【WEBセミナー】事例で学ぶグローバル法務_クロスボーダー契約・海外進出(M&Aと合弁)

法務の価値向上へ向けたテクノロジー活用のポイントを有識者が講演PR 「Legal Innovation Conference 〜法務のDX〜」開催レポート

法務部

目次

  1. システム化により取得したデータを業務効率化やパフォーマンス管理に活用
  2. 「どの課題を解決するのか」を考えたリーガルテック導入が重要
  3. AIの強みと弱みを理解して活用し、法務の力を拡張する
  4. 「クラウドサイン」の顧客の声から学ぶ、電子契約導入の失敗ケース
  5. ライブラリーサービスは書籍の代替でなく、情報収集の幅を広げるツール
  6. リスクマネジメントを通じた価値創出に注力するためのDX
  7. DXは「目的」ではなく「手段」

新型コロナウイルス感染症の流行により経済活動が一変し、リスクの複雑化、勤務形態の変化といった様々な課題が生じるなか、従来とは異なる新たな法務の組織作りや、働き方の改革に取り組む必要性が顕在化しています。

そこで注目されているのが、テクノロジーを用いたDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みです。11月4日にBUSINESS LAWYERSが開催したオンラインカンファレンス「Legal Innovation Conference 〜法務のDX〜」では、法務部門におけるDXの実践例や、テクノロジー導入検討時の考え方について、有識者たちが紹介しました。

システム化により取得したデータを業務効率化やパフォーマンス管理に活用

はじめに登壇したのは、太陽誘電株式会社 法務部長 佐々木毅尚氏。「法務部門におけるDXとは - 導入までの準備事項と成果に結びつけるための視点」と題し、自社の事例を交えながら法務業務のシステム化やリーガルテックの導入方針について解説しました。

太陽誘電株式会社 法務部長 佐々木毅尚氏

太陽誘電株式会社 法務部長 佐々木毅尚氏

佐々木氏は、「法務部門におけるDXとは、単なる法務業務のシステム化ではなく、業務をシステム化することによって変革し、競争優位を確保することを意味する。つまり、業務改革と成果が必要」とDXの定義を述べたうえで、改革のターゲットとしては、法務業務のオペレーションおよびコミュニケーションの改善の2つが大きなポイントになるとします。

契約審査、法律相談、訴訟、M&A等の関連業務を一度に改革することは不可能。効果が高い業務を見極め、優先順位をつけてターゲットを設定しなければならない。分量が多い業務、定型的な業務が改善のポイント。メーカーである当社は契約審査や法律相談のボリュームが多いので、まずはそこから着手した」(佐々木氏)

同社では、契約審査のオペレーションを見直し、レビュー基準をマニュアル化して統一したり、ドラフトチェックの依頼基準を設定したりすることなどにより、まずはシステムを導入しなくても効率化できる業務を整理。そのうえで、メールでのやり取りなくシステム上で契約審査を完結させるという方針で、システム開発およびリーガルテックの導入を進めたといいます。

その効果について佐々木氏は、業務の見える化・効率化に関するポイントをあげました。これはシステム化によりデータの取得が可能になり、データに基づいたボトルネックの発見や、担当者ごとのパフォーマンス管理・改善ができるようになるためです。また同社では取得したデータをもととして、人事評価に定量的指標を置いていることも紹介されました。こうしたリーガルテックを活用するうえでの考え方について、佐々木氏は「今はトライアル的に使っている企業が多いかもしれないが、これからは競争優位性を生むものとして実装していかなければならない」と語りました。

「どの課題を解決するのか」を考えたリーガルテック導入が重要

続いての講演「リーガルテックは法務組織のどんな課題を解決するのか ~Visionalグループが考えるリーガルテック導入活用の意義」では、株式会社Hubble 取締役CLO/弁護士 酒井智也氏をモデレーターに、株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)法務室室長/弁護士 小田将司氏がリーガルテック導入の考え方について説明しました。

株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)法務室室長/弁護士 小田将司氏(写真右)
株式会社Hubble 取締役CLO/弁護士 酒井智也氏(写真左)

株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)法務室室長/弁護士 小田将司氏(写真右)
株式会社Hubble 取締役CLO/弁護士 酒井智也氏(写真左)

契約書の管理・共有ツールを提供するHubble。約1,000名へのユーザーヒアリングの経験をもとに、酒井氏は「リーガルテックは手段であり、何を解決して何を実現したいかを考えるべきである」と強調します。

小田氏によると、Hubble導入前のVisionalグループの法務組織における課題は、問い合わせ件数の多さだったと振り返ります。さらに、ナレッジやファイルが共有されていないために業務の属人化が起こり生産性が低下しているものの、会社の成長に伴い法的な問題が増加していくなか、リーガルテックを導入して改善活動を行う余力がないという悪循環が続いていたといいます。

