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リーガルテックの活用を通して考える法務業務の本質PR 「Legal Innovation Conference ~リーガルテックの現在地~」講演レポート

法務部

目次

  1. 法務に求められる機能は「クリエーション」「ナビゲーション」「ガーディアン」
  2. リーガルテック導入時は「変わらないもの」「変わっていくもの」を見極める

ビジネスのグローバル化、テクノロジーの進歩による産業構造の変化などにより、法務を取り巻く環境が大きな転換点を迎えています。

そうしたなか、近年注目されているのが、法務業務を代替・手助けするテクノロジー「リーガルテック」です。日本でも、契約書のレビュー・管理や翻訳、契約締結などの領域を中心に多くのスタートアップやサービスが生まれてきており、テクノロジーの活用によって法務業務をいかに効率化していくかは、もはや避けては通れない喫緊の課題です。また、企業経営においてコンプライアンスやガバナンスの重要性が高まるなか、事業部門とのコミュニケーション円滑化やナレッジ共有の促進の観点からも、テクノロジーの活用は必須でしょう。

2019年11月29日にBUSINESS LAWYERSが開催したイベント「Legal Innovation Conference ~リーガルテックの現在地~」では、リーガルテック活用企業による講演や、ITサービスの提供企業による説明・展示を通して、テクノロジーがもたらす法務の未来像を参加者とともに考えました。当日はTwitterのハッシュタグ「#リーガルテックの現在地」でも多くの感想が投稿されるなど盛り上がりを見せた本イベントの様子をダイジェストでお届けします。

法務に求められる機能は「クリエーション」「ナビゲーション」「ガーディアン」

イベント冒頭では、弁護士ドットコム株式会社の取締役 田上嘉一が登壇。「日本では、リーガルテックという言葉だけが先行しておりその実態はよくわからない状況にある。今回のイベントでは、現在どのようなリーガルテックサービスがあり、それぞれがどのような効果をあげているか、各登壇者の立場から紹介していく」と今回のイベントの趣旨を語りました。

弁護士ドットコム株式会社 取締役 田上嘉一

弁護士ドットコム株式会社 取締役 田上嘉一

次に登壇したのは、経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室 室長 桝口豊氏。2019年11月19日に公開された、経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」の内容を中心に、これからの法務機能のあり方について解説しました。

2018年4月に公開された同報告書の前版 1 で記した、「企業のガーディアンとしての機能」と「ビジネスのパートナーとしての機能」という法務機能の定義をアップデートしたと桝口氏は説明。

新たに示されたのは、事業が踏み込める領域を広げる、またはルール自体を新たに構築・変更することでビジネスの枠を広げる「クリエーション」の機能、その枠内でのビジネスの最大化を図る「ナビゲーション」の機能、枠外の行為をさせない「ガーディアン」の機能です。

桝口氏は、これら3つを一体的かつ循環的に機能させることが大事であり、いずれかが欠けていてはならないと解説しながら、3つのバランスのとり方は企業が何を目指して経営しているかによるため、経営陣とのコミュニケーションが重要だと提言しました。

経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室 室長 桝口豊氏

経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室 室長 桝口豊氏

リーガルテック導入時は「変わらないもの」「変わっていくもの」を見極める

続いて、株式会社日本法務システム研究所 代表取締役 CEO/弁護士 堀口圭氏が、同社が提供するクラウド型の契約文書管理/編集システム「LAWGUE」について紹介しました。

同社は、弁護士業務のなかでドキュメント検索やWord操作に限界を感じていた堀口氏が2018年に設立。「脱Wordによる文書作成・検索の効率化」をミッションに掲げ、契約書をはじめとする文書作成フロー全体の改善を図っていくことを目指しています。

それを実現するプロダクトとして開発しているのがLAWGUEです。2019年6月にβ(ベータ)版がリリースされており、正規版は2020年2月24日にリリースされる予定。同サービスの特徴について堀口氏は「大量のドキュメントを、WORD形式で保管するのではなく条項ごとなど再利用可能な単位に分割し、検索可能なデータにした。これらの情報にAIを組み合わせることで、レビューの自動化が実現される」とその仕組みを紹介。「理想は、誰もが同じ情報源に同じようにアクセスし、同じような成果が出せること。それにより、素早いレスポンスや営業判断が可能となるだろう。法務のみならず会社全体のパフォーマンス改善が見込める」と説明しました。本質的な業務フローの改善を重視する同社では、業務フローに合わせたサービス導入の提案を行っていくといいます。

