経理初心者のための印紙税の手引き

税務
宮崎 裕市 辻・本郷税理士法人

 私は経理部に配属されたばかりの新入社員です。印紙を担当することになりましたが、わからないことが多く、日々、悪戦苦闘しています。印紙が課されるのはどのような文書か、領収書に印紙を貼らなくてもよいのはどのような場合か、FAXや電子メールを利用する場合の取扱いなど、印紙の基礎的なことについて教えてください。

 印紙が課されるのは、一定の要件を満たす課税文書に限られます。また、同じ領収書であっても、営業に関しない領収書は非課税とされ、印紙は不要です。印紙は文書に課税されますが、FAXや電子メールは課税文書には該当しないため、印紙は不要です。

解説

目次

  1. 課税文書と非課税文書、不課税文書
  2. 課税文書に該当するかどうかの判断
  3. 受取書のうち非課税となるもの
  4. ファクシミリ通信や電子メールを利用して送信する場合

課税文書と非課税文書、不課税文書

 印紙税は国税の1つです。これは、日常の経済取引に関連して作成される文書に対して課税される税金で、印紙税法に規定されています。印紙税が課税される文書のことを課税文書といいます。課税文書は20種類の文書に分類され、それぞれに番号が付されています。実務では、1号文書、2号文書などと表現します。

 印紙税法の別表第1には、課税物件、課税標準、税率等が記載されています。これは一般的に印紙税額一覧表として利用されています。別表第1に記載された文書で非課税物件と記載のあるものは、非課税文書となります。たとえば、受取金額5万円未満の受取書、営業に関しない受取書などがこれに該当します。別表第1に記載のない文書は、不課税文書といいます。納付は、原則として課税文書の作成者が課税文書に納付すべき印紙税に相当する金額の収入印紙を貼り付け、文書と印紙の模様にかかるように消印することにより納付することになります。

課税文書に該当するかどうかの判断

 印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られます。この文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。

  1. 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
  2. 当事者の間において課税事項を証明するために作成された文書であること。
  3. 印紙税法5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

 課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容から判断することになります。しかし、当事者の約束や慣習によって、文書の名称や文言は諸々の意味に用いられます。そのため、文書の名称、呼称や記載されている文言から文書の内容を形式的に判断するのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。  たとえば、文書に取引金額のそのものの記載はないが、文書に記載されている単価、数量、記号等により、当事者間において取引金額が計算できる場合には、それを記載金額とします。また、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は売上代金の受領書(17号の1文書)に該当することになります。

印紙税の課否判定のフローチャート

その画像の説明文

(出典)国税庁「印紙税の手引」

受取書のうち非課税となるもの

 金銭または有価証券の受取書のうち営業に関しないものは、17号文書の非課税物件欄2において非課税とされています。具体的には次のような受取書をいいます。

  1. 個人が私的財産を譲渡したときなどに作成する受取書
  2.  営業とは、利益を得る目的で同種の行為を反復継続すること、つまり継続的な営利活動をいいます。個人が私的財産を譲渡したときなどに作成する受取書は、営業に関しない受取書として非課税となります。
  3. 会社以外の法人で利益金または剰余金の配当または分配できる法人がその出資者との間で作成する受取書
  4.  出資者に対して行う事業にかかる受取書は、営業に関しないものとして非課税になります。
  5. 公益法人が作成する受取書
  6.  公益法人が作成する受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しないものとして非課税となります。
  7. 人格のない社団が作成する受取書
  8.  公益および会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団等が作成する受取書は、営業に関しないものとして非課税になります。
  9. 農業従事者等が作成する受取書
  10.  店舗その他これらに類する設備を有しない農業、林業または漁業に従事する者が、自己の生産物の販売に関して作成する受取書は、営業に関しないものとして非課税になります。
  11. 医師等が作成する受取書
  12.  医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、看護師、指圧師、柔道整復師、獣医師等が業務上作成する受取書は、営業に関しないものとして非課税となります。
  13. 弁護士等が作成する受取書
  14.  弁護士、弁理士、公認会計士、司法書士、行政書士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は、営業に関しないものとして非課税となります。

 上記以外にも、記載された受取金額が5万円未満の受取書も非課税とされます。

ファクシミリ通信や電子メールを利用して送信する場合

 印紙税法上の「契約書」とは、「課税物件表の適用に関する通則」の5において「契約の成立若しくは更改又は契約内容の変更若しくは補充の事実を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。」とされています。
 また、印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達44条により「単なる課税文書の調整行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、「交付の時」であるとされています。
 たとえば、申込みに対する応諾文書として作成した「注文請書」を取引先に交付する代わりに、ファクシミリ通信や電子メールを利用して送信する場合の「注文請書」は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものです。

 しかし、この「注文請書」の調整行為を行ったとしても、「注文請書」の現物の交付がなされない以上、たとえ、「注文請書」をファクシミリや電子メールにより送信したとしても、課税文書を作成したことにはなりません。そのため、課税物件は存在しないことになり、印紙税の課税原因は発生しません。したがって、文書の作成者が保管するファクシミリ送信等の文書の原本は、それ自体が取引先に交付されるものではないため、課税文書には該当しません。  また、ファクシミリや電子メールを受信した取引先がプリントアウトした文書は、コピーした文書と同様のものと認められますので、課税文書として取り扱われません。

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