産業競争力強化法によるバーチャルオンリー株主総会の解禁

コーポレート・M&A

目次

  1. 本制度の背景
  2. 本制度の概要
    1. 本制度の趣旨
    2. 本制度の内容
  3. 経済産業大臣および法務大臣の確認に関する手続の流れ
  4. 本制度に関するQ&A
  5. (ご参考)実務の動向

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.183」の「特集」の内容を元に編集したものです。


「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」が6月16日に公布されました。本法律において、会社法の特例として、「場所の定めのない株主総会」に関する制度(以下、「本制度」という)が創設され、上場会社においてバーチャルオンリー株主総会の開催が可能となりました(6月16日施行)。

(関連ウェブページ①)
経済産業省:「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」の施行について

(関連ウェブページ②)
経済産業省:場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度

本制度の背景

 現行会社法では、株主総会を招集する場合には、株主総会の「場所」を定めなければならない(会社法298条1項1号)とされており、株主総会の「場所」は、株主が質問し説明を聴く機会を確保するため、物理的に入場することができる場所でなければならないと解されています。
 そのため、現行会社法において、リアル株主総会やハイブリッド型バーチャル株主総会の開催は可能ですが、バーチャルオンリー株主総会の開催は難しいとされています。

(出所)前記関連ウェブページ②に掲載の経済産業省「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料」(以下、「制度説明資料」という)1頁より三菱UFJ信託銀行が作成

(出所)前記関連ウェブページ②に掲載の経済産業省「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料」(以下、「制度説明資料」という)1頁より三菱UFJ信託銀行が作成

本制度の概要

本制度の趣旨

 バーチャルオンリー株主総会には以下のメリットがあるとされています。

( i )遠隔地の株主を含む多くの株主が出席しやすい
( ii )物理的な会場の確保が不要で運営コストの低減を図ることができる
( iii )株主や取締役等が一堂に会する必要がなく感染症等のリスクの低減を図ることができる

 そして、これらが株主総会の活性化・効率化・円滑化につながることから、株主の利益の確保に配慮しつつ、産業競争力を強化する観点から、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とするものであると説明されています。

本制度の内容

  1. 上場会社は、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けた場合に限り、株主総会を「場所の定めのない株主総会」とすることができる旨を定款に定めることができ、この定款の定めのある上場会社については、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能となる。
  2. 新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえ、施行(2021年6月16日施行)後2年間は、上記①の確認を受けた上場会社については、上記①の定款の定めがあるものとみなすことができる。この場合、定款変更の株主総会決議を経ることなく、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能。なお、当該みなしの定款の定めに基づく場所の定めのない株主総会においては、上記①の定款の定めを設ける定款変更の決議を行うことはできない。

※本制度において、株主からの質問や動議を受け付けない取扱いを許容する規定はなく、場所の定めのない株主総会においては、会社法の原則どおり、株主からの質問や動議を受け付ける必要がある

経済産業大臣および法務大臣の確認に関する手続の流れ

 場所の定めのない株主総会の開催にあたっては、経済産業大臣および法務大臣の「確認」を受ける必要があるところ、両大臣の確認に関する手続の流れとしては、①事前相談、②正式申請、③両省における審査、④確認書の交付が想定されています。

経済産業大臣および法務大臣の確認に関する手続の流れ

(出所)制度説明資料7頁掲載の図より三菱UFJ信託銀行が作成

 なお、両大臣の確認を受けるためには、以下の省令要件を満たしていることが必要です。なお、具体的な審査基準は前記関連ウェブページ②に掲載されています。

( i ) 通信の方法に関する事務(( ii )( iii )の方針に基づく対応に係る事務を含む。)の責任者の設置

( ii )通信の方法に係る障害に関する対策についての方針の策定

( iii )通信の方法としてインターネットを使用することに支障のある株主の利益の確保に配慮することについての方針の策定

( iv )株主名簿に記載・記録されている株主の数が100人以上であること

本制度に関するQ&A

 本制度に関するQ&Aの一部をご紹介します。(出所:前記関連ウェブページ②に掲載の「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関するQ&A」)

Q 場所の定めのない株主総会における議事の送受信に用いる通信の方法は、議長や取締役等と株主との間の情報伝達の双方向性や即時性を確保するものである必要がありますか。

A 株主総会が開催されたと評価されるためには、情報伝達の双方向性や即時性を確保する必要があると考えられ、場所の定めのない株主総会における議事の送受信に用いる通信の方法も、そのような要請を満たすものである必要があると考えられます。ただし、情報伝達の双方向性や即時性を具体的にどのような手段により確保するかについては、議長の権限(会社法第315条)に属する事項として議長の合理的な裁量に委ねられると考えられ、例えば、株主からの質問や動議をテキストメッセージで受け付けることとしても、そのことをもって双方向性や即時性が失われるものではないと考えられます。また、システムの性質として情報の送受信に軽微なタイムラグが生じる場合であっても、議事への参加に支障がないように運営がされているときには、軽微なタイムラグがあることのみをもって、情報伝達の即時性が失われるものではないと考えられます。


Q 場所の定めのない株主総会における議事の送受信に用いる通信の方法は、音声のみを伝達するものであっても良いですか。

A 本法令においては、場所の定めのない株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法として、音声のみを伝達するものを用いることができないとはされていません。ただし、音声のみを伝達するものを用いる場合であっても、議事における必要な情報の送受信が可能であり、情報伝達の双方向性や即時性が確保されるものである必要があると考えられます。また、株主との対話の充実という観点からは、議長や取締役等が発言をする場合にはその顔を映すことができる等、映像を伝達することができるものを用いることが望ましいと考えられます。


Q 場所の定めのない株主総会において通信障害が生じた場合に、どのようなときに決議取消事由(会社法第831条第1項)や決議不存在事由(同法第830条第1項)に該当し、どのようなときにこれらに該当しないと解することができますか。

A 場所の定めのない株主総会において通信障害が生じた場合における決議取消事由(会社法第831条第1項)や決議不存在事由(同法第830条第1項)の該当性については、通信障害が生じたタイミングや通信障害が議事に与える影響等にも左右され、一律に結論付けることは困難であると考えられます。
その上で、例えば、株主側の事情(株主側の通信環境の不具合等)により通信障害が生じた場合等には、それが決議取消事由となることはないと解することも可能と考えられます。他方で、採決のタイミングで、通信障害により大多数の株主の議決権行使が妨げられたような場合等には、決議不存在事由と評価される可能性があると考えられます。

(ご参考)実務の動向

 本年6月の定時株主総会において、バーチャルオンリー株主総会を開催可能とする定款変更議案を上程した会社が複数見られました。一部の会社の定款変更議案に対して、議決権行使助言会社ISSから、バーチャルオンリー株主総会が会社と株主の有意義な対話を妨げる懸念があることなどを理由に反対推奨が出されました。一方で、反対推奨を受けていない会社もあると見られ、定款変更議案の表現の違い等が影響を与えたものと考えられます。なお、反対推奨が出された会社を含め、すべての会社で当該定款変更議案は承認可決されています。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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