創業100年超、伝統の法律出版社とAIの出会いが変える「新常態」のリサーチのカタチPR
法務部
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法律に関する改正情報や判例にすぐにアクセスしたい、⾼度な検索スキルがなくとも必要な情報にたどり着きたい、各部署から⼊ってくる法的な照会に対して素早く回答したい——このような法務・総務担当者のニーズに応えるため、第一法規は2020年6月、弁護士をはじめとする専門家が執筆した会社の法律に関する約5,000件のQ&Aを収録したウェブデータベース「こんなときどうするネット 会社の法律Q&A」をリニューアルした。これにより検索性が大幅に向上したほか、新たなオプション機能も提供されるようになる。今回は、編集担当者・大原芳恵氏と開発担当者・小林瑞枝氏に、リニューアルの背景やポイント、今後の展望を聞いた。
ユーザーの声を吸い上げ、商品・サービスに反映
5,000件ものQ&Aなどを収載し、企業法務に携わる実務家からの信頼も厚いサービス、「こんなときどうするネット 会社の法律Q&A(以下、「本サービス」)」が、大幅にリニューアルされます。今回のリニューアルでは、どのようなポイントを重視したのでしょうか。
大原氏:
本サービスは、法務部門・総務部門のご担当者様が業務のなかで直面する「こんなときどうする?」という場面を、Q&A形式の解説等のコンテンツでサポートしている商品です。2012年9月からサービスを提供しています。今回のリニューアルにあたっては、改良の方向性を検討するために多くのお客様の声を聴くことを心がけました。また、当社は経営理念として「カスタマーファースト」を掲げており、「お客様から感謝されること」を目指して日々活動しています。その一環として、潜在層も含めたお客様の声を幅広く聴く活動を行っています。
当社は出版社として100年以上の歴史がありますので、専門家や企業法務の現場の方から信頼いただいている実感があります。ただし、著名な方の推薦文を帯に掲載すれば本が売れるような時代ではありません。そのなかで、お客様自身も感じていないような課題を探り、よい商品やサービスをいかに届けるか、日々意識するようにしています。
当社は直販形態を取っているため、お客様の声を直接吸い上げる力にも自信があります。営業や企画マーケティング部門に集まったお客様の声を吸い上げ、編集や開発にフィードバックする仕組みづくりにも取り組んできました。
事前に行ったユーザーアンケートでは、本サービスを新規の契約書作成時に参考にしていたり、法的な照会や疑問、法的制度に関する一次調査の場面で役立てていたりといった声があがっていたそうですね。
大原氏:
そうですね。本サービスの利用ニーズとして最も大きなものは、一次調査です。ほかには、たとえば、新しくメンバーが入ってきたり、法務の分野に詳しくない方が担当されていたりする場合、あるいは、業務の範囲が非常に広い場合などに、このサービスをお守りのような形でご利用いただいているという声も多くあります。ベテランの方から新しくお仕事に携わられる方まで、いろいろな使い方があることは実感していましたので、様々な立場のお客様に対応する方法は、今回のリニューアルで特に意識した点です。
ユーザーから多く寄せられていた要望や課題には、どのようなものがあったのでしょうか。
大原氏:
「検索しても必要な情報にたどり着けない」という声をいただくことがありました。検索性に関する課題は、我々も強く実感していました。
小林氏:
目的のコンテンツが収録されているはずなのに、検索結果が0件となってしまうようなデジタルサービスでは、次回も使おうという気持ちを失ってしまいますよね。編集をはじめとする制作側としても、せっかく提供しているコンテンツが日の目を見ない状態となっているのは非常に残念なことですし、双方にとって重要な課題だと感じていました。
検索性が大幅に向上した新しい「こんなときどうするネット 会社の法律Q&A」
それでは、本サービスのリニューアルの最大のポイントを教えてください。
大原氏:
開発の一番のポイントは「私たちが持っているコンテンツを、いかにして必要なときに必要なお客様に見ていただくか」というところにありました。こうした思いを込めた機能を、複数の技術を活用して提供しています。たとえば、お客様による話し言葉のような自然文の質問に対して適切なコンテンツをお答えするAIチャットボット機能や、類似コンテンツのレコメンド機能などを新たに追加しています。
従来のサービスでは、検索に用いる用語がコンテンツ内の用語と完全に一致しなければ、適切なコンテンツがヒットしないという課題がありました。私たちのコンテンツは、法律に準拠している内容が多く、良くも悪くも“すごく正確”なんです。法律そのものの文言とは異なる文言で検索してしまった場合、たとえば、「育児休業」を「育児休暇」と検索すると、ヒットするコンテンツの数が極端に少なくなってしまうといった現象が起こっていました。今回のリニューアルによって、お客様からのフィードバックをいただきながら、こうした課題を改善していけるベースが整いました。
自然文で検索すると、AIが5,000件を超える記事のなかから適した記事をピックアップしてくれる
企業法務の現場には、Q&Aコンテンツでポイントをつかんだうえで省庁のガイドラインなどを確認する、といった業務の流れもあります。
大原氏:
その通りです。法務や総務の実務に携わる方が一次情報をリサーチされる際には、各省庁の公式サイトなどを併せてご覧になっています。本サービスでは、サービス内の検索窓から官公庁のサイト内のコンテンツを同時検索できる機能を付加しています。また、特定のコンテンツを期間限定で社内でも閲覧できるメールでの周知機能(有料)もご用意しています。
歴史ある出版社が推し進めるデジタルトランスフォーメーション
