人事から日本企業を変える - ネオキャリアの人事部長が語る、これからの「人材」の考え方

人事労務

目次

  1. 人事での経験を活かし、社会課題の解決に貢献したい
  2. 「人」の成長なくして事業の成長はありえない
  3. 人事の「横串」を活かしたコンプライアンス経営
  4. これからの人事に必要なのは「経営感覚」

最高人事責任者(CHO/ CHRO)の重要性が注目されるなど、経営における「人材」の優先順位が高まりつつある。働き方改革関連法も順次施行され、働く人々や企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、これからの人事のあり方をどう捉えていくべきだろうか。ネオキャリア 人事部長 割石正紀氏に聞いた。

人事での経験を活かし、社会課題の解決に貢献したい

まずは、割石さんのご経歴について伺えますか。

2003年にセブン-イレブン・ジャパンへ入社し、広島や大阪での営業、三井物産への出向を経て、人事部に異動しました。その後、8年ほど人事に携わり、2020年にネオキャリアへの転職を決めました。

セブン-イレブン・ジャパンの人事部時代には、人材育成からスタートして、人事制度設計や企業理念策定のプロジェクトなど、さまざまな領域を担当しましたが、いちばんやりがいを感じたのは人事制度設計の業務でしたね。自分の手掛けた仕事が全社に影響を与え、それが会社に残っていく点も魅力的でしたし、人事は経営と一体になっている領域だと強く実感する機会にもなりました。

転職先としてネオキャリアを選ばれた理由は何だったのでしょうか。

人事という仕事を軸に何かできないかという視点でさまざまな業界を見ていくなかで、ネオキャリアの事業領域の広さに惹かれたというのがすべてですね。市場規模の大きさはもちろんですが、ネオキャリアが取り組んでいる分野は、政府の「日本の働き方改革実行計画」にあげられているテーマのうち、「雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援」、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」、「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」、「高齢者の就業促進」、「子育て・介護等と仕事の両立」、「外国人材の受入れ」という6つの領域をカバーしています。こうした社会課題の解決に向け、これまで培ってきた経験を活かして直接的に貢献できる会社だと感じました。

ネオキャリアの人事部長として、割石さんにはどのようなことが求められているとお考えですか。

ネオキャリアはこれまで急成長してきたぶん、ハードとソフトの考え方に乖離があります。会社の急成長に対して、オフィスや制度を整えるというハード面の対応は比較的容易ですが、働いている人たちの意識やマインドセットというソフト面を変えていくことは簡単ではありません。社員のマインドセットと最新のハードの整合性が取れるよう企業文化を変革していくことは、私が取り組むべきミッションの1つだと考えています。

ネオキャリア 人事部長 割石正紀氏

「人」の成長なくして事業の成長はありえない

ネオキャリアでは、経営において「人」をどのように位置付けているのでしょうか。

近年では、企業価値の主要な決定要因が有形資産から無形資産へ移行していると言われています。無形資産のうち特に「人」は、経営の根幹に位置づけられるもので、ネオキャリアの経営陣も重要視しています。特に、当社のような無形商材を扱うビジネスは人に依存しており、人の成長なくして事業の成長はありえません。

そして、人事は、ヒト・モノ・カネ・情報のうち、いちばん重要なリソースである「ヒト」を担う仕事です。というのも、モノは人が利用してはじめて意味を成すものですし、カネも人が正しく戦略的に使わなければ効果は出ません。情報も人が別の情報とつなぐなどして活用しなければ意味がありません。

人が成長できるよう、働きやすい環境を提供するのは人事の重要なポイントの1つになると思います。ネオキャリアの特徴的な人材育成制度があれば教えてください。

集合型教育とeラーニングを組み合わせて、すべて内製で人材育成を行っているのは特徴的だと思います。特に、ネオキャリアの根幹を成す「NEO CAREER STATEMENT」という考え方の浸透には力を入れています。「NEO CAREER STATEMENT」はPhilosophy、Misson、Vision、Valueから構成されており、経営者と社員双方が目指すべき方向性を揃えるための内容になっています。

