「訴訟に強い事務所を作りたい」オーダーメイドでビジネスに寄り添う少数精鋭組織 - 三村小松山縣 法律事務所

法務部

目次

  1. 「訴訟に強く、小回りがきく事務所を作りたい」
  2. 依頼者のチームメンバーとして「攻めの予防手法」を提案

2019年8月に新設された三村小松法律事務所は、裁判官として30年以上の実務経験がある三村 量一弁護士と、これまで多くの訴訟案件を経験してきた小松 隼也弁護士が「訴訟に強い事務所を作りたい」という想いで立ち上げた事務所だ(編注:2020年4月1日よりマーベリック法律事務所と統合し三村小松山縣 法律事務所へ名称変更)。また、東京大学先端科学技術研究センターの玉井 克哉教授が所属していることも、同事務所の特徴だろう。三村弁護士、小松弁護士、玉井教授の3名に、設立背景や注力分野、今後の展望について聞いた。

「訴訟に強く、小回りがきく事務所を作りたい」

まずは、事務所設立の経緯について教えてください。

三村弁護士:
迅速かつオーダーメイドで、それぞれの事件に適した形で訴訟を提起し(あるいは応訴して)、お客さまのニーズに応える。そういった小回りがきく事務所を作りたいと思い、設立しました。私の30年間の裁判官経験のうち、17年は知財関係の事案を手掛けてきました。裁判官として、知財案件を1,000件以上扱っています。それだけの数をこなすことで、知財案件において的確な見通しをつけることができるようになりました。

また、知財高裁、東京地裁・大阪地裁の知財部などには元同僚や後輩の裁判官も少なくないので、個別の法廷でどのように訴訟追行をすべきか、そのためにどのような準備をしておくべきかといったこともわかります。米国などでは、個別の裁判所の性質を踏まえた対応は当たり前ですが、日本だと訴訟に慣れている弁護士でなければなかなか難しいと思います。

小松弁護士:
私は、長島・大野・常松法律事務所の訴訟チームにおいて、大規模案件から刑事事件の裁判員裁判の主任弁護人まで務めた経験があります。三村弁護士とは同事務所で10年間一緒に仕事をして、オーダーメイドの対応や訴訟の進め方を横で学んできたので、全員が訴訟に強い、20人くらいの小回りがきく事務所を作りたいという思いは、同じくずっと抱えていました。

訴訟だけやるのではなく、訴訟に強い・経験豊富な弁護士が行う契約交渉、証拠評価を捉えたコントラクトマネジメント、エビデンスマネジメントを早い段階で企業に提供していきたいという思いも強いです。そういう事務所は、少なくとも自分が知る限りでは、これまであまりなかったと思います。

玉井先生が参画されていることも貴所の特徴だと思います。玉井先生は、設立にあたってどのような想いを持たれていますか。

玉井氏:
私は法学者で、ずっと大学で仕事をしてきたわけです。法学者の仕事というのは、「ルールメイキング」への貢献なんですね。裁判所を説得して判例を作る、論文を書いて立法者に働きかける、というのが法学者の役割です。もちろん、学者の仕事としては、目の前のルールを作ること以外に基礎を固める仕事もありますが、基本的に法学者の仕事は、世の中が合理的になるようなルールを作ることへの貢献だと思います。それをずっと考えてきた研究者として、事務所に参画することに意味があるかも、と考えたわけです。

特に私の周りには先端科学技術に関わる理工系の研究者が多く、技術の動向を踏まえた先見性のある提言が重視されます。かなり基礎的なことをやっている研究者も同僚にはいますが、世の中を変えるような技術を磨いている同僚もいる。それと比較すると、これまでのルール作りのあり方は、どうしても後追いになることが多かったのですね。裁判というのは、基本は後追いです。現在の最先端の技術が特許になるのは5年後、訴訟になるのがその3年後、裁判になり、最高裁まで行って確定するのがさらに3年後、といった調子ですからね。歯がゆい思いをすることがあります。

