新たな法務の価値をつくるのはテクノロジーを活かす「人」の力 LegalForce × セガサミーホールディングス協働 法務業務DX促進イベントレポート

法務部

目次

  1. ルールメイキングのために法務ができること
  2. 契約業務におけるテクノロジー活用の意義とは
  3. 契約書レビューバトル!AIはどこまで人に近づけるのか

株式会社LegalForceとセガサミーホールディングス株式会社は6月2日、法務部門におけるDXの浸透を目的としたイベント「法務で事業は加速する。ルールメイキングとDX」を、セガサミーホールディングスが運営する東京・品川のコワーキングスペース「TUNNEL TOKYO」にて開催した。本稿では、同イベントの様子についてレポートする。

ルールメイキングのために法務ができること

はじめに登壇したのは、法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士 南知果氏 1。「事業の成長を加速する!ルールメイキングの始め方」と題して講演した。南氏によるとルールメイキングとは、「ルールの形成・変更・維持を目指す活動」だという。

南氏は、法務事務所ZeLoでスタートアップ企業を中心に法務面のサポートを手掛けるほか、政府渉外・ロビイング・政策提言などルールメイキングに関する活動を行っている。さらには、スタートアップ企業と官庁との架け橋が必要であるとの考えのもと、書籍『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)の出版やパブリック・アフェアーズ 2 などの活動にも取り組む。

こうした経験を踏まえ南氏は、ルールメイキングの重要性について、「テクノロジーが急速に発展する昨今、社会的な責任を果たす経営が企業に求められつつある。法改正への関与や働きかけ、共同規制・自主規制の制定といった攻めの姿勢と、ビジネスを成長させるためのリスク回避といった守りの姿勢の双方が求められる」と強調。テクノロジーやビジネス実態にあった形でルールメイキングに取り組んでいくべきだとする。

法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士 南 知果氏

法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士 南 知果氏

こうした南氏の考えは、役割や職責にとらわれない横断的な働き方が求められる、スタートアップ企業のカルチャーに大きく影響を受けているという。

「スタートアップ企業には、社会課題や人々が困っていることをテクノロジーで解決したいという熱い思いを持った方が多く、エンジニアやビジネスサイドから法律に関する質問や意見が出てくることもある。専門知識の有無を問わず法律と向き合って議論するカルチャーに触れて、既存のルールに疑問を持ったり、ルール自体を変えようとしたりする発想の重要性に気付かされた」(南氏)

南氏は、ルールメイキングに対して法務が活躍できるポイントとして、3つの場面をあげる。まずはビジネスサイドが抱える課題を把握すること。そして、規制が壁となりやりたいことができていない場合は、当該規制についてリサーチすること。さらに、規制の趣旨から考えて過剰な規制になっている場合には、その緩和・撤廃のためにルールメイキングやロビイング活動を行っていくことだ。

「ビジネスサイドの課題を把握するには、普段から自社ビジネスに関係しそうな情報を発信し、法律相談や契約書レビューでビジネスサイドとの信頼関係を構築しておくことが重要。そして、ルールメイキングにおいては、規制が保護する領域や制定の背景を理解しておかなければならない。そのうえで、ルールメイキングやロビイングの必要があると判断したら、ステークホルダーの関係性を可視化して戦略を立て、規制当局や政治家とのやりとり、他の事業者団体との連携、グレーゾーン解消制度、規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)など各種制度の活用、社会への発信の仕方などを考えていくことになる」(南氏)

契約業務におけるテクノロジー活用の意義とは

続いて、株式会社LegalForce 代表取締役CEO 弁護士 角田望氏が、「法務のDXの重要性と契約リスクの管理」と題し、契約業務におけるテクノロジー活用の意義について講演した。

角田氏は、なぜ契約書のチェックが必要なのかという観点から、契約リスクの制御の重要性について語る。

「ビジネス上の取引は、ビジネス合意から、契約作成・審査・締結、そして管理・モニタリングという流れをたどる。ビジネス合意の段階では『リスク=不確実性』が非常に大きく、これを契約で制御することが契約書作成の意義となる。契約審査業務は、契約書に潜む不利益を除去し、自社のビジネスリスクの低減と適切に権利を守るために実施する。管理は、締結した契約書の義務を遵守し、権利を適切に活用するために行う。この一連のフローを適切に実施し、ビジネスにまつわるリスクを制御することは、事業価値を守ることに直結する業務だ」(角田氏)

株式会社LegalForce 代表取締役CEO 弁護士 角田 望氏

株式会社LegalForce 代表取締役CEO 弁護士 角田 望氏

しかし、契約は一度締結すると不可逆であり、交渉チャンスは提携前の限られたタイミングに限られる。リスク低減のために抜け漏れのないレビューを実施すべきだが、品質と生産性を両立させることは難しい。角田氏は「条項の見落としや属人化の排除、品質と生産性の両立を限られたリソースで実現するには限界がある。こうした課題はテクノロジーなくして解決はできない」と、テクノロジー活用の意義を説明する。

