DX時代の有事対応を支えるデジタル証拠の扱い方PR 『即実践!! 電子契約』の著者解説セミナーレポート(第2回)

取引・契約・債権回収

目次

  1. DXで生まれる新たな機会・リスクと法務の定義
  2. 規範に基づく企業活動のコントロールを支えるデジタル証拠
  3. チャンスとしてのDX

電子契約サービスの導入をはじめ、ビジネスをデジタルベースで再構築しようというデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きは、新型コロナウイルス対応によって急速に進みました。DXの基礎となるのは、ビジネスで生成・交換されるドキュメントのデジタル化です。

2020年11月26日にBUSINESS LAWYERSが主催したオンラインセミナーでは、『即実践!! 電子契約』(日本加除出版、2020年)の著者である駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士が登壇し、電子文書・記録の管理方法や課題を中心に、企業および法務のDXについて解説しました。

2020年の電子契約にまつわる議論と電子契約サービス導入・選定のポイント」では、電子契約にまつわる議論や電子契約サービス導入時の注意点等を解説した本セミナー第1回の模様をレポートしています。

DXで生まれる新たな機会・リスクと法務の定義

高橋弁護士は、DXによる企業や個人の生活の変化について、次のように具体例を紹介します。

「DXによって引き起こされるのは、企業活動においては何よりも劇的な生産性の向上。そして、データにより消費者個々人が見えるようになることで、オーダーメイド型のサービスが普及し、マス市場が終焉する。企業は社会との関わりや透明性がより求められるようになり、ピラミット型の組織ではなくなる。個人の働き方は自営化が進み、社会と個人が直接関わるようになる」(高橋弁護士)

つまりDXにより、組織構造がピラミッド型からユニット型へと変化し、それらがデジタル情報に基づいて成り立っていくようになります。その結果、優れた人材が組織や国を超えて集まれるようになることで、機会とリスクが増幅していくといえます。

DXにより生じるこうした新たな機会やリスクについて、法務はどう対応していけばよいのでしょうか。高橋弁護士は法務業務を、営利的な経済活動における法的リスクの取り扱いのプロセスと定義し、「法的なリスクの取り扱い=規範に基づいて活動をコントロールすること」の重要性を指摘しました。

駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士

駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士

規範に基づく企業活動のコントロールを支えるデジタル証拠

規範に基づいた企業活動のコントロールを考えるうえで押さえておきたいのが、デジタル証拠の概念です。高橋弁護士は「企業が社会のなかでどういう活動をしているのか、明確に説明責任を果たすことが重要。その際に、証拠がデジタル化されていると効率的」と説明しました。特に、粉飾決算などの会計不正や横領・賄賂・汚職などの従業員不正をはじめとする不正調査、情報漏えい対応、訴訟対応などの有事において、膨大なデータのなかからいかにデジタル証拠を集めて提示できるかという視点がポイントとなります。

また令和元年改正の独占禁止法において、課徴金減免制度に調査協力減算制度が導入されたこともあり、課徴金の額を低減する意味においても、デジタル証拠を保存・利用する仕組みの整備等により調査に対応できるような体制を整えておくことが重要だと高橋弁護士は指摘。たとえば不正調査の場合、データを保全し、証拠となりうる関連データを識別・抽出して、ドキュメント化したうえで他人に提示するというプロセスが考えられますが、企業活動においては普段からこうした有事の流れを想定して備えておくべきであると高橋弁護士は説明しました。

「有事への対応の訓練として、仮の状況を設定して対策を考えるテーブルトップエクササイズを行うことは効果的。誰が責任者となり、メディア対応をするのか、危機管理チームをいつ発動するか、危機管理チームを発動するまでのプロセスが整理されているか、そこに法務がどう関わるのか、などといった観点からトレーニングをしていくとよい」(高橋弁護士)

そして平時には、電子文書・記録の在り方について考えておくことも必要となります。その際に大切なのが、「文書情報の管理を、情報資産を活用して利潤を追求する機会と捉えること、電子化することで効率的に実施すること、そして、法的・社会的要求事項に対応すること」という3つの視点だと高橋弁護士はいいます。そして実際に文書情報管理体制やガイドラインを作成するにあたっては、文書情報の「作成・発生」、「処理」、「保管」、「保存」、「廃棄」という文書のライフサイクルにあわせて考えていくことになります。

文書情報のライフサイクル・マネジメント

文書情報のライフサイクル・マネジメント

また、電子文書の管理において気をつけておきたいのがクラウド利用です。法務の観点からは、国外のデータセンタ等で保管しておくことができる情報なのか、そのデータを保管する国のコントロールがどれくらい及ぶのかなど、個人情報保護法関連のリスクに留意する必要があると高橋弁護士は解説します。

さらに、クラウド利用については、不正調査との関係も考えておく必要があると指摘。クラウドサービスでは、メールも含めデータを消去してしまうと復元が難しいことから、復元が必要となる可能性を念頭に置いた、クラウド利用の合理性やリスクの分析を行うことの重要性についても言及しました。

チャンスとしてのDX

DXは有事への対応を効率化するだけでなく、当然チャンスとしても捉えることができます。たとえば自動車業界を例にとっても、設計から製造、販売、保険まで、近年ではすべてのフェーズでデータの活用が考慮されるようになってきています。

「製品の不具合情報から製造過程における問題までを究明できるようにデータの流れが設計されていれば、データを有効に活用することができる。また契約データであれば、営業担当者の交渉支援に利用したり、サブコン・ベンダ(下請け業者)との契約支援に使ったりすることが考えられる」(高橋弁護士)

さらにここ数年は、いわゆるAI契約書レビューや、大量のドキュメントから関連する内容を探す際に活用されるプレディクティブ・コーディング(予測的タグ付け)といったテクノロジーを盛り込んだリーガルテックサービスも実用化されてきています。高橋弁護士は業務の効率化へ向け、こうしたリーガルテックについても活用することを推奨しました。


コロナ禍を契機として、企業活動におけるデジタル技術の活用が今後も進んで行くことが見通されるなか、電子文書・記録の管理の重要性は一層増すものと考えられます。

『即実践!! 電子契約』では、本稿で紹介したような文書・記録管理の基本的な考え方や、方法、課題について、ストーリー・Q&Aを交えて解説しています。より理解を深めたい方はぜひ同書を手にとってご覧ください。

即実践!! 電子契約
電子契約・DX・文書管理(文書の電子化)の導入から運用まですべてを体験できる

この実務Q&Aを見てる人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

90秒で登録完了

無料で会員登録する