「社内から月間平均300件ほどの問い合わせが発生していたが、今年2月の時点で法務室は3人体制。グループ全体で1,000名規模の従業員を抱え、事業の数が10以上にのぼる組織の法務としては相当苦しい状態だった」(小田氏)

そこで同社では、まずは人材を採用してリソースを確保するところから業務改善をスタート。そのうえで、Slack、Salesforceなど複数のツールによる法務への問い合わせ経路を一元化・可視化し、定型的な問い合わせをナレッジとして社内に公開することで、問い合わせ件数を減らしていきました。

また法務部内で作成したドキュメントやリサーチ結果を共有・蓄積することで知見の共有を実施。あわせて、Hubbleの導入により、現在は760件を超えるドキュメントが社内でシェアされているといいます。小田氏は、Hubbleをはじめ各ツールに対して専任の担当者を配置することがリーガルテックの活用を進めていくポイントであると紹介しました。

まずリーガルテックを入れてみようという発想も大事だが、どの課題を解決するのかを考えることが重要。どんないいツールであっても徹底的に使わなければ価値を感じることはできない。課題が明確でないと解決へむけた実行は続かないということからも、まず取り組む課題を検討することが大切になる」(小田氏)

AIの強みと弱みを理解して活用し、法務の力を拡張する

「AIが法務の仕事を奪うのか」という昨今の危機感に対する見解を示したのは、株式会社LegalForce 代表取締役CEO/弁護士 角田望氏です。講演「AI活用で進化する契約業務~契約業務におけるAIの到達点~」では、法務業務におけるAIの現状について解説しました。

株式会社LegalForce 代表取締役CEO/ 弁護士 角田望氏

株式会社LegalForce 代表取締役CEO/弁護士 角田望氏

AIでこれからの法務がどう変化していくかを考える際には、「AIの強みと弱みを理解することが出発点になる」と角田氏は説明します。情報の抽出や分類、定型文の生成はAIの強みといえますが、現状のAIでは、情報の意味を理解することができません。このため、角田氏は「AIは法務の仕事を奪わない」と明言。法務の観点からは、「AIは法務の力を補助・拡張するものとして浸透していく」と、ツールとして有効活用することの重要性を指摘します。

AIをどう活用するかは、役割分担の発想が重要。契約書からの情報抽出や、整理、データベース化などはAIに任せられるが、整合性の確認や意思決定、交渉などは人がやるべき仕事」(角田氏)

単純作業をAIに担わせて既存業務を効率化できれば、より業務の幅を広げていくことも可能となります。角田氏は「法務の力を拡張し、企業成長に繋げていくこともできる」と、AI活用によるこれからの法務の可能性について展望しました。

「クラウドサイン」の顧客の声から学ぶ、電子契約導入の失敗ケース

弁護士ドットコム株式会社 クラウドサイン事業本部 リーガルデザインチーム『サインのリ・デザイン』編集長 橋詰卓司、同マーケティングチーム 高橋佐和は、「あの企業はここでつまずいた…電子契約導入『失敗』事例」と題し、企業の電子契約導入において気をつけるべきポイントを紹介しました。

弁護士ドットコム株式会社 クラウドサイン事業本部 リーガルデザインチーム『サインのリ・デザイン』編集長 橋詰卓司(写真右)、同マーケティングチーム 高橋佐和(写真左)

弁護士ドットコム株式会社 クラウドサイン事業本部 リーガルデザインチーム
『サインのリ・デザイン』編集長 橋詰卓司(写真右)、
同マーケティングチーム 高橋佐和(写真左)

橋詰は、これまで電子契約の導入失敗の原因として、取引先から断られるケースがもっとも多かったところ、今年7月および9月に電子署名法を所管する各省庁が「クラウドサインのような事業者署名型の電子契約サービスも法令上の要件を満たす」という見解を公表し、その状況は大きく変わったといいます。

一方で、最近の電子契約サービスの解約理由を分析してみると、事業部の協力が得られなかったり、対象契約が絞れなくなるなど、社内推進の段階でつまづいている傾向を示したデータを披露。最近までクラウドサインのセールス担当として多数のユーザーの声を直接聞いてきた高橋は、電子契約の導入に失敗しているケースについて、次のように説明します。

「トップダウンで導入したものの、導入目的や目指す成果が共有されないまま、現場が具体的な行動を変えられず移行できないのはよくある失敗事例。また、電子契約による業務効率化・生産性向上のメリットを考慮せず、収入印紙コストの削減だけが目的化してしまい、それだけでは費用対効果が見出せないと解約に至る残念なケースもあった」(高橋)

紙とハンコによる契約から脱却するために、ベンダー側では「電子署名技術の標準化」を議論する必要もあると橋詰は指摘します。電子署名の国際標準規格としては「PAdES」が存在しており、クラウドサインも採用しています。橋詰は「日本がこれまで紙とハンコで培ってきた契約文化の良いところを必要に応じ取り入れながら、国際標準規格にも沿った電子契約サービスを提供するべき」と提言しました。

