監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて‐実務実態からうかがえる独立性 確保に向けた課題と提言
コーポレート・M&A
目次
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.167」の「特集」の内容を元に編集したものです。
公益社団法人日本監査役協会(以下、監査役協会といいます)は、同協会の会員会社を対象に監査役の選任及び報酬等の決定プロセスの実務運用の実態についてアンケートを実施し、その結果を取りまとめた「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて ‐ 実務実態からうかがえる独立性確保に向けた課題と提言 − 」(以下、アンケート結果といいます)を公表しました。本特集ではその概要をご紹介します。
アンケート結果で示されている問題意識
- 適切なガバナンス体制が構築されているかを監視
- 問題があれば、経営陣に対しまたは取締役会において指摘
- 問題点を把握しても経営者に忖度して適切な指摘を行わなければ、職責を果たしたことにならない
- 実効性ある監査を行うため、執行側からの独立性が必要
- そのために監査役等の選任及び報酬の決定プロセスにおいて執行側からの独立性確保が重要
監査役の独立性を確保する法的な枠組み
選任
株主総会の目的事項は、取締役会(取締役会設置会社の場合)が決定することとされ、役員の選任手続は執行側の主導となりますが、監査役の選任については株主総会に議案を提出するに際しての監査役(会)の同意権や監査役選任を株主総会の目的または議案とすることについての監査役(会)の提案権が定められていることが指摘されています。
報酬
監査役が2名以上いる場合、監査役の個別報酬額が定款または株主総会の決議で定められていない時には定款または株主総会で定めた総額の範囲内で監査役(会)の協議により定めるものとされていることが指摘されています。
アンケート調査結果の概要
監査役候補者の選定主体
社内、社外を問わず監査役(会)が候補者を提案するのは少数にとどまりましたが、特に社外監査役候補者について監査役(会)が提案する理由として、「独立性の確保や監査役にとっての資質や役割を理解している監査役からの提案が望ましい」とする意見や「監査役の人脈を期待して」等を挙げている事例が紹介されています。
監査役選任議案付議に際しての同意権行使
(1)定時株主総会議案決定の取締役会開催日から起算した社内監査役候補者についての執行側からの同意の打診のタイミング
- 同意の検討期間は「十分確保されている」との回答が 90.0%と大半を占めました。
- 同意の検討期間として望ましい日数は平均29.45日となっているので、多くの会社において望ましい水準を満たしてるといえそうです。
(2)定時株主総会議案決定の取締役会開催日から起算した社外監査役候補者についての執行側からの提案の打診
- 同意の検討期間は「十分確保されている」との回答が 91.9%と大半を占めました。
- 同意の検討期間として望ましい日数は平均53.80日となっています。「1か月前」とする会社が半数近くあるので、実態が望ましい日数に達していない会社も相応にあるといえそうです。
最重要視する候補者の要件
個別報酬額の検討プロセス
個別報酬額の決定方法 | 割合 |
---|---|
執行側から提示された個別報酬額で監査役会が決定 | 49.7% |
事前に執行側から個別報酬額案が提示され、その案に基づいて執行側と協議の上、決定 | 24.9% |
執行側は関与せず監査役間の協議で決定 | 8.9% |
その他 | 16.4% |
指名に関する任意の諮問委員会が監査役候補者選定を対象としているか
- アンケート結果では、指名に関する任意の諮問委員会を設置している会社の割合は18.4%でした。
- 委員会が社内・社外監査役候補者の双方またはいずれかを対象としている会社は71.2%と大勢を占めました。
監査役(会)は指名に関する任意の諮問委員会に対してどのように関与しているか
*委員として出席している場合を除く。複数選択。
各監査役の報酬(退職慰労金を含む年額)の報酬レベル
「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて ‐ 実務実態からうかがえる独立性確保に向けた課題と提言 ‐ 」を元に三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部作成
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)