緊急事態宣言の解除を踏まえた本年定時株主総会の想定問答例
コーポレート・M&A
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.171」の「特集」の内容を元に編集したものです。
本年の株主総会では、新型コロナウイルス感染症への対応が引き続き最重要課題ではありますが、本年5月の各地における緊急事態宣言の解除を受け、事業活動の見通しや株主の認識も変化しています。そのため、本特集では緊急事態宣言の解除を受けた株主総会の想定問答例をご案内します。
なお、以下の想定問答の回答例は、あくまで一例です。ご利用に際しては、株主総会時点の状況や各社の状況に応じて適宜ご修正くださいますようお願いいたします。
Q1.新型コロナウイルス感染拡大も一旦収束してきたようだが、業績や事業への影響についての見通しはどうか。
【ポイント】
事業活動や業績への影響に関する質問は、東京証券取引所による2020年2月10日付の「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い」が求めているとおり、合理的な見積もりが可能となった時点で速やかに開示がなされていると思われますので、株主総会までに開示した内容に沿って回答するという基本方針は緊急事態宣言の解除前と変わりないと考えられます。今後さらに状況は変わる可能性がありますので、回答案は、現時点での見通しで将来の業績にコミットするような回答にならないようにすることがポイントです。
Q2.緊急事態宣言は解除されたが、従業員の在宅勤務や工場稼働停止、店舗休業なども解除したのか。今後、新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波も懸念される中で、社内での感染症対応やサプライチェーンについては今後どうしていくつもりなのか。
Q3. 本日の総会は緊急事態宣言期間中に開催が決められ、例年より小規模な会場での開催となり、会場に入れずに追い返されている株主もいた。緊急事態宣言はとっくに解除されており、現在の状況下であれば、そこまで厳格な対応は不要ではないか。 株主の権利を不当に制限しているのではないか。
【ポイント】
総会規模縮小や入場制限のほか、来場自粛要請、株主の来場に係る事前登録制の採用、議事の短縮、役員のリモート出席、お土産廃止など、新型コロナウイルス感染拡大防止のための総会運営全般についてもQ3と同様の質問が想定されますが、回答としてはQ3と同様の方向性(すなわち、「現時点の状況に鑑み、感染拡大防止のための合理的措置である」)での回答が考えられます。
また、自社HPでの事業報告の補足やFAQの掲載、事前質問受付など、株主への説明や質問に配慮した施策を行った場合には、それらにも触れることが考えられます。
なお、経済産業省が2020年5月22日付で公表した「株主の皆様へのお願い − 定時株主総会における感染拡大防止策について − 」1 もご参照ください。
Q4. 休業要請も解除され、県境をまたぐ移動の自粛要請も解除された。このような状況を踏まえると、総会を延期していれば多くの株主が出席することができたのではないか。
【ポイント】
一般社団法人日本経済団体連合会は2020年5月14日付で「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を公表し、「緊急事態宣言下はもとより、緊急事態宣言が終了した段階においても、新型コロナウイルス感染症の感染リスクが低減し、早期診断から重症化予防までの治療法の確立、ワクチンの開発などにより企業の関係者の健康と安全・安心を十分に確保できる段階に至るまでの間の事業活動に用いられるべきものである」としています。このガイドラインにおいて、株主総会については、「事前の議決権行使を促すことなどにより、来場者のない形での開催も検討する」とされています。
上記の回答案では、治療法の確立、ワクチンの開発などにより株主をはじめ関係者の安全・安心を十分確保できる段階に至っていないことから、感染症予防対策を行った上で、6月に開催することとした旨を説明しています。
Q5.本年は【本日、株主総会を開催するほかに継続会を行うとのことである/例年と異なり株主総会の開催日が延期された】が、そのような対応は本当に必要であったのか。緊急事態宣言も5月末には解除されたのであり、例年どおり6月総会を1回で実施するほうがよかったのではないか。
Q6.本年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて無配ということになっているが、まずは役員報酬を返上、減額すべきだったのではないか。株主還元よりも自分たちの報酬を優先しているのではないか。また、実際に株主総会の時期になってみれば緊急事態宣言は解除され、新型コロナウイルスの感染拡大も下火になっている。期末配当を無配にした分、中間配当を増額するような対応は考えていないのか。
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)
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6月開催の定時株主総会について、株主に対し、招集通知の内容をよく確認することとともに、以下の3点について理解を求めています。以下の③に関して、「株主総会の開催に当たって様々な感染拡大防止策を講じていますが、多数の株主が会場へ来場した場合、結果として3つの密(密閉・密集・密接)が生じてしまう懸念があります」と説明されています。
①株主総会が例年どおりの開催時期や方法で開催されないことがあること
②PCやスマートフォン等含む事前の議決権行使を積極的に利用すること
③来場株主の健康への影響が懸念されることから、株主総会への来場は原則控えること ↩︎