たとえば、新入社員に対しては、入社式の午後に社長自らが3時間程度掛けて「NEO CAREER STATEMENT」をもとにした研修を行っていますし、既存社員に対しては、「NEO CAREER STATEMENT」の考え方をもとにしたテストを定期的に実施しています。このようにしてネオキャリアの社員が持つべき価値観をすり合わせていくことで、経営陣も社員も日々同じ方向を向いて研鑽し合うことができているように感じています。

ネオキャリアでは、どのような人材を求めていますか。

人生100年時代に入って定年延長が見込まれるなか、これからの人材に求められるのは「最終学歴」ではなく「最終学習歴」だと考えています。これまでの30-50代は、大学までの学びや仕事で得た経験・知識があれば働けていたかもしれませんが、今後は常に学び続け新しい知識やスキルを手に入れていかなければ、ビジネスの世界で生き残っていくことは難しいでしょう。したがって、ネオキャリアでは、学習習慣を身につけて最終学習歴を更新し続け、成長し続けていくことが出来る人材を求めています

「最終学習歴」とは具体的にはどのようなイメージですか。

たとえば、人事領域1つとっても、法律が毎年変わることにより昨年や一昨年の知識では法令違反を犯してしまう可能性があります。自分の普段の仕事領域だけでも学び続けなければならないことは多くありますよね。こうした日常的な学びをなんとなく作業として行うのではなく、学び続けているという意識を持ち、自分自身の知識をアップデートしていく志向を持っていることが重要です。

ネオキャリア 人事部長 割石正紀氏

人事の「横串」を活かしたコンプライアンス経営

ネオキャリアにおいて、コンプライアンスはどのような位置づけになっていますか。

ネオキャリアでは、コンプライアンスを経営の最重要課題の1つに位置付けています。人事部主導で行っている施策としては、四半期に一度の全社員を対象にしたモラルとコンプライアンスに関するオンライン学習があります。現場の社員がビジネスを行ううえで、厳しい目標を達成しようとするとどうしてもコンプライアンスの意識がおざなりになってしまいがちです。そうした状況に対応するためにも、全社の「横串」となってコンプライアンスの優先順位を上げていくことは、人事ならではの機能ではないでしょうか。

ネオキャリアは人材派遣事業も行われていますが、派遣先企業に対して派遣社員の受け入れに関するコンプライアンス上のアドバイスがあれば教えてください。

派遣社員の管理は、派遣元だけでなく、派遣元と派遣先の双方が協力して行う必要があると考えています。常に変わっていく法律を正しく理解して人材の管理を行うことが、まさにコンプライアンス遵守につながります。

特に近年では、働き方改革を背景として、労働者派遣法に限らずさまざまな法改正が日々行われています。それに伴い、派遣社員受け入れの際には注意点や管理項目なども煩雑になりがちなので、当社としても、初めてまたは久しぶりに派遣社員を受け入れる事業部には、丁寧に説明するよう心がけています。

派遣先の人事は知っていても現場は知らないという状態もありえますよね。

はい。ですので、各事業部が派遣社員の方を受け入れる際に、人事によってきちんと横串を指すことが必要だと思っています。ヒト・モノ・カネ・情報のうち、人事は「ヒト」を担う仕事であると説明しましたが、実際のところ、人の管理は各部署の上長がメインで行っており、人事は上長のバックアップの仕組みを整えることが主な役割です。派遣社員に関しても同様で、横串を刺す形で各事業部の知識をアップデートしてサポートできる体制を整えていくことが重要だと思いますね。

ネオキャリア 人事部長 割石正紀氏

これからの人事に必要なのは「経営感覚」

割石さんがネオキャリアで実現したいことを教えてください。

ネオキャリアでは、「NEO CAREER STATEMENT」とは別に、各事業部もミッション・ビジョンを策定しています。私は人事部のミッションとして「適所適材を行い、会社の未来を創造する」、ビジョンとして「経営感覚を持ったうえで3,000人の全社員に寄り添い向き合う」を掲げています。