株式会社日本法務システム研究所 代表取締役 CEO/弁護士 堀口圭氏

株式会社日本法務システム研究所 代表取締役 CEO/弁護士 堀口圭氏

次に講演したのは同じくリーガルテックのスタートアップとして契約文書のバージョン管理サービス「Hubble」を提供する株式会社Hubbleの取締役CLO/弁護士 酒井智也氏。講演冒頭では、社外との契約書のやりとりを実現するHubbleの新機能について紹介しました。

先のLAWGUEとは対照的に、法務の"Word文化"を重んじる方針を採用。従来は社内で契約内容を検討・管理するツールという位置づけのサービスでしたが、12月からはHubble上で社外との契約書のやりとりも可能となります。また、弁護士ドットコムが提供するクラウド契約サービス「クラウドサイン」と連携し、Hubble上で締結までの契約フローの完結が可能に。酒井氏は、「現在、100社ほどに導入が進んでいる」と現状を説明しました。

株式会社Hubble 取締役CLO/弁護士 酒井智也氏

株式会社Hubble 取締役CLO/弁護士 酒井智也氏

つづいては、Hubbleを導入している三井不動産株式会社(以下、三井不動産)の総務部 法務グループ長 望月治彦氏が酒井氏とともに登壇、Hubbleをはじめとしたリーガルテックの導入経緯とその効果について語りました。

三井不動産の法務機能は総務部のなかにあり、法務の実働スタッフは9名。企業・事業の規模に比べて少人数であり、また、構成員のほとんどが法律の専門家ではなく法務としてのキャリアの浅い人材であるため、社内外の弁護士との協業体制をとっていることが特徴的です。そうしたなか、同社では判例検索を除くと、AIによる契約書レビュー、法務文書AI翻訳、そしてHubbleという3つのリーガルテックサービスを導入しています。導入の効果について望月氏は「まだそこまでよくわからないのが現状」と本音を語りました。

次いで、酒井氏と望月氏は「リーガルテックは法務の働き方を変えられるのか」をテーマにパネルディスカッション形式で議論。「リーガルテックで働き方や業務フローを変える場合、どのような視点が大切か」という酒井氏の問いかけに対し、望月氏は「変わらないものと変わっていくものを見極める必要がある。決裁承認フローも、テクノロジーの発展によって手書きからITシステムになっただけで、その本質は変わっていない。リーガルテックの導入には『何を変えたいか』という考え方ではなく、『変わらないものは何か』という視点が求められるのではないか」と答えました。

Hubbleの展開に際して500社の企業にヒアリングした経験を持つ酒井氏は、規模・業態によって「契約審査のフローが少しずつ異なることがわかった」と指摘。「汎用的なシステムを作るのは難しい一方、各社の課題を抽象化していくことで共通の課題にたどり着いた経験がある。法務における共通の課題をみなさんとともに見つけていくために、各社が持っているノウハウが見える化されていくことが必要」と、法務のノウハウ共有の重要性を訴えました。

望月氏は、酒井氏の意見に同意しながら、「法務は部下やチームメンバーが何をやっているのかすらわかりづらい業務だ。メールの返し方や電話対応の方法なども見える化できれば、そこに宝があるのではないか。属人的なノウハウを見える化するということにおいては、リーガルテックに光が当たるだろう」と、今後リーガルテックの活用が見込まれる領域を展望しました。

三井不動産株式会社 総務部 法務グループ長 望月治彦氏

三井不動産株式会社 総務部 法務グループ長 望月治彦氏

業務効率化は、リーガルテック活用の本質ではない

BUSINESS LAWYERSの編集長 松本慎一郎は、新サービスである書籍・雑誌の閲覧プラットフォーム「BUSINESS LAWYERS LIBRARY 2」を紹介しました。

BUSINESS LAWYERSでは2019年7月に会員へのアンケートを行ったところ、法務の課題として「最新の法律情報のキャッチアップ」をあげた担当者が最も多かった一方で、組織運営上の課題第1位は「人手不足・採用難」となりました。人手が足りない状況で、業務効率化や情報収集に課題を抱えている法務の実態が浮き彫りになったといえます。

こうした課題を解決するサービスとして、「もっと自由に、法律書籍を。」というコンセプトのもと立ち上げたのが、BUSINESS LAWYERS LIBRARYです。BUSINESS LAWYERS LIBRARYは、専門雑誌・書籍300冊以上を閲覧できる月額制のサービスで、現状では8社の出版社が参画予定。PCだけでなく、タブレットなどのスマートデバイスでも文献調査が行えます。

