法務の転職アンケート回答結果をキャリアコンサルタントが分析 - 「自分軸」でのキャリア形成を!

法務部 公開 更新

目次

  1. コロナ禍でも売り手市場は続く 回答者の8割が転職経験あり
  2. 「自分軸」でキャリアプランを描く気概は必須
  3. 法律事務所から企業への転職 やりがちな失敗
  4. 20代・30代で取り組みたい法務担当者としてのキャリア形成

法務機能を有する企業の増加とともに人材ニーズも高まっていますが、法務担当者は自身の転職やキャリア形成についてどのように考えているのでしょうか。
BUSINESS LAWYERS編集部では2020年12月、「法務担当者の転職に関するアンケート」を実施しました。
アンケートでは、回答者の8割が「転職経験がある」と答えた一方で、前職での在職期間について「3年以内」と答えた転職経験者が4割に迫るなど、法務業界においても人材の流動性が高まっていることが読み取れました。
本稿では、管理部門専門転職支援サービス「EXCAREER」(エクスキャリア)のキャリアコンサルタント西村英貴のコメントとともに、アンケート回答結果をご紹介します。

西村英貴
弁護士ドットコム キャリア事業部 事業部長


インテリジェンス(現パーソルホールディングス)、リクルートキャリア(現リクルート)を経て、2016年弁護士ドットコムへ入社し、弁護士特化型の転職支援サービス「弁護士ドットコムキャリア」を立ち上げ。その後、2018年管理部門専門転職支援サービス「EXCAREER」をリリース。一貫して転職支援事業に従事し、これまで2000名以上のカウンセリングを実施。

【アンケートの概要】
実施期間:2020年12月15日〜2021年1月14日
調査手法:インターネット
調査内容:法務担当者の転職事情
対象:法務担当者
有効回答者数:235人

コロナ禍でも売り手市場は続く 回答者の8割が転職経験あり

まず、現在の転職市場の状況について教えてください。

人材業界全体は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2020年春夏頃から縮小傾向にありましたが、本当に人材を必要としている企業からのニーズは依然として強いと感じています。
法務職に関して言えば、多くの会社において法務機能の必要性や重要性への認識が高まっており、売り手市場の状況が続いています。もちろん誰でもいいというわけではなく、企業側が求めるレベルを満たしている人に限ります。

転職を考えている法務担当者にとってはチャンスと言えますね。

一概にそうとも言えません。
法務部、あるいは法務機能は、管理部社長室に属していたり、総務部の中の1つの機能として含まれていたりなど、さまざまな名称や組織形態の変遷を経ていて、法務部という独立した部門として企業内に設置されるようになってから日が浅い企業が多いと思います。
そのため、求人を出す会社側が、経営における法務部の位置付けや法務担当者に求める能力を明確にできていない例も多いのです。
経営陣や人事が法務の役割をよく理解しないまま、「とりあえず経験者を採用しよう」と考えているケースも見られることには注意が必要です。

回答者の8割が「転職経験あり」でした。この数字についてはいかがでしょうか。

あなたは転職した経験がありますか?

昨今の転職市場の活況ぶりや人材流動性の高まりを考慮すると、8割が転職経験ありという結果は極めて妥当な数字です。
ただし、BUSINESS LAWYERSの読者であれば、きっと情報収集の感度が高い人でしょうし、転職やキャリアに関心の高い人がアンケートに回答してくださったということだろうと考えられます。ですから、法務職全体の数字としてはもう少し低くなるのではないでしょうか。

そのうち4割近く(38%)が在籍年数「3年以内」で転職しています。

前職での就業期間を教えてください

3年以内という結果は、専門職としてはやや短いと感じましたが、自分のキャリアを主体的に考えて行動する人が増えてきていると見ることもできそうです。

転職経験がない回答者に「転職しなかった理由」をたずねたところ、「環境の変化に対する不安」を理由にあげる声が55%と突出しています。

転職経験がない方にお聞きします。転職しなかった理由として当てはまるものをあげてください。

この結果には納得がいきます。転職はリスクを伴う選択肢ですから、慣れた業務環境や人間関係を捨てる覚悟がない人にはおすすめできません。

多くの日本企業でこれまで法務に求めてきたことは、自社カルチャーの中で人間関係や暗黙知に精通し、「つつがなくやっていく」能力です。その状況に慣れれば慣れるほど、「他社に移ったら今のようにうまくやれなくなるのではないか」「あえて動かなくてもいいのではないか」と不安を覚えるようになるでしょう。

その他の「転職しなかった理由」として、3割弱が「現状に満足」と回答しました。

現在の環境に最適化した法務スキルで一定程度満足しているので、慣れ親しんだ業務プロセスからあえて離れる必要がないと考えているのかもしれませんね。

本来、法務スキルや「お作法」は、他社に移ってもこれまでと同様に活かせるものであるはずです。
法務職全体で、求められるスキルセットについて、異なる環境でも価値を発揮できる「ポータブルスキル」としての整理がなされていないことは、採用側にとっても求職者にとっても望ましいことではありません。

「自分軸」でキャリアプランを描く気概は必須

「転職によって解決したかった「課題」や手に入れたかったものは何でしたか」という質問への回答からは、大部分の法務担当者が「業務内容(67%)」と「待遇(58%)」を改善するために転職に向き合ったことがわかりました。この結果をどのように分析しますか?