ミッションの「適所適材」という言葉には、人事管理の出発点は、人ではなくあくまで仕事であるという意味を込めています。「適材適所」ではないことがポイントです。たとえば、新規ビジネスを立ち上げる際には、経営戦略、事業内容、ビジネスモデル、具体的な業務、という順で決定していきますよね。ここではじめて、業務を遂行するために必要な労働者の能力である人材要件が確定し、その人材要件に沿った採用計画や育成計画を練る必要があります。出発点はあくまで仕事。人に合わせて仕事を考えると、不必要な仕事を生み出してしまう可能性があるので、「適材適所」ではなく「適所適材」という言葉にこだわっています。

そして、適所適材を実現するには、タレントマネジメントが必要です。優秀な営業マンは、自社の扱っている商品をすべて詳細に把握しています。人を扱う人事も同様に、社員一人ひとりのエンゲージメントの状態など、可視化されていない面も含めて全社員すべての情報を隅々まで知っている状態が理想です。これを1人の人間が行うことは難しいので、人事のデータベースを作成して情報を一元管理し、すぐに取り出せる状態にしておかなければなりません。こうした仕組みをつくっていくことで、戦略的な人事を行っていきたいと考えています。

日本企業はこれからの人事についてどう考えていけばよいでしょうか。

私は、日本の企業を変えることができるのは人事だと思っています。ネオキャリアの人事部としても、これを強く意識しています。企業の競争力の源泉が有形資産から無形資産へ移行していくなかで、人事は経営の根幹に位置づけられます。逆に言えば、私たち人事部のビジョンにもあるように、人事にとっては経営感覚を持つことが求められるようになっています。

これまでの日本企業の人事は、社員の異動に関する手続きや管理、入社時の書類の処理などといったオペレーション人事としての側面が強くありました。ただ、最近では最高人事責任者(CHO/ CHRO)の重要性が注目されているように、人事管理と経営は密接に関連しているという認識が広まりつつあります。したがって、人事部のメンバーも、経営者の一員として社員のマネジメントを通して経営戦略に携わるという意識を持たなければなりません。

経営感覚を持って考えると、社員と向き合って相手の意向に反することを伝えなければならないこともあるかもしれません。一方で、社員と寄り添う視点も人事にとっては重要です。人事部のビジョンにある「寄り添い向き合う」という一見相反する言葉には、そうした思いを込めています。人事は、会社をニュートラルかつフラットに見て、正しいジャッジをしなければなりません。そのためには、「経営と社員」、「寄り添い向き合う」というバランス感覚が必須だと思っています。

ネオキャリアを10年後、20年後にどのような会社にしたいか、最後に割石さんのビジョンをお聞かせください。

まずは、ネオキャリアを通して、目の前にある日本社会の課題解決をしていきたいです。生産年齢人口が減少するなかで喫緊の課題は、労働力の確保と労働生産性の向上です。人事部としては、「『ヒト』と『テクノロジー』で、一人ひとりの価値ある未来を実現する」というネオキャリアのMissonにあるとおり、まずはITなどのテクノロジーを活用し、自社で労働生産性を向上できるモデルケースを構築し、それを対外的に発信して日本の企業にも普及させていきたいと考えています。

そして、10年後、20年後には、ネオキャリアの「2030 Vision」として掲げているように「アジアを代表するサービスカンパニーの創出」を目指します。さらに、その時期には、日本が現在抱える課題をアジアの国々も抱えるようになっていると考えられます。そこに対する課題解決にも取り組むことで、ゆくゆくはネオキャリアのVisionである「世界を代表するサービスカンパニーの創出」の実現に貢献していきたいですね。

ネオキャリア 人事部長 割石正紀氏

(文:周藤 瞳美、写真:弘田 充、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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