法学者としては今までの研究環境は大変恵まれていたのですが、そういう面からすると、さらにこのような事務所に関わるのは、研究者としてたいへんありがたい。3年後、5年後、10年後には公開情報にはなっているかもしれないが、現時点では世の中には知られていない。そういう最も先端的な案件に触れることができ、事案に応じた適切な解決策を提案することができる。既存のルールではなかなか座りのよい解決がしにくい、しかし、時代を先取りした新しいルールを提供していくにはちょうどいい——そういうケースが出てくるのではないかと期待しています。

お話を伺っていると非常によい雰囲気なのですが、お互いにどのような印象をお持ちですか。

三村弁護士:
小松弁護士は広い範囲のクライアントから信頼を得る能力がとても高いです。上の世代の方々からの信頼も大変厚いですね。

玉井氏:
あらゆる方向に活動していて関心が広いです。私と興味のある領域が重なることもありますね。ある程度、後輩の弁護士にも業務を任せていけば、もっともっと、いろいろな仕事ができるんじゃないかな。小松さんは日本社会だとまだ若いので、必要なときはおじさんが出ていけたらよいのでは。三村さんにそういうアドバイスをするのが、この事務所における私の役割かな、と(笑)。

小松弁護士:
大変助かります。三村弁護士や玉井先生が一緒にいろいろやってくださることは、すごく嬉しいです。人柄も優しくて気さくですし。

三村弁護士:
気さくなんでしょうか。世間では、お堅い裁判官と思われているかもしれませんが、それは違います(笑)。

小松弁護士:
三村弁護士と玉井先生はアソシエイトとの関係性もすごくフラットです。一緒の大部屋にいて質問も聞いてくださるし、気さくにアドバイスもいただける。空気がすごくいいんですよね。三村さんはずっと歩き回って、お菓子を配っています。

三村弁護士:
大阪のおばちゃんの飴ちゃんと一緒です。

玉井氏:
みんな、虫歯になるなって思いながら嫌々食べていたりして(笑)。

小松弁護士:
海老澤 美幸弁護士はすごく喜んでいます(笑)。

三村小松法律事務所 三村 量一弁護士

三村小松山縣 法律事務所 三村 量一弁護士

依頼者のチームメンバーとして「攻めの予防手法」を提案

既存のリーガルサービスにおいて足りないと感じていることや、これからの弁護士に求められるビジョンについてのお考えがありましたら、教えてください。

三村弁護士:
私は裁判官として契約書をめぐって紛争になった事件をいくつも見ています。力関係的に仕方がない場合もありますが、紛争になる可能性をまったく考えずに契約書を結んだためにトラブルになっているものも多いです。お客様に対し、「ダメ元でこちら側に有利になるよう書いておく条項」「不利だけれど力関係上、仕方なく入れている条項」「紛争になったときのために書いておく条項」などを説明したうえで交渉に挑む、あるいはお客様に提示することは必要だと思っています。

玉井氏:
「訴訟に強い」イコール「非常事態が起こったときに火消しを頼む」といった印象が強いかもしれませんが、「火がつかないようにする」「防火性のカーテンにする」あるいは「スプリンクラーや火災報知器をつける」ということが本質だと思います。さきほど申したこととの関連でいうと、学者が法的紛争案件に触れるのは、どうしても火がついた後なんですね。特に、判例になったりする案件は。しかし、ちゃんと契約しておけば紛争案件にならずに終わってしまうかもしれない。一般に「知財戦略」と言われるものですが、それを提案できる、その現場に立ち会えるというのは、研究者としてはたいへんありがたいことです。

小松弁護士:
たしかに「攻めの予防手法」といった点は重要視しています。三村弁護士と玉井先生と一緒に仕事をしていると、企業に「そこまでやってくださるんですね」と言われることがあるくらいです。

