クロスボーダー特化型事務所が描く、弁護士とクライアントの新しい関係

コーポレート・M&A

目次

  1. 弁護士にもマーケットインの発想を
  2. 弁護士を壁打ちの相手に
  3. クロスボーダーM&Aで日本一を目指す

「日本企業に世界で勝負するための武器を提供する」という強力なミッションを掲げ、クロスボーダーの法務案件に特化した法律事務所、東京国際法律事務所を立ち上げた森幹晴弁護士と山田広毅弁護士。日々、グローバルな競争の最前線に立つ2人の目に、これからの弁護士像はどのように映っているのだろうか。

また、世界で戦う日本企業はどのようなスタンスで弁護士を活用するべきなのか。そこには、従来の弁護士とクライアントの関係を超えた、同志としての関係性が見えてきた。

弁護士にもマーケットインの発想を

これからの時代、企業法務に関わる弁護士事務所や弁護士は、どのようにあるべきとお考えですか。

山田弁護士
一番大切なのはマーケットインの発想だと考えています。旧来の弁護士像というのは、自分が専門としていることを聞かれたら教える、いわゆる待ちのスタイルだったと思うんです。でも、これからは社会の変化のスピードがますます速くなり、クライアントも必死についていかなければならない世界がきます。弁護士にもプロアクティブにニーズを発見し、サービスを提供していくというビジネスマインドが絶対に必要です。そのことに気づいている方は様々な形で成功されていると感じます。

そういう考え方がもっと広がっていくことで、弁護士業界が提供できる価値がどんどん増えて、業界全体が明るくなっていけばいいですよね。工夫すればこれだけ面白い仕事なのに、なりたい人が減っているという今の状況は、本当にもったいないと思います。

森弁護士
マーケットインについては、フォードの話が有名ですよね。馬車の時代に「早く移動するために何が欲しいですか」と聞けば、誰もが速い馬車が欲しいと言ったはずです。しかし、フォードは人々のニーズの本質を捉えて、自動車を発明しました。ニーズの本質まで捉えてこその「マーケットイン」だと考えています。

クライアントの言葉の背後にあるビジネスニーズをしっかりと捉え、本当に欲しいものに立ち返る。クライアントが気づいていないリスクをプロアクティブに先回りして考える。これからの弁護士は、クライアントのガイドとしての役回りを担っていくべきではないかと思うのです。

これまでの日本企業は、勝手知ったる日本国内でビジネスをやっていればよかったのですが、これからはグローバルという、土地勘のない場所でビジネスをしていかなければなりません。そのためには、グローバルな領域で経験を積んで、リスクを把握し、アドバイスできる弁護士が増えて、クライアントを先導していく必要があると考えています。

高い付加価値のサービスを提供することで、クライアントに「スムーズに案件が進んだ」、「思った通りだ」と言ってもらう。そこがわれわれの目指している最高の結果です。

マーケットインの発想で動いたり、クライアントのニーズを先回りして発見していく能力やセンスは、スキルセットとして身に付けられるものでしょうか。

山田弁護士
一番大事なのは心掛けです。意識して仕事を続けていくことで自然と身に付けることはできます。私自身は、若いときに上司から指示される前に仕事を終わらせる、クライアントから聞かれる前に答えてしまうためにはどうしたらいいかということを常に考えていました。これだけで相当感覚が磨かれていきます。おそらく、仕事ができる人は皆やっていることだと思いますが、この心がけが一番わかりやすいと思います。当然、センスも必要だと思うのですが、そういった意識やスタンスを持っているかどうかで、ぜんぜん違ってきますね。

東京国際法律事務所 山田広毅弁護士

東京国際法律事務所 山田広毅弁護士

弁護士を壁打ちの相手に

クライアントにはどのように弁護士を活用してほしいと考えていますか。

森弁護士
大きな看板のある事務所は、非常にいい仕事をやっていますし、いいメンバーもいます。また他方で、まわりを見渡すと、今は弁護士業界にも新しい価値観を標榜し、クライアントのために良質なサービスを提供しようと考えている筋肉質のファームがどんどん出てきています。弁護士業界にも競争時代が来た、企業の側から見れば、選択肢が増えてきたのだと思います。そういった事務所の弁護士の実績や経験をしっかりと見て選んでいただけるとよいのではないか、と思っています。

これまでは何でも顧問弁護士に頼むことが多かったと思います。企業としては、顧問弁護士の得意不得意をよく理解して、顧問弁護士以外の弁護士の情報を収集しておくと、より良い選択肢が出てくるのではないでしょうか。

山田弁護士
壁打ちの相手として使える弁護士を懐刀として抱えておくといいのではと思います。これは法務部の方に限らず、経営企画部など他部門の方にもオススメです。

何かあればパッと相談できて壁打ち相手になる、知恵袋みたいな存在を持っておくと、本当に自分が社内でやりたいこと、会社としてやりたいことを進めていくためにスムーズになります。

