2020年7〜9月期のM&A件数は4四半期ぶりに減少、金額は四半期ベースで過去最高

コーポレート・M&A

目次

  1. 巨額M&Aの発表が3件連続し、取引金額は四半期ベースで過去最高に
  2. ソフトバンクグループによるアーム売却は歴代2番目の取引金額

 コロナ禍の影響が長期化するなか、M&Aにおける取引金額は全体として小型化の傾向が続いている。
 一方、2020年第2四半期(7~9月)のM&A市場では巨額の案件が相次ぎ、取引金額は四半期ベースで過去最高を記録した。

巨額M&Aの発表が3件連続し、取引金額は四半期ベースで過去最高に

 上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計したところによると、2020年第2四半期(7~9月)のM&A件数は前年同期より10件少ない199件だった。前年同期の件数を下回るのは4四半期前の2019年第2四半期以来。一方、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言と重なった前期と比べると25件増えた。
 7~9月としては4年ぶりに200件台をわずかに割り込んだが、過去10年間では4番目のM&A件数で、一定の水準を保っている。ただ、単月の件数をみると、8、9月は2カ月連続で前年を下回り、一服感が広がってきた形だ。

 一方で、7~9月の取引金額は前年同期比3倍の8兆2140億円に達し、四半期ベースで過去最高を記録した。これは8月から9月にかけて1兆円を超える巨額M&Aの発表が3件連続したためで、取引金額が6兆円以上に達した武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収があった2018年4~6月(7兆6576億円)を抜いた。

ソフトバンクグループによるアーム売却は歴代2番目の取引金額

 8月初めには、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン)が米コンビニ第3位のスピードウェイを2.2兆円で買収することを発表した。実は、セブンは今春にスピードウェイの買収に動いていたが、金額が折り合わず、断念。新型コロナの影響などで買収金額が低下したタイミングで再交渉がまとまったとみられる。

 セブンと対照的に、買われる立場となったのは塗料国内最大手の日本ペイントホールディングスだ。筆頭株主でシンガポールの同業、ウットラムグループが日本ペイントの第三者割当増資を引き受けて、出資比率を39%から59%に引き上げ、子会社化する。取得金額は1兆1851億円にのぼり、日本企業を対象とするM&Aとして過去最大だ。

 9月にはソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計大手アームを最大4.2兆円で売却すると発表した。相手は米半導体大手のエヌビディア。金額は日本企業が手がけるM&Aとして歴代2位にランクされる。SBGがアームを3.3兆円で買収したのは2016年9月。今回、SBGは約9000億円規模の差益を手にすることになる。

 ただ、「兆円」クラスの案件を除けば、取引金額は全体として小型化の傾向が続いている。10億円超のM&Aは7月13件、8月11件、9月12件と3カ月連続で10件以上となったが、コロナ禍以前の月間20件前後とはかけ離れている。

2020年7~9月M&A 取引金額上位10件
1 ソフトバンクグループ、英半導体設計大手アームを米エヌビディアに売却(4.2兆円)
2 セブン&アイ・ホールディングス、米コンビニ大手のスピードウェイを買収(2.2兆円)
3 ウットラムグループ(シンガポール)、日本ペイントホールディングスを子会社化(1.18兆円)
4 武田薬品工業、大衆薬子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンドに売却(2420億円)
5 キリン堂ホールディングス、MBOで株式を非公開化(338億円)
6 フェローテックホールディングス、半導体ウエハー製造の中国子会社を現地の地方政府などに譲渡(296億円)
7 ティーガイア、携帯電話販売の富士通パーソナルズを子会社化(287億円)
8 住友ベークライト、川澄化学工業をTOBで子会社化
9 アント・キャピタル・パートナーズ、ソフトブレーンをTOBで子会社化(232億円)
10 昭和産業、三井物産傘下のサンエイ糖化(愛知県知多市)を子会社化(150億円)

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