三井物産に学ぶ株主総会関連システムの活用事例と選定のポイント 株主の関⼼事アンケート等を活用して株主エンゲージメントを深めつつ、開催時間は1時間短縮

コーポレート・M&A

目次

  1. 2020年株主総会を振り返って
  2. バーチャル総会
  3. 役員答弁支援システム
  4. 株主関心事アンケート

 新型コロナウイルス感染症の影響により、株主総会の運営においては感染対策の徹底とともに、システムの活用による議事運営の効率化が求められるようになってきています。本稿では、三井物産株式会社の株主総会事務局担当者が、株主総会におけるシステム活用の状況について、昨年の総会対応も例に紹介します。

2020年株主総会を振り返って

 当社では、2020年の株主総会において、新型コロナウイルス感染拡大防止と株主エンゲージメント強化を両立すべく下記施策を実施しました。本年の株主総会においても同様のコンセプトに基づき、各種施策を検討中です。
 まず、感染拡大防止の観点からは、以下を含む諸施策を実施しました。

  • 会場面での感染防止策の徹底(飛沫防止用アクリル板の設置、サーモグラフィによる検温の実施、マスク着用の徹底、ソーシャルディスタンスを確保した座席配置等)
  • 株主総会当日は、役員6名のみが登壇し、残りの役員は全員リモートでの参加
  • 招集通知・ホームページでの来場抑制、議決権の事前行使の呼びかけ、記念品・展示パネルの取止め、議事短縮の事前告知

 そして、株主エンゲージメントの強化の観点からは、会場に来場できない株主にも十分な情報を届けるため、以下の施策を実施しました。

  • 中期経営計画の社長説明プレゼンテーションを事前に撮影し、事業報告の動画とともにホームページに事前掲載 1
  • 株主総会当日の動画については、株主総会の翌営業日にホームページに掲載し、オンデマンド配信を実施 2
  • ホームページおよび「スマート行使(後述)」後のアンケート機能を通じて、株主の関心事のヒアリングを実施。特に関心の高い事項について、株主総会当日に質疑応答の冒頭で社長がまとめて回答
  • 株主総会当日に回答した質問事項以外の関心の高い質問事項についても、後日回答をホームページに掲載

 株主総会当日の動画のホームページへの掲載は以前から実施していましたが、その他の施策については、社長説明プレゼンテーションの事前掲載をはじめ、初めての試みがほとんどでした。新型コロナウイルスの影響により状況が刻々と変化する中、限られた時間内で企画から実行まで迅速かつ正確に対応する必要があり、プレッシャーはありましたが、事務局内でアイディアを出し合って前向きに取り組みました。細かい部分では改善すべき点もあると思いますが、致命的なトラブルがなかったことは幸いでした。

2020年に開催された三井物産株式会社第101回定時株主総会の模様

2020年に開催された三井物産株式会社第101回定時株主総会の模様

バーチャル総会

 2021年の株主総会については、物理的に会場に来場せず、リモートでの総会参加の機会を提供することが期待されている中で、バーチャル総会実施・推進の機運が醸成されてきています。
 当社でも、2021年6月株主総会において、ハイブリッド参加型バーチャル総会の導入を検討しています。バーチャル総会の導入により、これまで株主総会に出席できなかった株主も含め、より多くの株主との一層のエンゲージメント向上の機会となることを期待しています。その実現のため、株主総会の透明性の向上および情報開示のさらなる充実に取り組みたいと考えています。
 なお、アクセスが集中した場合でも通信回線の安定性を確保できるよう、対策を検討しておく必要があります。

役員答弁支援システム

 デジタル技術の進化により、総会準備の効率化と当日の役員答弁支援の充実化を図っていくことが、標準装備として求められる時代となってきています。

 当社では2016年より、当日の株主質疑対応において、外部提供の答弁支援システムを導入しました。これは、答弁役員のために用意している想定問答が、株主質問に対応して、迅速に答弁役員画面に表示されるものです。Wordで作成した想定問答をシステム用のExcelに自動転換することができるようになり、事前準備を効率化できました。

 2019年からは、想定問答集の電子化を図り、想定問答内容の電子ファイルを答弁役員に事前に送付することで、ペーパーレス化に取り組んでいます。さらに2020年には、総会開催時間の短縮化の方針の下、事前質問制度を導入しました。その結果、当日の主要な質疑対応が効率化されました。

 事前準備としては、役員答弁支援システムを扱う事務局関係者間で、利用時のスムーズな連携が取れるよう十分に練習しておくことがあげられます。また、異動により担当者全員が新任とはなってしまわないようにすることも留意しています。新たな担当者が対応する場合は、株主質問に対して即座に想定問答を検索できるよう練習を積んでおくことが重要です。

 なお、当日PCがダウンした場合に備え、代替PCを用意しておく必要があります。また、当日は当該システムに関するエンジニアにも立ち会ってもらい、システムトラブルに備えています。当社では事務局員のPCが総会直前にダウンしたことがありますが、立ち会っていただいた外部エンジニアのおかげで問題発生には至りませんでした。

 今後の改善点としては、複数部署から一部重複した回答を受領していることもあり、できるだけ1つの回答に集約しておくことで、当日より正確かつ簡潔な回答を検索できるようにしたいと考えています。

株主関心事アンケート

 2020年総会より「株主関心事アンケート」を導入し、多数の株主から回答をいただきました。2021年総会においても実施を予定しています。
 これは、ホームページおよび「スマート行使」(三井住友信託銀行の提供するスマートフォン用議決権行使ウェブサイト)による議決権行使後に設けられているアンケートを通じて、株主総会に先立ち株主の関心事のヒアリングを行うものです。

 アンケートで特に株主の関心の高かった事項については、株主総会当日に社長が包括的に説明を行い、また、株主総会にて説明しなかった項目については、株主総会後ホームページに回答を掲載しています。これにより、株主総会当日の質疑応答時間を大幅に短縮することができました。具体的には、従来20件弱の質問を会場で受けていたところ、2020年の株主総会での会場質問は2件にまで低減しました。また、新型コロナウイルス対応のため、質疑応答に限らず株主総会全体の所要時間の短縮を目指していた中、合計で約60分弱の時間短縮を実現しました。

 今後の展望としては、経年変化を確認することで株主の方々の関心動向を把握し、より精度の高い想定問答を作成すること、FAQを作成して事前掲載し、当日の質疑の時間を短縮することなどを考えています。

 なお、上記3つのシステムを選定するうえで重視したポイントは以下の表のとおりです。また今後にむけては、議長支援のための新システムの導入も検討しています。

バーチャル総会
  • アクセスが集中した場合の通信回線の安定性が確保されていること(インターネットを経由した参加を想定しているため)
  • 株主に限定した配信が可能であること(情報管理の観点から)
答弁支援システム
  • 想定問答の格納が容易で、当日役員回答時において、検索が迅速で正確なシステムであること
  • システムトラブルの少ないシステムであること
  • 外部者からアクセスができないように、ネットワークが閉鎖的に管理され、情報管理が十分に維持できる安全性の高いシステムであること
株主関心事アンケート
  • 株主から寄せられる多くの回答を自動的に整理・抽出のうえ、効率的に集計管理できる機能を有するシステムであること
  • 結果の経年変化を確認できること

 他企業のご担当者におかれても、新型コロナウイルス感染拡大防止と株主エンゲージメント強化の両立を目指し、様々な試みに取り組まれているかと思います。当社取組事例がご参考になれば幸いです。

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