コーポレートガバナンス・コード改訂案
コーポレート・M&A
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.181」の「特集」の内容を元に編集したものです。
コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」という)の改訂案が公表され、4月7日、パブリック・コメント手続に付されました。5月7日が意見募集の最終日とされており、当該意見募集の結果を踏まえて6月中に改訂が実施される見込みです 1。
なお、上場会社は定時株主総会終了後遅滞なく、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下、「CG報告書」という)を更新する必要がありますが、本年中に開催される定時株主総会の日以後に行うべき通常の更新は、現行のCGコードに沿って行うことでよいとされています。そして、改訂後のCGコードを踏まえて更新したCG報告書の提出は、本年12月末日までに行うことが求められます。ただし、改訂後のCGコードのうち、プライム市場の上場会社のみを対象とする原則に関する実施状況については、さらに猶予があり、来年4月4日以降に開催される定時株主総会の終了後遅滞なく提出されるCG報告書から記載することとなっています。
主なCGコード改訂案の概要および東証新市場区分におけるCGコードの適用範囲
(1)主なCGコード改訂案の概要
主なCGコード改訂案の概要は以下のとおりです。ただし本改訂案はパブリック・コメント手続を経て修正される可能性がありますのでご留意ください。
項 目 | 原則 | 改訂の要旨 | ||
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1 | 取締役会の機能 発揮 |
原則4–8 |
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補充原則 4–10 ① |
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補充原則 4–11 ① |
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2 | 企業の中核人材における 多様性の確保 |
補充原則 2–4 ① 【新設】 |
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原則4–11 |
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3 | サステナビリティを巡る 課題への取組み |
補充原則 2–3 ① |
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補充原則 3–1 ③ 【新設】 |
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4 | そ の 他 | グループガバナンスの在り方 | 補充原則 4–8 ③ 【新設】 |
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監査に対する 信頼性の確保、内部統制・ リスク管理 |
補充原則 4–13 ③ |
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株主総会関係 | 補充原則 1–2 ④ |
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補充原則 3–1 ② |
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(2)東証新市場区分におけるCGコードの適用範囲
来年4月4日以降、次に掲げる市場区分に従い、CGコードのコンプライ・オア・エクスプレインが求められます。
プライム市場:改訂後のCGコードの全原則(基本原則・原則・補充原則)
スタンダード市場:同上(ただし、プライム市場の上場会社のみを対象とするものを除く)
グロース市場:改訂後のCGコードの基本原則のみ
(ご参考)投資家と企業の対話ガイドライン
CGコードの改訂に向けて議論されていた一部の論点は、CGコード改訂案ではなく「投資家と企業の対話ガイドライン」に盛り込まれる見込みです。同ガイドラインは、スチュワードシップ・コードおよびCGコードの附属文書として位置付けられており、機関投資家と企業の対話において重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものです。同ガイドラインの改訂案は、本特集の冒頭に記載したURLより確認することができます。
同ガイドラインにおいて今回改訂される内容は多岐にわたりますが、例えば株主総会の在り方について以下の事項が新たに規定される見込みです。
- 株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案に関して、株主と対話をする際には、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析結果、対応の検討結果が、可能な範囲で分かりやすく説明されているか。
- 株主総会の招集通知に記載する情報を、内容の確定後速やかにTDnet及び自社のウェブサイト等で公表するなど、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるような情報開示に努めているか。
- 株主総会が株主との建設的な対話の場であることを意識し、例えば、有価証券報告書を株主総会開催日の前に提出するなど、株主との建設的な対話の充実に向けた取組みの検討を行っているか。
また、不測の事態が生じても株主へ正確に情報提供しつつ、決算・監査のための時間的余裕を 確保できるよう、株主総会関連の日程の適切な設定を含め、株主総会の在り方について検討を行っているか。 - 株主の出席・参加機会の確保等の観点からバーチャル方式により株主総会を開催する場合には、株主の利益の確保に配慮し、その運営に当たり透明性・公正性が確保されるよう、適切な対応を行っているか。
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
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