法務パーソンの目標設定

第4回 一人法務の目標設定にみる現実と理想〜メーカー課長・Bさんの場合 法務パーソン目標設定アンケート③

法務部

目次

  1. 「目標」に意義を感じない上司、法務部門は機能不全
  2. 法務部門の定量評価はありか、なしか
  3. 設定の仕方で「いかようにも」できてしまう

人事評価と事業戦略達成のために多くの企業が採用する「目標管理制度」。スタッフのモチベーション向上、業務スキルの向上のためにもうまく活用したいところです。
 しかし、業務が多岐にわたるうえ、事業部門などからの突発的なリクエストにも柔軟に対応しなければならない法務部門では、とりわけ評価軸の定め方が曖昧になりがちです。その結果、「上司の評価が主観的すぎて納得できない」「法務の仕事は定量化できない」などと、目標管理制度そのものに抵抗感を示す法務パーソンも少なくありません。

 この「難題」に対する他社の法務部の取り組みから改善のヒントを探るため、編集部では3名の現役法務パーソンに「法務の目標設定アンケート」を実施。今回は、いわゆる「一人法務」のBさんの回答を紹介します。


回答者③
・氏名(役職):Bさん(法務部・課長)
・社名(業種/従業員数):非公表(製造業/従業員数:約700名)

「目標」に意義を感じない上司、法務部門は機能不全

Q1:御社ではどのような人事評価制度を採用していますか。

MBO(Management By Objectives:目標管理制度/「第1回:人事エキスパートが推奨 組織と個人の力を引き出す法務部門の目標設定」を参照)を制度としてとっており、掲げる目標は定性的なものが多いです。

能力開発を目標とすることは基本的になく、業務に直結した成果のみが評価される方式です。年功序列の影響はほとんどなく、役職レンジの給与幅および昇給原資のなかで、成果でのみ判断されます(一方で、業績が振るわない昨今、成果を出し、評価が良くても、報酬への影響がないという状態です)。

360度評価、他部署アンケートなどはなく、過去に行った実績もありません。
Q2:法務部門の目標設定に関して、難しいと感じることはありますか。どのような点に難しさを感じますか。

上記のような状況であるため、目標設定自体を困難と感じるかどうかというよりも、上司が目標自体に意味を感じていないところがあり、部署の中長期的な方向性が示されず、機能不全を起こしている状況なのだと思います。

現在は部下がいない状況ですが、部下がいた時期は、このあたりのマネージメントは難しく、目標を達成しても報酬に(大幅には)反映させづらいので、「本人のスキルが上がる=他社に転職しやすい経験」をしてもらうことを可能な限り目標にしてもらえるように自分のところで調整していました。

法務部門の定量評価はありか、なしか

Q3:法務部門の仕事は評価が難しいと感じることがありますか。評価が難しいと感じる業務にはどのようなものがありますか。

部署特性を見ずに全社的に定量評価を徹底しようとする方向性がある場合(一時的にそういう時代がありました)は、困難と感じました。

部分的にそのような項目(処理件数、人が相談に来る件数)を設けることは可能だと思いますが、すべてに設定することは、評価の正当性という観点で難しいと思いました。

設定の仕方で「いかようにも」できてしまう

Q4:自社の目標管理・評価手法が「うまくいっている」と感じる点はありますか。

うまくいっているかは別として、目標設定については、設定の仕方で評価がいかようにもコントロールできてしまう点で、会社全体としては疑問がありますが、個人としてはやりやすいです(自分でいかようにもできるため)。
Q5:あなたにとって理想の目標管理制度とはどのようなものですか。

評価される側としては、「目標設定⇒目標管理⇒評価」が一連一体になっているのであれば、及第点ではないかと思います。一方で、評価する立場であれば、上記の一連一体になっていることに加えて、会社としての目標が具体的であればあるほどよいと感じています。
Q6:他社の法務部門がどのような目標管理を行っているかについて興味がありますか。

360度評価第1回:人事エキスパートが推奨 組織と個人の力を引き出す法務部門の目標設定」を参照)を採用している企業があれば、それを具体的にどのように設計して、評価に反映させているのか興味があります。

 法務業務への関心を持たない部長を上司に持ち、部下を持たない「一人法務」Bさんの回答を紹介しました。

 会社の業績が伸び悩むなか、どれだけ高い評価を受けても報酬が上がらない現状では、Bさんが目標設定に意義と価値を見出すことは難しいようです。理想の目標管理制度について、Bさんが「(目標の設定・管理、評価が)一連一体になっていることに加えて、会社としての目標が具体的であればあるほど、よい」と指摘している点からわかるように、課題の背景には、国内メーカーのスタッフ・Aさんのケース(「法務の目標設定と「減点主義」のジレンマ〜メーカー勤務・Aさんの場合」)と同様、経営層が法務部門のミッションを定義できていないという問題が浮かび上がってきます。

 以上、3回にわたって「目標設定アンケート」を紹介しました。本連載の最終回となる次回は、法務実務家として豊富な経験を有する株式会社ロコガイドの片岡玄一さんが、法務パーソンの目標設定における目的と課題、実務のコツを解説します。

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する