税務調査にはどのような手法があるか
税務税務調査とはどのようなものですか。また、どのような手法があるのでしょうか。
税務調査とは、納税者の申告内容が正確なものであるかを確認する調査のことです。税務調査には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2つがあります。
解説
任意調査
任意調査とは、税務署や国税局の調査部、資料調査課が通常行う調査です。税務調査のほとんどが、この任意調査であるといわれています。任意調査は「準備調査」と「実地調査」の2段階に分けられます。任意調査については、納税者の同意を得て実施されます。ただし、調査官の質問に答えなかったり、正当な理由がないのに帳簿書類の提示を拒むと罰則が科されることがありますので注意が必要です。また、税務調査の結果、申告内容に誤りがあった場合には是正が求められます。
準備調査
準備調査とは、実地調査に入る準備をするための調査です。納税者が提出した申告書などを、独自に収集した情報と照らし合わせて分析する「机上調査」が行われます。また、必要があれば、調査対象の立地条件等を把握するために「外観調査」や「内観調査」を行うこともあります。これにより、調査対象となる法人の問題点や重点的に調査すべき項目が判断され、実地調査が決定されます。
実地調査
実地調査には、大きく分けて「一般調査」「現況調査」「特別調査」「反面調査」の4つがあります。
(1)一般調査
一般調査とは、帳簿を中心に申告内容の適正さが調査されます。提出された申告書の内容が税法の規定通りに処理されているかどうかを最終的にチェックするためのもので、最も多く行われている調査です。帳簿調査が中心となりますが、調査官が必要と判断した際には、倉庫や工場店舗などのほかパソコンのデータ内容などの現場確認調査も行われます。調査の日程等は、税務署から経営者ないし顧問税理士に事前に連絡があり、調整することになります。
(2)現況調査
任意調査のうち、事前の連絡なしに抜き打ちで行われる調査を現況調査といいます。飲食店や現金商売を業とする納税者が主な対象です。現況調査が入った場合は、焦らず、まずは顧問税理士に連絡して、立ち合いを依頼しましょう。強制調査ではないため、税理士が到着するまで調査開始を待ってもらうことができます。
(3)特別調査
特別調査は、準備調査の結果、一般調査だけでは不十分と判断された場合に行われます。特に、多額の不正計算が見込まれる場合や、事業規模が大きいグループ企業などの場合に行われることが多いです。一般調査よりも長期間にわたり、細部まで調べられます。なお、多額の不正計算が想定され、証拠書類の隠ぺい等が予測される場合は、本店・支店・代表者自宅など関係すると思われる場所に対し、事前の連絡なしで一斉調査が行われる場合もあります。
(4)反面調査
ある企業へ税務調査が入る際に、その企業と関係を持つと見られる取引先や金融機関などへも税務調査が入ることがあります。また、調査中、不審と思われる取引について内容の是非を確認するため、相手取引先に対して文書や実地による調査を行うことがあります。これを反面調査といいます。
強制調査
強制調査とは、申告内容について多額かつ悪質な不正が発覚した場合、捜査令状をもって強制的に行われる調査です。悪質な脱税に対する一種の犯罪捜査であり、裁判にかけるための臨検や捜索、差し押さえを目的としているため、任意調査とは一線を画します。調査は、国税局の査察部によって行われ、追徴課税の支払いが必要であることはもちろん、メディアで報道されるケースもしばしばあります。
強制調査については、国税犯則取締法に基づき実施されます。
おわりに
平成30年12月、国税庁は「平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要」を公表しました。この調査では、平成29年2月1日から平成30年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象に、資料情報等の分析・検討が行われ、大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人について、平成29年7月から平成30年6月までの間に9万8千件の実地調査を行った結果、約74%の法人に法人税の非違が認められたそうです。
また、法人消費税については、9万4千件の法人について実地調査が行われ、そのうち、約59%の法人に非違が認められるとともに、源泉所得税については、11万6千件の源泉徴収義務者について実地調査が行われた結果、そのうち、約31%の源泉徴収義務者に何らかの誤りが認められたそうです。
このように、一口に調査といってもさまざまな種類があります。特に、任意調査と強制調査は、同じ国税当局が対応するものの、その内容が大きく異なるため注意が必要です。

辻・本郷税理士法人