資料作成のプロに学ぶ!コンプライアンス研修資料のシンプルな作法(1) パワーポイントの「強み」と「弱み」を知るだけで研修資料の質は格段に上がる

法務部
日比 海里 株式会社トリッジ

目次

  1. はじめに
    1. 伝わる研修資料、伝わらない研修資料
    2. 研修資料で上手にメッセージを伝えるコツ
  2. こんなパワーポイント資料はNG
    1. パワーポイント資料の “特徴・性質” を理解する
  3. 文字だらけの資料を見やすくするには?
    1. 資料に載せる情報を絞る
    2. 余白を必ずキープする
    3. 見やすい・読みやすいフォントを使う
    4. 使う色を絞る

「大事なポイントを漏らさず伝えよう!」。法務担当者が熱心に作ったコンプライアンス研修資料でも、研修受講者から「内容が難しくて退屈だ」といった声が上がってしまうケースは少なくありません。
しかし、受講者の満足度を上げ、研修の効果を高める資料作りのコツは意外とシンプルです。プレゼン資料作成に詳しい株式会社トリッジの日比 海里氏が、コンプライアンス研修担当者が身につけておきたい資料作りの「作法」を2回にわたって解説します。

第1回となる今回は、資料作成ツールである「パワーポイント」の特性を理解したうえで、文字だらけの資料を見やすくするための基本的な作法を紹介します。

はじめに

伝わる研修資料、伝わらない研修資料

資料作成スキルは研修担当の方々にとっては必須とも言えるスキルです。しかし、実際に担当の方とお話しすると、「資料をわかりやすく作れない…」「資料が難しかったと言われてしまう…」といった声はよく聞かれるところ。実は「伝わりにくい資料」と「伝わる資料」には明確な特徴の違いがあります。その点をしっかりと認識したうえで、資料の見せ方や伝え方を工夫しなければ、研修内容をわかりやすく伝える・理解してもらうことは難しいでしょう。

「伝わりにくい資料」と「伝わる資料」の主な特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

伝わりにくい資料
  • ストーリー展開・論理展開がめちゃくちゃな資料
  • 1ページに大量の情報が載っている資料
  • たくさん文字が書かれている資料
  • 煩雑で情報が整理されていない資料
伝わる資料
  • ロジックがしっかり通った資料
  • 1ページの内容が簡潔な資料
  • ビジュアル中心で “パッと見” で内容が理解できる資料
  • シンプルで統一感のある資料

研修資料で上手にメッセージを伝えるコツ

伝わる資料を作るうえでは必ず研修参加者の目線(=参加者本位)で考えることが重要です。たとえば、限られた研修時間のなかで一度に大量の情報を伝えられたり、難しい内容を文字ばかりの資料で説明されたとしたら、どうでしょうか? 参加者が非常にわかりにくく感じるであろうことは、容易に想像がつきます。

そのため、研修資料作成時は参加者目線で伝えるべき情報の “取捨選択” を行い、必要最低限の情報をいかにスッキリ・シンプルにビジュアルで表現するかが重要になります。「何が伝わればよくて、何を伝えなくて良いのか」「最低限押さえてもらいたいポイントは何なのか」「どうすればパッと見ただけで内容を理解してもらえるか」などを意識して作成することで、研修参加者は資料内容を自然と理解しやすくなるはずです。

こんなパワーポイント資料はNG

パワーポイント資料の “特徴・性質” を理解する

研修資料はPowerPointで作ることが多いと思いますが、NGな資料を作らないようにするためには、PowerPointで作る資料の “特徴・性質” を理解しておく必要があります。

(1)パワポでできること、できないこと

PowerPoint資料には「できないこと」があります。それは “読んで詳細を理解させる” こと。研修やプレゼンでは基本的に話し手のペースで内容が進行していくので、聞き手は資料をしっかり読み込んだり、聞き漏らしたところを戻って読み返すこともできません。あくまで研修やプレゼンの主役はトークであり(=トークで伝える)PowerPointは “視覚的な補助役” です。読ませる資料には向いていません。

