応じて対応することが求められます。

解説

目次

  1. 永住権取得のメリット
    1. 在留期間がなくなる
    2. 就業制限がなくなる
    3. 社会的信用が高まる
  2. 雇用企業の基本的な対応
  3. 永住希望外国人社員の具体的な要望例
    1. 永住申請の流れや必要書類を知りたい
    2. 永住申請に必要な身元保証人になってほしい
    3. 永住権の要件を満たすよう、海外出張を減らしてほしい

永住権取得のメリット

 外国人社員を雇用していると、「永住権」を取得したいという要望を受けることがあります。永住権を取得することで外国人社員が受けるメリットには、大きく分けて次の3つがあげられます。

  1. 在留期間がなくなる
  2. 就業制限がなくなる
  3. 社会的信用が高まる

 それぞれについて簡単に説明します。

在留期間がなくなる

 一般的な就労可能な在留資格では、数年ごとに出入国在留管理庁で更新申請を行う必要があります。しかし、永住権を取得した外国人労働者は、生涯にわたって日本で安定的に生活することが可能になります。

就業制限がなくなる

 「技術・人文知識・国際業務」の場合には、就労可能な職務には一定の制限がありますが、永住権を取得した外国人労働者は、日本人と同様にどのような職種にも就くことが可能です。

社会的信用が高まる

 永住権を取得することで、日本社会における外国人労働者自身の信用が高まります。特に、住宅ローンなどの高額契約を締結する際に、「永住権の取得」が契約締結の条件として付されている場合があるほか、永住権を取得することで、他の在留資格所持者より有利な借入利率の適用を受けられるケースがあります。また、不動産投資などでは初期投資額が大きく異なることもあります。

 このように永住権を取得することで、日本社会での活動がより自由になり、信用も高まるため、多くの外国人が永住権の取得を望んでいます。

雇用企業の基本的な対応

 しかしながら、永住権の取得とは、あくまで外国人社員の個人的な事情に基づくものであり、本来、雇用企業とは直接的には関係のないことがらです。雇用企業としては一般的に就労可能な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が維持できるように協力する必要性こそありますが、個人的な永住権の取得について、必ずしも積極的に関与することまでは求められていません。
 とはいえ、永住権取得は多くの外国人社員にとって大切な目的の1つであることも事実です。雇用企業が積極的に手助けすることで外国人社員のモチベーションが上がり、結果として就労意欲の向上や人材の定着につながることも考えられます。また、永住権を取得すれば就労制限がなくなるため、日本人社員と同様にどのような職務にも配置することができます。
 永住権の取得にはこれらのメリットがありますが、そのとらえ方は企業によってまちまちです。また、外国人社員の永住申請への関与の度合いも企業により異なります。

永住希望外国人社員の具体的な要望例

 雇用企業は永住権の取得を希望する外国人社員から、一般的に次のような要望を受けます。

  1. 永住申請の流れや必要書類を知りたい
  2. 永住申請に必要な身元保証人になってほしい
  3. 永住権の要件を満たすよう、海外出張を減らしてほしい

永住申請の流れや必要書類を知りたい

 このような要望の多くは人事部門などが受けるケースが多いのですが、たとえベテランの人事担当者であっても外国人の永住権取得の実務を把握しているケースはほとんどありません。このような場合は 法務省の該当ページを印刷してあげるか、最寄りの出入国管理在留庁の相談窓口などを紹介するのが一般的です。また、雇用企業として外国人社員の就労関係の在留資格手続を、日常的に行政書士などに依頼している場合には、そのような信頼できる事務所を紹介してあげることも重要です。

永住申請に必要な身元保証人になってほしい

 永住申請にあたっては日本国籍者などの身元保証人が求められることがあります。「身元保証人」と聞くと、借金などの身元保証人のことを真っ先に思い浮かべてしまう方も多いでしょう。
 しかし、永住権の申請手続における身元保証人の場合は、「長年日本に居住しているのであれば、身元保証人を引き受けてもらえるくらい親密な日本人のお知り合いがいますね。それによって日本国内に生活基盤が確立されていることを確認させてください」といった意味合いが強く、身元保証人が保証すべき内容も、日本での在留に関する滞在費、帰国旅費、法令遵守の保証に限られます。
 そのため、会社の同僚や上司が身元保証人になるケースが多くみられます。とはいえ、あくまでもその外国人社員との個人的な信頼関係に基づく問題であるため、雇用企業として、例えば特定の社員などに強く働きかけるようなことは適切ではありません。

永住権の要件を満たすよう、海外出張を減らしてほしい

 永住権の申請にあたっては、申請前の1~2年間の日本での滞在歴が重視されます。年間の9か月以上を海外で生活している場合など、日本での滞在期間が極端に短い場合には不許可とされることもあります。そのため、外国人社員から「海外出張を減らしてほしい」という要求を受けたり、長期間の海外赴任を断られたりする事例も見られます。
 これらの要望について、スタッフのローテーションなどで対応できることが望ましいですが、必ずしも外国人社員の要望に応えられない場合もあります。そのような場合には外国人社員と話し合いを持ち、海外出張が落ち着く時期や、永住申請が可能な時期などの先行きを示すことが大切です。

 いずれにせよ、外国人社員の永住権の取得は、本人と雇用企業の歩み寄りが不可欠です。雇用企業には、外国人社員の立場を尊重して対応することが求められます。

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