法務担当者のリモートワークに関するアンケート リモートワークを実施した法務担当者の89%が「Withコロナの法務は在宅勤務で対応可能」と回答

法務部

目次

  1. 在宅勤務実施率86%、そのうち89%が「法務は在宅勤務で対応可能」と回答
  2. テレワーク導入に伴う社内規程整備が急務に
  3. 在宅勤務への不安は「コニュニケーション」と「ハンコ」
  4. 「不測」の在宅勤務で進む働き方改革
  5. 在宅勤務を阻んだ「5つの障害」
  6. 「新常態」と法務の可能性

新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」)の感染拡大を受け、「人との接触を8割減らす」を目標に掲げる新型コロナ対策の柱に据えられたリモートワーク。「新常態」の働き方に法務パーソンたちはどの程度適応できたのでしょうか。

BUSINESS LAWYERSは、2020年4月下旬から5月上旬にかけて、企業・団体の法務パーソンを対象に「法務担当者のリモートワークに関するアンケート」を実施。新型コロナの流行が深刻化した4月下旬から5月上旬にかけての法務パーソン328人の在宅勤務の取組状況をレポートします。

【アンケートの概要】
実施期間:4月24日〜5月7日
調査手法:インターネット
調査内容:法務担当者のリモートワーク実施状況等
対象:法務担当者
有効回答者数:328人

在宅勤務実施率86%、そのうち89%が「法務は在宅勤務で対応可能」と回答

4月7日に1都7県に発令された緊急事態宣言が、4月16日に対象地域を全国へと拡大。政府・自治体から不要不急の外出の自粛と在宅勤務への協力が呼びかけられるなか、在宅で業務にあたった法務パーソンは86%に上り、在宅勤務を実施していないと答えた14%を大きく上回りました。

あなたは現在、在宅勤務をしていますか?

在宅勤務を実施した法務パーソンのうち、「法務業務は在宅勤務で対応可能」と答えた割合は、89%に達しました(どちらかと言えば対応可能:54%/十分に対応可能:35%)。一方、在宅勤務に取り組んだ結果、この勤務形態になじめないと感じた法務パーソンは、全体の2%にとどまっています(どちらかと言えば対応が難しい:2%/まったく対応できない:0%)。

かねてから「リモートワークとの相性は悪くない」という声が聞かれてきた法務業務ですが、その仮説が裏付けられる結果となりました。

法務部門の業務は在宅勤務でも対応できると思いますか?

テレワーク導入に伴う社内規程整備が急務に

上記1で述べたとおり、在宅勤務をしていないと答えた法務パーソンは、全体の14%にとどまりました。在宅勤務をしていない理由として最も多くあげられたのは、「在宅勤務ではできない業務がある」(64%)というものでした(下記5参照)。

その他の要因としては、セキュリティ上の問題(38%)や在宅勤務を行うための社内規定が未整備(34%)といった理由が続きました。これらの点は必ずしも法務業務に限った課題とはいえないものの、社内ポリシーやその整備状況が従業員の在宅勤務を阻む障害となっている状況が読み取れます。

在宅勤務をしていない理由として、当てはまるものをあげてください

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、対応の重要度・緊急度が高まっている業務についてたずねた質問でも、「テレワーク導入に伴う社内規程等の整備」(39%)とする回答が最多となりました。

また、「契約書の電子化」(33%)をあげた回答者が多く見られました。「押印のために出社しなくてもよくなるように承認プロセスや契約締結手続きの電子化が急務」(課長クラス)という意見が上がったように、Withコロナ時代においてテレワーク導入のための社内規程整備と契約書の電子化は、スピーディかつ一体的な対応が求められるようです。

そのほかには、「不可抗力免責関係」(31%)、「株主総会の新型コロナウイルス感染症対策」(27%)、「休業・解雇関係」(24%)などが高い割合を示しました。

新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、対応対応の重要度・緊急度が高まっている業務として、当てはまるものをあげてください