一方で、PowerPoint資料で「できること」は、“見て概要を理解させる” ということ。シンプルにビジュアルで表現できれば、研修内容を直感的・瞬間的に伝えることができます。人間の脳は情報を見てから十秒前後の間にわかりやすいか、わかりにくいかの判断を行っているとも言われますが、話の概要をビジュアル的に理解してもらうためにPowerPoint資料は最適です。

(2)パワポでやっていいこと、いけないこと

上記の点を理解すると、PowerPointで「やっていいこと」と「やってはいけないこと」が見えてくるはずです。それぞれを整理すると、以下のようになるでしょう。

PowerPointでやってはいけないこと
  • 1ページに大量の情報が載っている
  • 難しい内容を難しい言葉でそのまま書いてしまう
  • 文章での説明が多い、またはトークで話せば良いことまで文章でたくさん書いてしまう
    (=PowerPointがトーク原稿になってしまっている)
  • 図解やグラフなどのビジュアル要素が少ない
→パッと見ただけでは内容が理解できない、記憶に残りづらいので×!
PowerPointでやっていいこと
  • トークの重要な部分だけを載せる(一度に伝える情報を絞る)
  • 難しい内容を噛み砕き、ポイントを絞って書く
  • 文章は極力短くし、ビジュアル(図解・グラフ・イラスト・画像等)に置き換える
→読まなくても直感的に内容が理解できる、記憶に残りやすいので◎!

文字だらけでわかりにくい資料の例

文字だらけでわかりにくい資料

1ページに大量の文字が詰め込まれているうえにビジュアル要素も乏しい資料。重要なポイントを直感的に理解することが難しい


グラフィカルで簡潔な資料の例

グラフィカルで簡潔な資料

使用する文字数を抑えて、ポイントを絞り込んだ資料。グラフィックを使用することにより内容をイメージで伝えることができる

(3)適正なスライドの枚数

コンプライアンス研修に適したスライドの枚数が気になる方も多いと思います。しかし、私個人としては「適正枚数はない」と考えています。伝えたいことがしっかり伝わり、研修の効果が具現化される(参加者の行動に現れる)のであれば、スライドが何枚になろうが構わない、という考え方です。むしろ枚数にとらわれるあまり、必要なスライドを無理矢理省略してしまったり、余計なスライドを増やしてしまっては本末転倒。あくまで研修の目的を達成するために「わかりやすい資料」であるかを意識すべきです。あまりスライド枚数に縛られないようにしましょう。

文字だらけの資料を見やすくするには?

前述の通り、文字だらけの資料では、受講者に研修内容を理解してもらうことが難しくなります。そのため、資料を作るときは文字情報はなるべく少なく、“パッと見” で内容が理解できるようなデザインにすることが大切です。

資料に載せる情報を絞る

研修資料のデザインの基本は、載せる情報をスッキリ・シンプルな見栄えにすること。研修やプレゼンはトークで伝えるのが基本です。トークで伝える内容を視覚的に補うために「トークで重要な部分のみをPowerPointで表現する」という点を意識しましょう。以下のポイントに注意すると情報量を絞りやすくなります。

情報量を絞るコツ
  1. トークで話すことを全部書こうとしない
  2. 文章・言葉での説明をなるべくビジュアルに置き換えて表現する
  3. 言葉で書くときは箇条書きを活用する
  4. 言葉の重複を避ける
  5. 体言止めにする

余白を必ずキープする

研修資料をスッキリ・シンプルな見栄えにするために、最も重要な要素の1つが「余白」です。伝わるデザインにおいて余白は必須と考えましょう。余白がないと全体的に情報が接近し過ぎて窮屈さ・圧迫感を感じるようになり、それが見にくさにつながります。各余白の目安は載せる情報量や要素のサイズ等によって変わりますが、スライドの上下左右には必ず一定の余白を入れましょう。そこに余白が確保されるだけで、スライドの圧迫感が和らぎます。