実際、私のことをそんなふうに使っていただいているクライアントもいらっしゃいます。「明日、上司にプレゼンしないといけないから、ちょっとだけ相談させてくれ」とか、「社長がこういう案件で明日相手方と会うらしいんだけど、気をつけなきゃいけないことは」といった具合に、連絡をいただくんです。

その問いに正解はありませんので、私も結論を提供するというスタンスではなく、一緒に悩み、考えながら知恵を紡ぎ出しています。うまい弁護士の使い方だなと思っています。

企業の中にいる実務担当者としても、そのように弁護士を活用して、自社リスクに先回りした提案ができるとバリューが高まりそうですね。

山田弁護士
私は、企業の中で法務を担当されている方は、同志だと思っています。同志が、会社を上手く動かし、最終的に会社にとって一番メリットのある結果をもたらすことができるために必要な武器を提供していきたいと思っています。

実務的な問いも含めて、投げかけてみると打ち返してくれる弁護士はいるはずです。ぜひ、うまく活用していただきたいですね。外部弁護士の知恵が企業内でうまく活用されることが、日本企業が世界で成功していくことにつながり、それが日本全体のエネルギーにつながっていくのではないでしょうか。

企業側の窓口となるのは法務部の方が多いのでしょうか。

森弁護士
ご相談を受ける部門は多様化していますね。M&A案件になると経営企画の方も多いし、紛争であれば法務が中心です。ビジネスサイドにとって新しいことをやるときは、事業部の方と法務の方と一緒にお話しするケースも多いです。海外案件では、海外事業部の方が窓口になるケースもあります。

法的な側面だけではなく、事業の目線で現実的なソリューションを出すことがますます重要になっています。企業との接点が広がっていくことで、弁護士が活躍する場が広がっていることを実感しています。

マーケットのニーズが多様化しているのですね。

森弁護士
最近、あるクライアントから、自社の顧問弁護士について意見を求められました。担当者の方が長年付き合っている法律事務所と、社長が創業時代からお世話になっている事務所があり、それぞれ問題がある。たとえばスピードの面などで、ニーズに合致しないそうなんですね。ただ、誰もそこにメスを入れられないそうです。そういったケースはひょっとしたら増えているかもしれません。

その意味では、ぜひ自分たちのニーズに合致するベストな弁護士を探してほしいですし、発見できるチャンスも広がっていると思います。

東京国際法律事務所 
 森幹晴弁護士

東京国際法律事務所 森幹晴弁護士

クロスボーダーM&Aで日本一を目指す

今後の展望について聞かせてください。

山田弁護士
チームとしていかに日本一になるか、日本の司法インフラをどうやってより良いものにするか、そのために自分が何をできるのか、今はそれしか考えていません。

クロスボーダーの戦略が必要とされ、日本の弁護士が支え切れていない法領域は、仲裁、知的財産、貿易関係、ヘルスケア、プロジェクト・ファイナンスなど、まだまだ多く残されています。

そういった領域に一緒にチャレンジしていける優秀な方はたくさんいると思っていますし、日本企業が必要とするクロスボーダーの法務領域をカバーできる素敵な仲間を探していきたいですね。

森弁護士
日本企業が、国外で散々辛酸をなめている分野をしっかりと手当てし、新しい分野にも打って出ていくというところが今後の展望です。

現在、私たちには5人のいいメンバーがいますが、まだ5人しかいないとも言えます。それはつまり、クライアントに対しても、弁護士に対しても自分たちの魅力がまだ届けきれていないということだと思うのです。

そのために、まずは旗印に掲げているクロスボーダーのM&A領域における地位をマーケットの中で確立し、人材も厚くして、クロスボーダー戦略法務の領域において日本で一番の法律事務所にすることです。それができなければ、他の法領域をカバーすることも、絵空事で終わってしまうでしょう。

クロスボーダー戦略法務の領域において日本のナンバー1になるという目標を、いつまでに達成したいと考えていますか。

森弁護士
今後の計画として、3年から5年の間で30人くらいのチームを作りたいと思っています。必ずしも数が大事なわけではありませんが、やはり30人くらいのチームがあれば、それなりの規模の案件も任せていただきやすいですからね。

山田弁護士
3年から5年でクロスボーダーM&Aの領域でナンバー1を取り、他の領域でも種を蒔いておくことが必要です。それくらいのスピード感でやらなければ、私たちが本当にやりたいことにはたどり着けないのではと思っています。

東京国際法律事務所 山田広毅弁護士、森幹晴弁護士

左から東京国際法律事務所 山田広毅弁護士、森幹晴弁護士

(取材・構成・写真撮影:BUSINESS LAWYERS編集部)

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