転職によって解決したかった「課題」や手に入れたかったものは何でしたか

2位が「待遇」なのは予想どおりですが、最も多いのは「人間関係」ではないかと予想していたので、「業務内容」が一番上に来たのは正直に言って意外でした。自分のキャリアを真剣に考えている人が予想外に多いことがわかったのは、うれしい驚きです。「プロの転職」とは、本来こうあるべきです。

回答者自体が、キャリアに関する問題意識の高い人であるというバイアスはあるものの、法務担当者としてのバリューを高めるための方法の1つとして「転職」を選択した人が多いのは素晴らしいことだと思います。

「自分軸でキャリアプランを描くんだ」という気概は必須です。仕事を与えられ、それに文句を言うばかりでは、これからの法務キャリアは決して明るいものにはならないでしょう。

「転職する前に解決したかった「課題」や手に入れたかったものは、転職によって改善・獲得できましたか」という質問に対して、81%が「はい」と答えました。

「転職する前に解決したかった「課題」や手に入れたかったものは、転職によって改善・獲得できましたか」

法務は、企業によって業務内容がさまざまなうえに、外部からは何をやっているのかが見えにくい職種ですよね。ですから、他の職種と比べると、転職後のギャップが生じやすいのが特徴です。

ではこの8割の人たちは、どのようにしてギャップを回避できたのでしょうか。

いろいろな要素が複合的に関係しているとは思いますが、先ほどお話ししたように、回答者が主体的なキャリア観と明確な自分軸をもって転職活動に臨んだことは大きいでしょう。自分で選択肢を選び、主体的に正しい結果を導けたのだと思います。

「あれは食べたくない、これも嫌い」という消極的な動機で転職活動をしていると、いつまでも「ここではないどこか」を探し続けることになってしまいます。「転職によって手に入れたいものは何か?」を突き詰めて考え、クリアにしておくことは必須です。

たとえるなら、何となく周囲や環境に流されてファミレスに入って、何となくメニューを選ぶのではなく、「寿司が食べたい!」という意思を持って寿司店に行き、満足のいく食事をしてほしいのです。

自分軸を持って主体的に転職した人であれば、転職先にもスムーズにフィットできるのでしょうか。

多くの求職者と接してきた経験から言うと、ご自身に自信がある人ほど転職後のギャップに苦しむ傾向にあるようです。特に、業務内容を重視した転職だった場合には、転職先特有のカルチャーや仕事の進め方、部門間の責任範囲や力関係など、予想外の環境や人間関係に悩まされると、大きなストレスになってしまいます。

企業から求人情報をお預かりする立場としては、取引先の属性・傾向や契約の種類などに関するいろいろな仮説を投げかけて、業務内容について立体的な情報を把握できるように努めていますが、限界はあります。求職者の方々には、自分の望むものが手に入る職場であるかどうかを面接でしっかり確認していただくことをおすすめします。

面接時に心がける点はありますか。

面接はフラットな交渉の場であり、企業に採用してもらうためのテストではありません。
法務の方々は、ご自分を安く売ってしまいがちな方が少なくないのですが、「私にはこういう経験があり、こういうことができます」と自身の価値を証明したうえで、「ではいくらで買ってくれますか」と聞く。つまり「商談」のつもりで面接に臨んでいただきたいと思います。

法律事務所から企業への転職 やりがちな失敗

回答者のうち11%が弁護士資格者でした。有資格者の企業への転職についてはどのような特徴が見られますか。

法律事務所から企業への転職においては、企業法務分野の経験がある弁護士はもちろんですが、一般民事の経験しかない弁護士であっても若手であれば需要があり、そのような転職を希望する求職者も多数担当してきました。

ただ、ワークライフバランスや雇用の安定にばかり目が向いていて、なぜ企業法務に転身したいのかという動機や想いが弱い一方、弁護士としてのプライドや自由は手放したくないという方も一定数見られます。このような方々は、「何のための転職なのか」「なぜ企業で働きたいのか」に対する答えが明確でなく、なかなか転職先が決まらないこともあります。

会社員になれば労務管理をされるのは当たり前のことですが、意外にこれを直視できていない人が多いと感じます。「あなたの望む安定とは何ですか?」「転職したいと言っているけど、もしかしたら今が理想的な状態なのでは?」と問いかけると答えが出てこない場面も少なくありません。

弁護士という難関の国家資格を得て、誰かに雇われずに生きていくことのできる自由を手にしたのに、なぜあえてそれを捨てて会社員の道を選ぼうとしているのか。その点をよく考えていただきたいと思います。

20代・30代で取り組みたい法務担当者としてのキャリア形成

今回のアンケート結果から見る限り、法務担当者は転職に対して慎重なスタンスも見られます。このような転職市場の中で求める人材を獲得するために、企業側には何が求められるでしょうか?