創業100年を超える伝統的な法律出版社とAIという組み合わせは新鮮です。これまで貴社では、どのような姿勢でデジタルに取り組んできたのでしょうか。
小林氏:
当社で扱うコンテンツは主に、法令などのいわゆる一次情報と、本サービスのような著作権が発生する二次情報があります。今回のリニューアルも含めて、一次情報に関しては、AI(機械学習)の学習対象としてシステムに取り込むことができないか、という観点で、日々試行錯誤を繰り返しています。
AIをはじめ、最新テクノロジーの知見や知識は常に追いかけています。ただし、どれだけ優れた技術であっても、それを使うのは私たちのような人や企業です。また、新しい技術でも使いこなせなければ宝の持ち腐れになってしまいますよね。開発体制まで考慮したうえで必要な取捨選択を繰り返していくことが必要だと考えています。
今回のリニューアルにあたり、開発面では特にどのような点に注力されたのでしょうか。
小林氏:
お客様の使いやすさを追求したという点はこれまで大原が説明したとおりです。それに加えて私たち開発側には、「編集や制作サイドの負担を減らす」というミッションがありました。たとえば、本サービスの編集では、関連するQ&Aや近しいQ&A同士をピックアップする作業が発生します。従来であれば編集担当者が目視と手作業で個別に確認したうえで設定を行っていたため、かなり膨大な作業量になっていました。このような編集業務の一部を自動化したことで、作業時間を大幅に減らすことができました。
開発の過程で最も苦労されたことは何ですか。
小林氏:
やはり検索機能ですね。私はシステムを基準に物事を考えてしまう人間ですので、実際にお客様がどのように検索を行われるか、どのような入力ワードが用いられるかを想像することに苦労しました。
大原氏:
開発に集中していると見えなくなってしまうことも多いですよね。そのため、検索機能に関しては、普段は本サービスに手を触れていない他の編集部のメンバーたちの協力も得ながら調整を行いました。複数の編集メンバーから検索性に関する指摘を受けて、開発の最終段階では、一部大きな画面変更を実施しました。
激変の時代の法律コンテンツの役割
今後、本サービスをどのようなサービスに育てていきたいですか。
大原氏:
企業法務・総務担当の方々に向けて当社がこれまで提供してきた加除式書籍も含め、本サービスは基幹となるコンテンツを集約したサービスになっています。今回のリニューアルは1つの通過点です。まだ改善できていない点も把握していますので、これからもお客様の声を聴きながら改善を重ね、より良いサービスに育てていきたいと考えています。
小林氏:
実際に利用されたお客様の感想やアクセスログを解析しながら、さらなる改善に努めていきたいですね。特に、検索機能は使う人によって満足度が大きく違ってきますので、どこをターゲットに置くかを見極めながら、今後も開発を進めていきたいと思っています。
AIをはじめとするテクノロジーが普及していくなか、ユーザーに求められる法律コンテンツの在り方は今後どのように変わっていくとお考えでしょうか。
大原氏:
編集者の立場からすると、テクノロジーは非常に重要なポイントです。電子化されていなければ、そもそも「検索性を高める」という議論すら成立しないのかもしれません。一方で、法律情報や法律そのものに対するお客様のニーズは、今後変わっていくところと変わらないところの両方があると思います。特に本サービスは、企業法務や総務の実務家向けのサービスですから、お客様がどういった形で法律を業務に使うのか、どういったところで必要になるのかといった点に注目して、お客様の声を聴きながらコンテンツを発信して行きたいですね。信頼できる法関連情報をお客様に提供するという私たちの使命は変わらないところですが、提供のあり方には工夫や試行錯誤が求められていると考えています。
小林氏:
出版社としては、自社のコンテンツをどうすれば有効に使えるかという視点で仕組みを構築していくことが、今後も大切だと考えています。テクノロジー自体、日々進化していますので、常に最新の情報を追いかけながら、当社の目的に最適なものを選択していくという姿勢は、今後も変わらないと思います。
コロナ禍によって、ビジネス環境が激変するなかで、法律メディアが果たすべき役割をどのように捉えていますか。
小林氏:
今回の新型コロナウイルスの問題では、テレワークの普及が急激に進みましたね。それに合わせて、関連する法律も今後どんどん改正されていくことになると思います。そういったタイムリーな情報を迅速かつ正確に、お客様にわかりやすく届けることが役割だと考えています。
このような機会がなければ、なかなか踏み出せなかった企業も多かったと思います。本当に大変な状況ではありますが、これを機に業務のやり方やそれに関わるシステムの改修が進んでいくと良いのではないかと感じています。
激変する時代のなかで、コンテンツを届ける側の役割は、むしろ明確になってきていると感じています。
大原氏:
おっしゃるとおりですね。たとえば、紙の単行本を想定した編集と本サービスのような電子媒体を前提とした編集とでは、アプローチは異なります。それぞれのコンテンツをどのような形で発信すべきかについて知恵を絞ることは当然ですが、誰もが情報発信を簡単にできる時代において、編集者・出版社が介在するサービスにどのような付加価値が求められているかについても、たえずアンテナを張っておく必要があるのだと思います。
(文:周藤 瞳美、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

サービス詳細
- サービス名:『こんなときどうするネット 会社の法律Q&A』
- リリース日:2020年6月30日
- サービス運営元:第一法規株式会社
- 『こんなときどうするネット 会社の法律Q&A』の詳細はこちら