残業手当の計算はどのように行うか

人事労務

 当社の給与計算システムについて、「マスター設定のミスにより『残業手当の不払い』がある」と労働基準監督署から指摘されました。
 当社の給与計算では、基本給だけを残業手当の計算の基礎としてきました。他に、精勤手当(欠勤2日で不支給)、等級手当(号俸給による)、通勤手当、住宅手当(持ち家かアパートかなどの支給基準あり)があります。残業手当の計算の基礎となるルールの確認と、当社の場合の正しい計算の仕方ついて教えてください。

 残業手当の計算の基礎から「除外してもよい手当」が労働基準法施行規則に限定列挙されています。貴社の場合は、計算の基礎に「基本給」以外に「精勤手当」「等級手当」も含めて算定基礎とすることが必要です。

解説

目次

  1. 割増賃金はどう計算するか?
  2. 残業手当の算定基礎から除外できる手当は?
  3. まとめ

割増賃金はどう計算するか?

 割増賃金を計算する際は、「通常の労働時間の賃金」または「通常の労働日の賃金」の時間単価を算出して、これに割増率を乗じて、時間外労働の時間数や休日出勤の時間数などを掛けて計算します。

割増賃金
= 「通常の労働日の賃金」の時間単価 × 割増率 × 時間外労働または休日出勤の時間数

割増率
  • 時間外労働の場合 = 1.25
  • 休日労働の場合 = 1.35

 ここで問題となるのが、通常の労働時間または通常の労働日の賃金とは何かということになります。
 労働基準法施行規則19条には以下のとおり規定されています。

  1. 時間により定められた賃金
    → その金額
  2. 日により定められた賃金
    → その金額を1日の所定労働時間数(日により異なる場合は平均時間)で割った金額
  3. 週により定められた賃金
    → その金額を1週の所定労働時間数(週により異なる場合は平均時間)で割った金額
  4. 月により定められた賃金
    → その金額を1か月の所定労働時間数(月により異なる場合は平均時間)で割った金額
  5. 月、週以外の一定の期間によって定められた賃金
    → 1または4に準じて計算した金額
  6. 出来高払制その他請負制によって計算された賃金
    → その賃金算定期間における総労働時間数で割った金額

残業手当の算定基礎から除外できる手当は?

 今回の問題のポイントは、これらの「通常の労働時間の賃金」または「通常の労働日の賃金」を算定するにあたって、諸手当の金額を算入するか、除外するか、正しく判定することです。
 労働基準法では、残業手当の算定基礎の判断において、算入を必要としない手当が限定列挙されています。

  1. 家族手当(労働基準法37条5項)
  2. 通勤手当(労働基準法37条5項)
  3. 別居手当(労働基準法施行規則21条)
  4. 子女教育手当(労働基準法施行規則21条)
  5. 一定の住宅手当(労働基準法施行規則21条)
    (※ 住宅に要する費用に応じて算定されるものに限られます。平成11年3月31日基発170号)
  6. 臨時に支払われた賃金(労働基準法施行規則21条)
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(労働基準法施行規則21条)

 以上の手当については、残業手当の算定基礎から除外することができるとされています。

 1か月に定められた賃金を支払うケースにあてはめると以下のようになります。

「通常の労働日の賃金」の時間単価

=(月に支払う賃金の総額 — 除外できる手当の金額)÷ 1か月の所定労働時間数

 除外賃金にあたるか否かは名称に関係なく実質的に判断されますが、限定列挙なので除外賃金に含まれない賃金を割増賃金の算定基礎から除くことは許されません。
 近年、給与計算は、計算システムによって行われることが大半ですが、そのマスター設定において、手当を算入すべきかどうかを誤ると、大きな額の是正が必要となりますので、慎重な設定が必要とされます。注意してください。

まとめ

  • 残業手当の計算は「通常の労働時間の賃金」または「通常の労働日の賃金」の時間単価を算出して行う
  • 残業手当の計算基礎に算入する手当は、限定列挙されており、除外されている賃金に含まれない賃金を除くことは許されない

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