アルバイトの留学生を社員として採用する際の留意点
人事労務 更新当社にはアルバイトで働いてもらっている外国人留学生がいます。勤勉で優秀な人材であるため、卒業後は社員として採用したいと考えています。必要な手続きについて教えてください。
外国人留学生ということですので、現在の在留資格は「留学」に該当すると思われます。正社員として採用したいのであれば、職種にもよりますが、ほとんどのケースで「技術・人文知識・国際業務」という在留資格への変更許可申請が必要となります。これが取得できれば在留カードに「就労可能」と印字され、正社員として就労することが可能となります。
解説
目次
在留資格の変更許可申請
在留中の外国人が、現在行っている活動を打ち切り、または、在留の目的を達成した後に、別の在留資格に属する活動を行おうとする場合などには、在留資格変更許可申請の手続を行います(出入国管理及び難民認定法、以下「入国管理法」20条)。
在留資格変更許可申請のスケジュール
在留資格変更許可を申請する時期ですが、現在の在留資格に定められた活動内容が変更された場合には、特別な事情がない限り速やかに変更申請を行うものとされています。申請までの具体的な日数等は定められていませんが、外国人留学生の場合には、10~11月に内定し、12月初旬から在留資格の変更が受け付けられ、翌年4月1日までに新しい在留カードを受領して「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就労を開始するパターンが一般的です。しかし、最近では大企業を中心に新卒採用の制度自体を見直す動きもみられており、それに伴って出入国在留管理庁の対応も変わる可能性があるため注意が必要です。
在留資格の変更が許可されないケース
入国管理法によれば在留資格変更の手続は、「法務大臣は、在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」(入国管理法20条3項)とされており、申請さえすれば必ず許可されるものではなく、要件を満たしていない場合などには当然に不許可となることもあります。また、申請後、許可を受ける際には手数料として4,000円の収入印紙が必要となります。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」が求める職務内容の該当範囲
貴社で就労させる職務内容が在留資格「技術・人文知識・国際業務」で定める活動に該当していなければ在留資格の変更が許可されることはありません。「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公私の機関との契約に基づいて行う以下の業務に従事する外国人を受け入れるために設けられた在留資格で、その該当範囲は以下のとおりです。
- 自然科学または人文科学の分野に属する技術もしくは知識を必要とする業務(入国管理法別表第1の2)
- 大学等において理系または文科系の科目を専攻して習得した学術上の素養を背景とする一定水準以上の自然化学または人文科学の分野に属する専門的な技術もしくは知識を必要とする業務
- 単に経験を積んだことにより有した知識では足りず、学問的・体系的な知識を必要とする業務
- 外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務(入国管理法別表第1の2)
- 外国人特有の感性、すなわち、外国に特有な文化に根差す一般的な日本人が持ちえない思考方法や感受性を必要とする業務
- 外国の社会、歴史・伝統の中で培われた発想・感覚をもとにした一定水準以上の専門的能力を必要とするもの
アルバイト採用時には、飲食店でのホールや調理、工場内での反復作業など、入国管理法で単純労働とみなされやすい業務に就いていた場合には、同様の職種を「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行わせることはできなくなります。
まずは正社員として就かせる職務内容が、上記の該当範囲に当てはまる職務であることを確認し、該当しない場合には採用自体をあきらめる必要性も出てきます。とはいえ、職務と在留資格との該当性の判断は難しいため、迷うことがあれば最寄りの出入国在留管理局で相談されることをお勧めします。
キャリア形成の一環としての一定期間の単純労働
一時的な配置であっても不法就労となることに注意
総合職としての採用でも、キャリア形成の一環として一定期間は日本人社員と同様に工場内作業や店舗配置などの経験を積んでもらいたいと考える企業も多くあります。しかし、外国人社員の場合には在留資格により就労可能な職種が定められており、特に「技術・人文知識・国際業務」の場合には継続反復的な単純作業は認められていません。そのため、いくら一時的な配置であったとしても、このような業務に従事されると不法就労となり、雇用主は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその併科に処され(入国管理法73条の2)、外国人社員は日本からの退去強制(入国管理法24条)になる可能性が生じますので、絶対に避けなければなりません。
事前許可により例外的に認められるケース
とはいえ、そもそも工場内での単純作業に従事させることを目的とした採用ではなく、あくまでもキャリア形成の一環で現場を知ってもらうことを目的とした場合には、例外的に出入国在留管理局で認められる可能性もあります。その際には採用時の「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格の変更時に、明確にどのような業務に就くのか、期間はどれくらいか、この経験を生かして将来どのようなキャリアに就くのか、といったことを事前に説明したうえで在留資格の許可を得なければなりません。
入国管理局が内容を把握したうえで、提出した内容通りの一時的な単純労働に就かせることは、原則として問題とはなりません。しかし、出入国在留管理局に知らせることなく自社の判断で行った場合や、提出したスケジュール通りに行われなかった場合などには、問題となることも考えられます。たとえキャリ形成の一環であっても、外国人社員を単純労働に従事させる場合には慎重な対応が求められます。

- 参考文献
- すぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 改訂版
- 著者:佐野誠、宮川真史、野口勝哉、西澤毅
- 定価:本体3,600円+税
- 出版社:第一法規
- 発売年月:2018年7月

株式会社ACROSEED