在宅勤務への不安は「コニュニケーション」と「ハンコ」

いざ在宅勤務をスタートするにあたり、法務パーソンたちはどのような不安を抱えていたのでしょうか。在宅勤務を実施した281人の回答結果を見てみましょう。

在宅勤務を始める以前に、あなたが不安に感じていたことについて、当てはまるものをあげてください

「社内のコミュニケーション」という回答が7割に迫ったのに対し、「社外とのコニュニケーション」をあげた割合は、約3割にとどまりました。

社内のコミュニケーションとならんで、大きな不安要素と捉えられていたのが、「契約書等への押印対応」(65%)でした。また、「書籍・雑誌などのリサーチ環境」をあげる声も多く(43%)、リーガルリサーチ業務に対して不安を抱えていた法務パーソンが多かった様子が読み取れます。

それでは、法務パーソンが実際に感じた、在宅勤務の不満要因を見ていきます。やはりここでも主役は “ハンコ” 。「押印文化を解消できれば問題なくリモートワークできると思う」(執行役員/局長/本部長)という意見に代表されるように、約半数の法務パーソンが「契約書等書面の押印プロセスへの対応」(48%)に不満を抱える結果となりました。リモート環境で効率的な契約管理を実現するうえで、押印問題への対応は早急にクリアすべき課題の1つと言えそうです。

「書籍・雑誌などへのアクセスができない」という回答は38%に上りました。「紙文書からの脱出は必須」(専門職)など、資料へのアクセスに関する不満はやはり根強く、多くの法務パーソンが在宅勤務開始以前に抱えていた不安を反映する格好となりました。

「チャットツールやウェブ会議システム等を利用したコミュニケーション面」については、3人に1人が何らかのストレスを感じていました。これは裏を返せば、3人に2人の法務パーソンが新たなコニュニケーション手段に順応したと見ることもできます。

しかし、「業務効率が上がる半面、営業担当者とのコミュニケーションが難しくなるケースが散見される」(課長クラス)など、部門をまたいだ意思疎通の課題が浮き彫りになった点は注意を要します。

また、「実務にあたり、すべてモニター画面越しに書類を読むのがきつい。チャットとメールとで忙しさが増した感じがする」(部長クラス)というように、リモート環境での意思決定に要する負荷をいかに緩和していくかは、今後の業務運営のポイントの1つになるかもしれません。

そのほか、「ある程度の能力がある担当者であれば、特に問題なく対応できるが、新人社員のOJTについては対応が難しいと感じている」(課長クラス)という意見も見られました。Withコロナの人材育成のあり方については、大いに工夫と検討の余地がありそうです。

在宅勤務を進めるなかで、どのような面で課題やストレスを感じていますか?

「不測」の在宅勤務で進む働き方改革

在宅勤務に取り組んだ法務パーソンは、どのような点にメリットを感じたのでしょうか。最も目立ったのは、「通勤がなくなったことによる疲労やストレスの緩和」(79%)という心身面への影響に関する回答でした。また、半数以上の法務パーソンが「自分のペースで仕事が進めやすくなった」(52%)と答えたように、2人に1人が業務面でのポジティブな効果を実感したようです。さらに、「家族との時間や趣味等に充てる時間が増えた」という回答も38%に上りました。

在宅勤務が法務業務に与える中長期的な影響については今後も注視する必要があるものの、 “痛勤” からの解放によって業務にゆとりが生まれ、それがプライベートの充実につながるという好循環が生まれたことは間違いないようです。

在宅勤務を行ってみて、どのようなメリットがありましたか?