ライブラリーサービスは書籍の代替でなく、情報収集の幅を広げるツール

「BUSINESS LAWYERS LIBRARYの活用事例とライブラリーサービスの可能性」と題したセッションでは、BUSINESS LAWYERS 編集長 松本慎一郎をモデレーターに、書籍・雑誌の閲覧プラットフォーム「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」を導入している株式会社ロコガイドの経営管理部 部長 兼 法務グループ グループリーダー 片岡玄一氏が、同サービスの導入背景や、活用するうえでの考え方について講演しました。

株式会社ロコガイド 経営管理部 部長 兼 
法務グループ グループリーダー 片岡玄一氏(写真右)
BUSINESS LAWYERS 編集長 松本慎一郎(写真左)

株式会社ロコガイド 経営管理部 部長 兼 法務グループ グループリーダー 片岡玄一氏(写真右)
BUSINESS LAWYERS 編集長 松本慎一郎(写真左)

コロナ禍を受けて、オフィスの書籍にアクセスできなくなったことがきっかけとなり、BUSINESS LAWYERS LIBRARYの導入を決めたという片岡氏。ただし、実際に利用してみると、むしろ書籍の代替として意識しないことが活用のポイントであることに気づいたといいます。

片岡氏は、書籍の代替としてライブラリーサービスを利用すると、特定の「あの本がない」という状況が発生しストレスに感じてしまいがちだとしながら、書籍の垣根を超え、横串で質の良い情報にアクセスできることにライブラリーサービスの強みがあると分析しました。

一般の検索エンジンで結果表示される情報は玉石混交だが、書籍の情報は、実績のある著者が書いており、なおかつ編集者の目を通っているもの。そうした質のよい情報だけを調べられる」(片岡氏)

また片岡氏は、購入して手元に置いておきたい本と図書館で手に取る本が異なるように、両方あると情報収集の幅が広がるという考え方が、ライブラリーサービスを活用するコツだと紹介しました。

リスクマネジメントを通じた価値創出に注力するためのDX

最後の講演は、Airbnbリードカウンセル・日本法人法務本部長/日本組織内弁護士協会理事・事務次長及び同リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会座長/ISO TC262 国内委員会 作業グループ委員/弁護士 渡部友一郎氏による「法務のDXを進めるために - 新しい国際規格で可視化する自社法務のリスクマネジメント力」。今年5月に発行されたリーガルリスクマネジメントのフレームワークを定める国際規格 ISO31022をベースに、法務のDXを進めるためのポイントについて紐解きました。

Airbnbリードカウンセル・日本法人法務本部長/日本組織内弁護士協会理事・事務次長及び同リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会座長/ISO TC262 国内委員会 作業グループ委員/ 弁護士 渡部友一郎氏

Airbnbリードカウンセル・日本法人法務本部長/
日本組織内弁護士協会理事・事務次長及び同リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会座長/
ISO TC262 国内委員会 作業グループ委員/弁護士 渡部友一郎氏

渡部氏は、直接的に収益につながる事業部門と異なり、コストセンターとも呼ばれる法務部門は、DXへ投資すべき理由を明確にしなければ経営陣等の理解を得ることは難しいと説明。法務がDXに投資すべき理由について「合理化した時間でリスクマネジメントを行い、価値を創出する法務部となるため」であると述べました。

Airbnbではリスクマネジメントにおいて、横軸にリスクの起こりやすさ、縦軸にリスクのインパクト(結果の大きさ)を示したリーガルリスクマトリクスを用いてリスクの評価・検討を行っているといいます。また、企業のリスクを扱うグローバルスタンダードとして、ISO31000の規格があることを渡部氏は紹介。「これをもとに法務機能を説明することで、より経営陣にも受容されやすい説明ができる」とその有用性を示し、特にISO31022がリーガルリスクマネジメントのプロセスとして、リスクの特定、分析に加え、その評価や対応を含んでいることを解説しました。

Airbnbのリーガル部門でエース級の担当者によるメール・メモを分析すると、「リスクの対応」を検討するフローに多くの時間を割いていることに触れながら、「起こりやすさ、結果の大きさが示されていないリスクは、事業部で消化することができない。特に日本の組織は、リスクだけ提示されると諦めてしまう傾向にある。リスクの対応策までを提案することで、事業推進につながる」と、DXによる合理化の先で法務部門が生み出すことができる価値についての見解を示しました。

DXは「目的」ではなく「手段」

全体を通して、DXは法務の価値を向上するための手段であり、目的にはなりえないということがわかったカンファレンスだったのではないでしょうか。BUSINESS LAWYERS 編集長 松本は、デジタル化の要求が進んだことから、リーガルテックの導入が目的になってしまい、それが原因で失敗してしまうケースもあるように思われると説明したうえで、「法務が今後どのような役割を果たすべきか、そこにデジタル技術はどう貢献するか、メディアを通じてこれからも発信していきたい」と語り、イベントを締めくくりました。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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