特許権を取得するか、ノウハウとして秘匿にするかといった知財戦略の能動的な提案も可能になりました。訴訟になったトラブルなどほかの事例を山ほど見ている2人がいるので、ビジネスとしての発展性まで含めてアドバイスできるようになったことはすごく大きいですし、実際に評判がいいですね。「戦略も一緒に練られるチームメンバーとしての法律家はいままでいなかった」と言ってくれる経営者の方もいます。

玉井先生が先に申し上げた「ルールメイキング」も、この事務所でやりたいことの1つです。ロビイングやルールメイキングまで考えている弁護士はほかにももちろんいらっしゃいますが、産業全体と話をして関係性を築いていける人というのは、まだほとんどいないのではないでしょうか。そこは、玉井先生が参画している事務所ならではの強みですし、これまでになかったことだと思います。

事務所の強みというお話がありましたが、訴訟や知財のほか、ファッションやアートといった分野にも注力されているそうですね。

小松弁護士:
そうですね。私は実際にファッションとアートの案件が多く、海老澤もファッションに詳しいです。富山(編集部注:富山 暁子弁護士)は金融庁の出向経験者で、コーポレートガバナンスや金融系の案件を扱っています。そこに、三村弁護士・玉井先生の知識・経験をミックスさせていくことで、所属弁護士1人ひとりにとっても事務所にとっても強みになります。今後も、基礎体力・基礎知識をしっかりと身につけたうえで、それぞれの専門分野で力を発揮できる事務所にしていきたいですね。

大手法律事務所との違いも多いのでしょうか。

三村弁護士:
大手事務所では、中小企業やベンチャーの立ち上げに寄り添うといったようなことは、正直やっている余裕がありません。

玉井氏:
ベンチャーの案件は、大手だとすごくやりにくいと思いますよ。ここ5年くらい、最優秀な東大生がベンチャーを起業するという現象が顕著なのですが、大手法律事務所では、そのお手伝いをするのはやりにくいでしょう。

小松弁護士:
私の経験から見ても、一番やりにくかったです。

玉井氏:
将来的に競合となり得る既存事業者がクライアントにいると、ものすごくやりにくいですよね。ひょっとするとマーケットを丸々潰してしまう発明かもしれませんから。今の技術がどういう方向に行くかということはベンチャー企業自身にもわからないので、大手事務所としてはやりにくいでしょう。

利益相反の問題が出てきて、案件が取りづらいということですね。

玉井氏:
はい。尖ったことをやりたい弁護士にとっては、小さい事務所のほうがよいかもしれません。しかし、教え子を見ていても、これまでは尖ったことをやりたい人の受け皿は多くなかった気がします。工学系と比べて、法律の分野はその点でも世の中に後れがちですね。

小松弁護士:
尖った人たちがいる小さい事務所に三村弁護士と玉井先生がいることの強みはすごくあると感じますね。

三村小松法律事務所 小松 隼也弁護士

三村小松山縣 法律事務所 小松 隼也弁護士

今後、クライアントの方々にはどのようなサービスを提供していきたいと考えていますか。

三村弁護士:
長島・大野・常松法律事務所で10年働くなかでいろいろなお客様がいると感じました。当時はほとんど企業の法務部や知財部に関する案件だったのですが、時々、個人の事件や著作権に関する案件も扱いました。お客様によっては、弁護士が行う作業とお客さま自身が行う作業の仕分けがわからないという方もいらっしゃいました。そうした方々に対しても柔軟に対応していく能力は、ある程度持っているつもりです。そういう意味でも、本当にオーダーメイドでサービスを提供していきたいと考えています。

小松弁護士:
我々の事務所は、訴訟に強いという印象から「訴訟の代理人の事務所」だと思っている方が多いです。もちろん、そこも強い事務所にしていきたいですが、我々をビジネスのパートナーとして見ていただいたうえで一緒に取り組む仕事は、知識や経験、専門性をより生かすことができます。そういう考え方で依頼してくださる方との仕事は、我々も楽しいです。そうしたクライアントの方々との関係性は積極的に作っていきたいです。