採用活動以前の問題として、経営陣や事業活動に対してどのような価値を提供しているのかを明確に言語化できていない法務部門長が多いのが問題だと思います。そのような法務部の多くは、求人内容がぼんやりとしていて具体性に欠ける傾向があります。

法務部門長は、待っていれば契約審査や法務相談が持ち込まれるという立場にあぐらをかくことなく、経営陣に対して具体的な指標とともに価値をアピールしていかなくてはなりません

経営陣に対して法務の価値を示していくことが大切なのですね。法務担当者が個人としてできることはありますか?

担当者個人のレベルでも、自分がいなければどのように困ったことになるのか、積極的に発信していくべきでしょう。プロ野球選手と同じように、自分がやっている仕事の価値は自分で証明する責任があります

個々人が少しずつでも意識を高め、アクションを起こしていくことで、法務職全体としてのプレゼンスも高まっていくのではないでしょうか。

最後に、法務担当者のキャリア形成がどうあるべきかについて、メッセージをお願いします。

転職活動ではどうしても年齢が大きな要素になります。個人的には、年齢に囚われずにキャリアの可能性を広げるべきだと思っているのですが、こればかりはなかなか変わらないようです。

一般的には、35歳から40歳あたりを境に、それより下の年齢層が「若手」とされ、求人が豊富に出ています。しかしそれ以上の年齢になると、求職者の希望する待遇と求人の条件がマッチしにくくなります。伝統企業であればあるほど、年齢と役職の比例関係が顕著になり、ポジションがぐっと少なくなってきます。

若手の方には、今のうちから法務担当者としてのキャリア形成に主体的に取り組んでいただきたいです。

具体的にはどのような目標を設定することが考えられますか。

たとえば、40代になったときに、自分が「何屋さん」であるのかを実績とともに明言できるようになることを目標としてください。
何となく流されてきた人と、プロとしての自覚を持ってやってきた人とでは、ミドル世代になったときに大きな差がつきます。

そしてその強みが、時代や環境の変化があってもなお高く評価されるものなのかという、「世の中軸」で客観的に分析することも必要です。

たとえば今、担当業務のほとんどが契約書レビューで、レビューのスペシャリストを目指したいという人もいるかもしれません。もちろんそれは大切な能力ですが、今後、AIによる機械化が進んでいけば、その能力の価値は相対的に下がることになるでしょう。
あるいは、社内調整に長けていることが強みという場合は、会社を移っても同じ価値が提供できるかを考えてみてください。

もちろん、価値が下がることは認めたうえで今と同じことをやり続けるという選択肢もあるでしょう。ただしプロである以上は、たとえば契約書レビューにとどまらずひな形の整備にも注力するなど、「何か付加価値を付けられないか」というプラスワンの発想を継続していくことが不可欠です。

そのほかに転職を目指す法務担当者が意識すべき点はありますか。

自分の仕事が、ビジネスの成功という最終ゴールから遡ってどう貢献しているのかを常に意識するべきです。法務の成果のすべてを数字で評価することは難しい場合もあるかもしれませんが、キャリア形成のためには、定量的な形で社内外にアピールしていくことが必要です。

社内での法務の立ち位置やプレゼンスは各社さまざまですが、社会全体としては、ビジネスにおけるリスクマネジメントの必要性は高まるばかりです。新しい商品やサービス、コンテンツなどを世に出していくにあたって目配りすべき事項は、一昔前に比べてはるかに多くなっており、法務担当者にとっては大きなチャンスです。

そのような中で求められる法務のあり方とはどのようなものでしょうか。また、自分自身はどのような法務担当者であることが心地良いと感じるでしょうか。ビジネスパートナーとして事業部にアドバイスすることか、それとも一段高い立場からのリスク判断なのか。
転職やキャリア形成を考えるうえでは、そのような視点もぜひ大切にしていただきたいと思います。

弁護士ドットコムが運営する「EXCAREER(エクスキャリア )」

弁護士ドットコムが運営する「EXCAREER(エクスキャリア )」では、弁護士ドットコムやBUSINESS LAWYERS(ビジネスロイヤーズ )のネットワークを活かして、法務の方のキャリア支援を実施しています。転職をご希望の方へは求人選定から書類添削や面接対策、条件交渉まで、すぐにご検討でない方へは転職マーケットの現状や、キャリアをどう構築していくべきかのアドバイス等を、専任コンサルタントが無料でサポートします。お気軽にご相談ください。

転職をご検討の方はこちら
キャリア構築や市場についてのご相談はこちら
企業法務の求人情報

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する