「各雑誌・書籍の通読はもちろん、テーマや特集ごとの横断的な検索・閲覧も可能、BUSINESS LAWYERSがキュレーターとなって組む特集もあります。現在リリースしているデモ版ではタイトルのみが検索できますが、正式版では本文検索も可能となる予定です。紙の書籍を購入できる導線も設けているほか、レコメンド機能の実装も検討しています」(松本)

最後のセッションに登壇したのは、サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー) リスクマネジメント本部 法務部部長兼コンプライアンス室部長 明司雅宏氏と、弁護士法人三浦法律事務所の尾西祥平弁護士。尾西弁護士が立ち上げ時より参画する三浦法律事務所は、2019年11月に渋谷オフィスを開設。「コンサルティング」、「カルチャー」、「コミュニティ」という3つのコンセプトを掲げ、大手町オフィスなどの所属弁護士たちとともに、上場企業からスタートアップまであらゆるクライアントのイノベーションを支えていくとしています。セッションでは、尾西弁護士が明司氏に質問を投げかける形で、サントリーでのテクノロジー活用事例を紐解きました。

明司氏によると、サントリーでは「やってみなはれ」の精神のもと、元来テクノロジーを進んで活用するような風土があるといいます。2010年に全社員テレワーク制を導入した同社は現在、コアタイムなしのオールフレックス制度を採用。週の半分出社(終日の出社は不要)すればあとはテレワークが認められるという柔軟な働き方が可能です。また最近では各部署に最低1台はRPAの導入が推進されるなど、最新のITツールが積極的に活用されています。

法務部でも、国内外判例法令データベースに加え、機械翻訳、電子サイン、AI契約レビューツールなどを導入。現在は、法務相談から稟議・電子での契約締結・契約管理・支払いまでの一気通貫システムを市販のツールも取り入れながら開発中。部内のコミュニケーションにはMicrosoft Teamsを活用し、可能な限りオープンな情報共有を徹底したところ、部内のメールが激減したといいます。

サントリー法務部での取り組みに対して尾西弁護士は「一般論として法務部員は自分のなかにナレッジを貯める傾向があるように感じる。オープンチャットと法務とは相性が悪いと思っていた」とコメント。明司氏は「いきなりすべてをオープンにすることは難しく、ドキュメント管理などはまだ『できている』とは言えない状況だ。しかし、法務部員もテレワークを活用しており、全員が揃いにくい状況のなかでは、ITツールを取り入れて情報をオープンにしていかなければナレッジの共有は進まないと感じている」と語りました。

弁護士法人三浦法律事務所 尾西祥平弁護士

弁護士法人三浦法律事務所 尾西祥平弁護士

一方で明司氏は、ITツールの導入により業務時間が劇的に減ったわけではないといいます。

「AIを導入すれば人員を削減できるのではないかという声もあるが、そうは思いません。実際にITツールを導入して発見したのは、業務の可視化によって、メンバーが今取り組んでいる業務は価値のあるものなのかという点に関して議論できるようになったことです。直接的な数字で効果を判断するよりも、法務チームの空気感がなんとなく変わっていくというのが、リーガルテックを入れる効果の本質なのかもしれません」(明司氏)

これに対し尾西弁護士も、「業務の効率化だけをリーガルテックのメリットであると押し出すことは夢がなく、また本質でもない。テクノロジーの活用によって自分たちの能力をいかに最大限発揮するかを考えるのが大事だろう」と同意しました。

サントリーホールディングス株式会社 リスクマネジメント本部 法務部部長兼コンプライアンス室部長 明司 雅宏氏

サントリーホールディングス株式会社 リスクマネジメント本部 法務部部長兼コンプライアンス室部長 明司 雅宏氏

イベントでは登壇企業をはじめ、リーガルテック関連サービスがブースを出展。多くの参加者が列を作って担当者の説明に耳を傾け、講演内容に刺激を受けた参加者が、講演後の懇親会で活発な議論を行う様子も見られました。

リーガルテックの登場をきっかけとして、法務部門の業務のあり方や働き方にも変化が求められています。まずは自社の法務部門における「テクノロジー活用のゴール」をどこに設定するのか。その議論から法務機能強化の道が拓けるかもしれません。

-   「Legal Innovation Conference ~リーガルテックの現在地~」の様子

(取材・文:周藤 瞳美、写真:伊藤 圭、編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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