玉井氏:
日本の企業は、知財を経営戦略に生かす発想がまだまだ少ない気がします。たとえば、先日「日本はものの値段が安くなった」という報道がありましたが 1、知財に関して言えば、実は前々から日本が一番安いんです。有体物の値段よりも、知財の値段の内外価格差は激しい。というのも、モノ作りがビジネスの中心で、特許訴訟を行って損害賠償を獲得するという発想が日本の企業にあまりなかったためです。

10年以上前に包括クロスライセンス契約の実務について論文を書いたことがあるのですが、それは実に見事なものです。そうした契約は日本のモノ作りを支えてきました。ただ、技術単体で儲けようという発想は薄い。もちろん、大企業だからいかんということではありません。たとえばドローンのベンチャーをやっている若い人に聴くと、モノ作りは大企業に任せて、われわれは中国にない技術を開発するというのです。そういう若い人に必要なアドバイスを提供するのが、日本の法務サービスには欠けている、そのために日本の知財が安くなっていると感じます。

特許を取得して米国で訴訟を行えば、実は何億ドルになるかもしれないというケースが日本社会にはゴロゴロあるのかもしれない。モノ作り中心で行くとしても、知財を活用すれば北米市場で同業他社を牽制できるかもしれない。そういう戦略を日本企業で建てられるのは先進的なところに限られているように思うので、そうした知財戦略のアドバイスまでできればと考えています。

日本企業の海外案件にはどのようなサービスを提供されますか。

玉井氏:
特に知財の場合、日本の訴訟で勝っても海外で負けては意味がないので、国外に目を向けないといけません。また、日本の裁判官は知財について、ものすごく国際化を意識しています。「こんな判断は日本だけ、恥ずかしいですよ」といった論文で日本の裁判官を説得するという手法を法学者はよく用いるのです。しかし、海外に打って出るという発想の企業を直接お手伝いしていれば、もっと先見性のある提言ができますね。

三村弁護士:
私どもはアメリカやドイツなどの外国の弁護士事務所とも関わりがあるので、一緒に案件に取り組むことが可能です。海外の事務所ともスピーディにコミュニケーションを取れるので、案件の初期段階で、費用をかけて対応しなければならない案件かどうか、すぐに確認できます。

玉井氏:
国外でも並行して訴訟をやることになったときに、日本で海外の事務所をグリップできることは費用面でもメリットが大きいと思います。

顧問のランドール・レーダー判事とも、アメリカにおける訴訟の負担を減らしたいと話しています。模擬陪審にビデオを繋いで、こちら側は日本語で説明することで、会社の人が出張する時間やコストを削減する、といったことです。そういったことも、単に書斎にこもって研究をしていたのではできないことです。

国際的な紛争で、日本企業が不利なことは多いのでしょうか。

玉井氏:
日本の場合は法律を戦略的に使うという発想がまだ乏しいことが多いので、不利になってしまうことは多いです。ベンチャー企業や、これから新しい市場を開拓しようという企業。あるいは、技術革新によってマーケットが大きく変わるところに、これまでの研究を生かしてアドバイスしていきたいですね。

最後に、今後の貴所の展望についてお聞かせください。

小松弁護士:
三村弁護士とは、20名くらいの精鋭揃いの組織にしたいと話しています。

三村弁護士:
拡大しすぎてしまうと、大きいことによるデメリットが出てくるので、半分以上はパートナーで、自分1人でも訴訟ができるという自信のある人たちが集まっているようなチームを作っていきたいと思っています。好奇心旺盛な面白い人と一緒に働きたいですね。

三村小松法律事務所、東京大学先端科学技術研究センター 玉井 克哉教授

三村小松山縣 法律事務所、東京大学先端科学技術研究センター 玉井 克哉教授

(文:周藤 瞳美、写真:弘田 充、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)


  1. 日本経済新聞「安いニッポン(上)価格が映す日本の停滞」(2019年12月10日、2020年2月3日最終閲覧) ↩︎

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