さらに角田氏は、適切な契約書管理の必要性についても「重要な契約書はどれなのか、どのような不利な条項が紛れ込んでいるか、契約終了・更新拒絶期日などが答えられない場合、それ自体が大きなリスクとなる」と言及。テクノロジーを活用し適切に契約リスクの管理を行うことで、企業価値を向上していけるとした。

契約書レビューバトル!AIはどこまで人に近づけるのか

では契約書のレビューにおいて、テクノロジーは実際にどう活用されるのだろうか。イベントの後半では「契約書レビューバトル!AIはどこまで人に近づけるのか」と題し、人手とAIによる契約書レビューのスピードと質を競う対決が行われた。

対決の内容は、セガサミーホールディングスが発注するアニメーション制作に関する8ページの業務委託基本契約書に対し、20分でリスクチェックを行うというもの。契約書には、契約リスクとなり得る落とし穴が事前に設定されており、挑戦者は、制限時間内にできる限り多くのリスクを発見し、Microsoft Word上で修正やコメントを残さなければならない。

20分の制限時間のなかで契約書レビューのスピードと質を競い合ったセガサミーホールディングス法務知的財産本部 法務部 国内法務課のスタッフ

20分の制限時間のなかで契約書レビューのスピードと質を競い合ったセガサミーホールディングス法務知的財産本部 法務部 国内法務課のスタッフ

挑戦したのは、セガサミーホールディングス法務部 国内法務課の中堅スタッフ「人力太郎」氏と若手スタッフ「AI次郎」氏。人力太郎氏は、自身の経験と知見を生かして契約レビューを行うのに対し、AI次郎氏は、AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」を利用して契約レビューを行った。

レビュー終了後、人力太郎氏は「20分の制約の中でしっかりレビューするのは大変。契約条件として全般的に不利、ということであれば見分けがつくと思うが、『甲』が『乙』になっているといった文字が少し変わっているといったところは人力では気づきにくいところ。表現の部分などで見落としがあったのではないかと思う」、AI次郎氏は「LegalForceを使用してレビューを行って契約書の中に抜け漏れがあることはわかったが、20分という制限時間ではすべてを取りきることができなかった」とコメント。両氏とも、タイトな制限時間に苦しめられたようだった。

事前に設定されていた落とし穴は「1. 脱漏(もれてしまっている項目)」「2. 余計(自社にとって必要でない項目)」、「3. 違法(法律に反する恐れがある項目)」、「4. 誤記」の4種類。落とし穴には重要度に応じて1〜3点が配点されており、得点は加点形式で集計される。今回は、20点満点に対して、人力太郎氏が15点、AI次郎氏が11点という結果になった。

問題作成と採点を担当したセガサミーホールディングス株式会社法務知的財産本部 法務部 国内法務課 課長 堀内直宏氏は、この結果について次のように講評した。

セガサミーホールディングス株式会社 法務知的財産本部 法務部 国内法務課 課長 堀内 直宏氏

セガサミーホールディングス株式会社 法務知的財産本部 法務部 国内法務課 課長 堀内 直宏氏

「配点を3点としていたのは、委託内容に関するやり直しの条項。発注者が事前に示した合格基準に達しない場合、受託者は回数の制限なく指示どおりになるまでやり直すことが大原則だが、今回は検収不合格時のやり直しについて、不当に回数・期間制限が追加されていた。これを人力太郎氏は拾えたが、AI次郎氏は指摘できなかった。同じく配点を3点としていた成果物の知的財産権の譲渡に関する条項についての落とし穴は、2人とも拾うことができていた。

人力太郎氏からもコメントがあったように、条項を丸ごと追加あるいはカットした落とし穴は比較的見つけやすかったと思うが、金2,650,000「万」円と、余計な「万」をあえて挿入した金額の誤記は両者ともに指摘できなかった。少ない文字数のちょっとした間違いなどを見つけることは、限られた時間では困難だったようだ」(堀内氏)

この結果を受けて角田氏は、「興味深い結果。テクノロジーがあくまでツールであることを裏付けることとなった。AIが指摘したコメントを踏まえて、修正すべきかどうか決断するというところに法務の専門的知見が必要ということを示している」と、AIをはじめとするテクノロジーは、人による業務の補助となるものであることを強調。「人がどのような仕事に力を入れていくべきか示唆された」と評しつつも、今後もプラットフォームの開発を進め、テクノロジーを研鑽していきたいとした。

(文:周藤 瞳美、写真:蟹 由香、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)


  1. 2021年7月現在、留学中につき弁護士登録抹消。 ↩︎

  2. パブリック・アフェアーズとは、企業の社会的・公的責任を認識し、社会に対して積極的に貢献するために行う広報活動のこと。 ↩︎

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する