2020年の電子契約にまつわる議論と電子契約サービス導入・選定のポイントPR 『即実践!! 電子契約』の著者解説セミナーレポート(第1回)

取引・契約・債権回収

目次

  1. ハンコの機能と電子署名の考え方
  2. 電子契約サービス導入時は、業務上のリスクと契約類型の確認を
  3. 電子契約サービスの選定は、利用の文脈とサービス特性がポイント

ビジネスをデジタルベースで再構築するデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが加速するなか、新型コロナウイルス対応を契機として、書面規制・押印等の見直し、および電子契約プラットフォーム活用の議論が加速しています。

2020年11月17日にBUSINESS LAWYERSが主催したオンラインセミナーでは、『即実践!! 電子契約』(日本加除出版、2020年)の著者である駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士が、電子契約・電子署名の最新動向や、サービス導入時に気をつけるべきポイントなどを紹介しました。

ハンコの機能と電子署名の考え方

高橋弁護士は、まずハンコの機能と電子署名の考え方の基本について解説しました。

ハンコの機能に関しては、本来、その書類に法的な効果があることを示すために押すもので、識別・真正性確認・インテグリティ確保などの機能がわかりやすく担保されるというメリットがあります。また、本人の印章による印影の存在、そして本人の意思による押印という二段の推定を前提として、民事訴訟法228条4項「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」による推定効が得られると高橋弁護士は説明します。

では、ハンコが電子署名に置き換わるとこうした前提はどうなるのでしょうか。この議論は、今春以降、内閣府における規制改革推進会議等でも取り上げられてきており、9月には電子署名法を所管する総務省・法務省・経済産業省の合同で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法3条に関するQ&A)」が公表されています。こうした2020年に行われた一連の議論の動向を念頭に、高橋弁護士は以下のように見解を述べました。

「リアルワールドでの主体と、電子署名を行った者との同一性をどういった認証レベルで確認するかが重要なポイント。これは、なりすましの防止や真正性確保といったリスク対策の観点から、具体的な状況に応じて判断しなければならない。こうしたリスク分析の観点が政府文書には足りていないように感じる」(高橋弁護士)

駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士

駒澤綜合法律事務所 高橋郁夫弁護士

電子契約サービス導入時は、業務上のリスクと契約類型の確認を

電子契約サービスはその導入に伴い、内部統制の構築から、印紙税の削減、紙媒体の保管・郵送コストの削減、押印のための出社が廃止されることによる働き方改革、紙資源の削減によるSDGs達成まで、さまざまなメリットがあります。

一方で、導入によるリスクも考慮する必要があります。電子契約サービスの導入を考えるにあたっては、「どういう要件が考えられるか、なりすまし対応や改ざんの防止なども念頭に、現在の業務におけるリスクを洗い出して分析をするところから始めてほしい」と高橋弁護士はアドバイスします。

また、電子契約による締結が可能な契約類型かどうかについても確認しておく必要があると説明。たとえば、保証契約の場合は民法446条3項に、電磁的記録によってなされたときは書面によってなされたものとみなされる旨の記載があるため、電子契約の適用は可能となります。しかし、定期建物賃貸借契約の場合、借地借家法38条2項において書面による契約が求められており、電磁的記録によるケースについては規定されていないため、書面での契約が必須となると高橋弁護士は解説します(講師注:セミナー当時。公開日時点では、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」の35条によって、電磁的記録によることも可能とされており、このような法改正の動向についても留意する必要があるといえます)。

さらに、法人には帳簿書類等の保存義務があるため、電子契約サービスの仕組みのなかでそれをどう達成していくかという視点も重要です。

電子契約サービスの選定は、利用の文脈とサービス特性がポイント

こうした様式・保存方法に対する法的な要求事項を検討した後は、サービス内容として満たすべき要件をリストアップし、予算を確保して具体的な電子契約サービスを選定していく流れになります。

では、具体的にはどのような電子契約サービスを導入すれば良いのでしょうか。この疑問に対する答えとして高橋弁護士は、「社内で必要な機能を目的達成の観点から検討し、当該サービスを利用して締結する契約等の性質や利用者間で必要とする本人確認レベルに応じて適切なサービスを選択することが重要。業務の重要性、利用する当事者との関係、利用目的・頻度、公的機関に対して利用するかどうかなど、利用の文脈を把握したうえで、サービスの特性を総合的に判断して選定すべき」と助言します。

このように利用の文脈を明確にしたうえで、該当する具体的なサービスが、たとえば電子帳簿保存法施行規則で定められるタイムスタンプなどの法的な要件を満たす機能を有しているか、使いやすいUIか、マニュアルがわかりやすいものか、内部システムとAPI連携が可能か、電子契約サービスが終了した場合の処理をどうするかなどといった詳細な点を詰めていくことになります。

また、高橋弁護士は、電子契約サービスの導入時における、リスクマネジメントの観点による留意事項も解説。仮に契約の相手方により電子契約の成立が否認されるケースを想定した場合、そのインパクトと蓋然性を判断軸とした表を用いてリスクを見積もる方法を説明し、リスクの高低に基づいて求められる電子契約サービスの特性を考えることで、サービスの採用を判断することがポイントだと語りました。

リスクレベルの判断例

リスクレベルの判断例

本稿では電子契約にまつわる議論の現状や、電子契約サービス導入時の注意点等に関する講演内容を紹介しました。「DX時代の有事対応を支えるデジタル証拠の扱い方」では、電子文書・記録の管理方法や課題を中心に、企業および法務のDXについて解説した本セミナー第2回の模様をレポートします。

即実践!! 電子契約
電子契約・DX・文書管理(文書の電子化)の導入から運用まですべてを体験できる

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する