法務パーソンが前向きに在宅勤務に取り組んでいた様子は、自由記述形式の回答からもうかがえます。一部を抜粋して紹介します。

法務パーソンが感じた在宅勤務のメリット(抜粋)
  • 情報収集に時間を充てられるようになった(一般社員・職員)
  • 調べものに集中できる(専門職)
  • BCPの観点でいざ大災害が発生した際の訓練にもなる(部長クラス)
  • 非効率な打ち合わせや会議が減った(一般社員・職員)
  • 勉強できる時間が増えた(一般社員・職員)
  • ウェブでの社内勉強会が予想以上の盛況。社員が講師役になる講座が多数企画され、部門を超えた多数の参加があるためリアルで実施するのとは違い、縦割りを打破できる可能性があることに気づいた(係長・主任クラス)
  • 妊娠初期だったので体調不良でもある程度の仕事ができた(一般社員・職員)
  • 昼ご飯を自炊するようになり、節約できた(係長・主任クラス)
  • 平日に宅配便を受け取ることができる(係長・主任クラス)
  • 地元のお店や公園など地域に密着した生活ができる。出勤していると帰る頃には閉まっている個人商店が多い(係長・主任クラス)

在宅勤務を阻んだ「5つの障害」

在宅勤務を阻む最大要因となった「在宅ではできない業務」とは、どのような業務でしょうか。自由記述形式の回答を見ると、大きく分けて次の5つの障害が浮かび上がってきました。

  1. 押印
  2. 社内手続
  3. 資料
  4. セキュリティ
  5. コミュニケーション

最も目立ったのは、押印、契約書や請求書の処理など、社内手続に関する業務。電子契約の流れが加速する昨今、押印に代表される管理業務のデジタル化は、業務全体のスリムアップを図るための第一歩と言えそうです。

社内手続に絞って見てみると、請求書の処理や人事労務関連業務への対応のために出社せざるを得ないという回答が多数見られました。法務パーソンが経理や人事といった管理業務を幅広く兼務していること、法務業務が総務部門の一部に組み込まれている状況などを見て取ることができます。

そのほか、紙で保管されている資料を持ち帰れないといった、資料への物理的なアクセスの問題、個人情報をはじめとする社外秘資料の取扱いポリシー、ネットワーク・セキュリティの問題、経営層や他部門とのコニュニケーションなどが、在宅勤務を実施できない理由としてあげられました。

在宅勤務未実施の法務パーソンの「在宅ではできない業務」(抜粋)
  • 押印
  • 契約審査、契約管理、契約書のファイリング
  • 契約交渉担当者への契約内容の聞き取り
  • 請求書の処理、支払い管理
  • 確認資料を持ち帰れないために処理できない事務作業
  • 勤怠管理、給与事務
  • 社内ネットワークへのアクセスが必要な業務
  • 企業情報・個人情報の取扱い
  • 経営層・他部門とのコミュニケーション
  • 現場確認

そのほか、「対策本部長を兼ねている」(取締役クラス)、「部下に在宅勤務をさせるため」(課長クラス)といった役職者に特有の事情や、「業務委託や派遣社員などを在宅勤務させられないため」(一般社員・職員)など、雇用形態の違いから生じたギャップを埋めるために出社を余儀なくされるケースが一定数あることがわかりました。

「新常態」と法務の可能性

これまで、東京五輪・パラリンピック開催期間中の交通混乱の回避や大規模災害時の事業継続を念頭に置く大企業を中心に取組みが進められてきた日本のリモートワーク。新型コロナ問題を受けて、準備より取組みが先行するという不測の形で広まったものの、アンケート結果からは、ほとんどの法務パーソンがスムーズな適応を見せたことがわかりました。

しかし、押印業務や資料へのアクセスの問題に対しては、電子化による環境整備を求める意見が大半を占めています。この課題は、在宅勤務を実施しなかった企業にも共通するものです。

新型コロナの第二波、第三波が想定されるなか、リモートワークへの対応は、事業継続の視点に加えて、従業員の安全確保のための最重要課題の1つと言えます。

「ルール・環境の整備には、全社的な協力が必要」(部長クラス)となります。リハーサルなしの “ぶっつけ本番” で試される「新常態」への適応力。在宅勤務にいち早く順応した法務部門には、水先案内人としての役割が強く求められているのかもしれません。

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