上下左右の余白の目安は、スライドの縦横サイズが4:3なら「上8.5、下8.3、左右12.0」、縦横が16:9なら「上8.5、下8.3、左右16.0」を1つの目安にすると良いでしょう。下の余白を上の余白よりも少し広めにとると、バランス良く見えます。

見やすい・読みやすいフォントを使う

“パッと見” で理解できる資料を作るためには、フォント選びにも気を配りたいところ。日本語のフォントは視認性(目で見たときの確認しやすさの度合い)・可読性(読み取りやすさ度合い)の高い「ゴシック体」のなかから選ぶと良いでしょう。おすすめは以下の3つです。

おすすめの日本語フォント
  • メイリオ:視認性・可読性の高い代表的フォント。「明瞭(めいりょう)」という言葉が名前の由来。
  • ヒラギノ角ゴ:遠くからでも瞬間的に理解できる見やすさ・読みやすさを持つフォント。高速道路の案内標識などにも使われている。
  • 游ゴシック:高い視認性・可読性加え、洗練された雰囲気を併せ持つフォント。やや細めのフォントなので、少し太さを加えたい場合は「游ゴシックMedium」を使うのがおすすめ。

外資系企業などでは資料を英語で作ることも多いでしょう。英文の場合には判読性(文字や文章の意味の伝わりやすさの度合い)の高いフォントを選ぶのもポイントです。アルファベットは複雑な形状の日本語と比べてシンプルな形をしているため、文字の形が似てしまい誤読を招くケースがあります(下図参照)。

英文では判読性の高いフォント選びが重要

英文では判読性の高いフォント選びが重要

「Century Gothic」というフォントを使った例。形がシンプルなアルファベットは誤読を招くおそれも。判読性の高いフォントを選びたい

そのため、なるべく形が似ないフォントを選びましょう。お勧めは「Arial」です。このフォントは視認性・可読性も高く、比較的形が似やすいアルファベットの文字(「a」と「o」など)でも誤読しにくいという特徴があります。

なお、1つの資料のなかで何種類もフォントを使ってしまうと、雑多な印象になり見づらく感じやすいので、フォントの混在はなるべく避けましょう。基本的には日本語1種類・英語1種類だけで資料を作るようにします。

使う色を絞る

伝わる資料デザインにおいて、配色は特に重要です。なかでも最も気をつけなければならない点は、「使う色の数を絞る」こと。なぜなら、人間の脳は色数が増えるとどこが重要なのかの判断がつきにくくなるからです。色が少ない方が、“パッと見” で瞬間的に大事なポイントが判断できるようになります。資料に使う色は多くても「3色+背景色」までと覚えておくと良いでしょう。

伝わりにくい資料デザインの例

伝わりにくい資料デザイン

使う色数が多すぎると重要なポイントが伝わりにくい


伝わりやすい資料デザインの例

伝わりやすい資料デザイン

色数が絞られると重要なポイントが伝わりやすい

なお、3色+背景色のおすすめは以下の通りです。

おすすめの「3色+背景色」
  • 1色目(ベースカラー):一番よく使う基本色(使用比率70%程度)。黒または濃いグレーがベター。
  • 2色目(メインカラー):見出しや少し強調したい箇所に使う(使用比率25%程度)。会社(自社や提案先)のコーポレートカラー・ブランドカラーがおすすめ。
  • 3色目(アクセントカラー):特に注目してほしい箇所に使う色(使用比率5%程度)。メインカラーの補色(反対色)がおすすめ。
  • 背景色:白またはすごく薄いグレーがベター。

第2回では、グラフや図解の使い方のほか、難解な法律用語や条文をわかりやすく伝える資料づくりのコツ、研修担当者が覚えておくと便利な「資料作りに役立つパワポのtips5選」をご紹介します。

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