「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント

コーポレート・M&A

目次

  1. 要綱案の全体像
  2. 要綱案のポイント
    1. 株主総会資料の電子提供制度
    2. 株主提案権
    3. 取締役の報酬等
    4. 補償契約、役員等のために締結される保険契約
    5. 業務執行の社外取締役への委託、社外取締役を置くことの義務付け
    6. 株式交付
    7. 議決権行使書面の閲覧等
    8. 会社の支店の所在地における登記の廃止

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.160」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 2019年1月16日、法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会において、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」(以下、要綱案といいます)が取りまとめられました。本記事では、要綱案の概要をご紹介します。なお、要綱案は2月14日開催の法制審議会総会に諮られた模様です。

要綱案の全体像

第1部
株主総会に関する
規律の見直し
第1 株主総会資料の電子提供制度
  1. 電子提供措置をとる旨の定款の定め
  2. 電子提供措置
  3. 株主総会の招集の通知等の特則
  4. 書面交付請求
  5. 電子提供措置の中断
第2 株主提案権
  1. 株主が提案することができる議案の数の制限
  2. 目的等による議案の提案の制限
第2部
取締役等に関する
規律の見直し
第1 取締役等への適切なインセンティブの付与
  1. 取締役の報酬等
  2. 補償契約
  3. 役員等のために締結される保険契約
第2 社外取締役の活用等
  1. 業務執行の社外取締役への委託
  2. 社外取締役を置くことの義務付け
第3部 その他 第1 社債の管理
  1. 社債管理補助者
  2. 社債権者集会
第2 株式交付
  1. 株式交付の内容
  2. 株式交付計画
  3. 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み等
  4. 株式交付の効力の発生
  5. 株式交付親会社の手続
  6. 株式交付の無効の訴え
第3 その他
  1. 責任追及等の訴えに係る訴訟における和解
  2. 議決権行使書面の閲覧等
  3. 株式の併合等に関する事前開示事項
  4. 会社の登記に関する見直し
  5. 取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備

要綱案のポイント

 要綱案のうち、一部の事項のポイントとなる内容をご紹介します。

株主総会資料の電子提供制度

  • 株主総会の招集に際し、株主総会参考書類、(単体・連結)計算書類、事業報告等の情報(株主総会資料)について、電子提供措置をとることができる制度を創設(振替株式発行会社は強制適用)
  • 電子提供制度採用会社かつ取締役会設置会社は、株主総会の3週間前または招集通知発送日のいずれか早い日までに電子提供措置を開始する必要がある
  • 有価証券報告書提出会社は、電子提供措置の対象情報を記載した有価証券報告書を電子提供措置開始日までにEDINETに掲載することで、電子提供措置に代えることができる
  • 電子提供制度採用会社の株主は、電子提供措置の対象情報を記載した書面を交付するよう会社に請求できる
  • 電子提供措置の開始から株主総会までの期間(全期間)中の電子提供措置の中断期間が、全期間の10分の1を超えない等の条件に該当する場合、中断は電子提供措置の効力に影響を及ぼさない


電子提供制度を採用した場合の定時株主総会日程イメージ

電子提供制度を採用した場合の定時株主総会日程イメージ

(※1)電子提供措置は、株主総会日の3週間前の日または招集通知発送日のいずれか早い日までに開始
(※2)書面交付請求日から1年経過すれば、会社は株主に書面交付が終了する旨および異議があればその旨を述べる旨を催告できる



電子提供制度のイメージ

電子提供制度のイメージ

株主提案権

  • 取締役会設置会社の株主が提案できる議案の数に上限を設ける(原則10まで)
  • 役員等の選任議案や定款変更議案の数え方について、一定のルールを設ける
  • 株主提案の内容が、①専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、自己・第三者の不正な利益を図る目的や②株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがある等に該当する場合に制限を設ける

取締役の報酬等

  • 取締役の個人別の報酬等の内容が株主総会決議等で決定されている場合を除き、原則として取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方針(報酬等の決定方針)を取締役会が決定する必要がある
    【対象会社:監査役会設置会社(公開会社・大会社)で有価証券報告書提出会社、監査等委員会設置会社】
  • 報酬等のうち、会社の株式や新株予約権の取得資金に充てるための金銭については、株主総会決議で当該株式や新株予約権の数の上限等を決定する必要がある
  • 上場会社は、取締役等の報酬等として会社の株式の発行・交付を行う場合に金銭等の払込みを不要とすることができる。また、報酬等としての新株予約権について行使時に出資を不要とすることができる
  • 公開会社に役員報酬に関する情報開示の充実化を求める。事業報告で、①報酬等の決定方針、②報酬等についての株主総会決議事項、③取締役会決議による報酬等の決定の委任に関する事項、④業績連動報酬等に関する事項、⑤報酬等の種類ごとの総額等を開示する必要がある

補償契約、役員等のために締結される保険契約

  • 会社が役員等に対して、役員等が職務執行に関し、責任追及を受けることで生じる費用や第三者に生じた損害への賠償責任を負うことで生じる損失を補償する契約(補償契約)の内容は、取締役会で決定する必要がある(※1)
  • 役員等が職務執行に関し、責任を負うことまたは責任追及を受けることで生じる損害を保険者が填補するもので、役員等を被保険者とするもの(役員等賠償責任保険契約)の内容は、取締役会で決定する必要がある(※1)

(※1)取締役会設置会社に該当しない場合は、株主総会決議が必要

業務執行の社外取締役への委託、社外取締役を置くことの義務付け

  • 指名委員会等設置会社以外の社外取締役選任会社は、会社と取締役が利益相反にある状況で、取締役が会社の業務を執行することで株主の利益を損なうおそれがある場合に、当該業務執行を取締役会の決議によって社外取締役に委託することができる(※2)
  • 監査役会設置会社(公開会社・大会社)かつ有価証券報告書提出会社は、社外取締役を選任する必要がある

(※2)取締役会設置会社に該当しない場合は、取締役の決定が必要

株式交付

  • 株式会社が他の株式会社を子会社化するために、当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対価として当該株式会社の株式を交付できる制度に関する規律を新たに設ける

議決権行使書面の閲覧等

  • 議決権行使書面の閲覧請求時に請求理由の明示を株主に義務付け
  • 閲覧請求の拒絶事由として、①株主が権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき、②株主が会社の業務遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき、③閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき、④株主が過去2年以内に閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものに該当するときを定める

会社の支店の所在地における登記の廃止

  • 支店を新たに設けた場合等に求められる支店の所在地における登記、商号・本店の所在場所・支店の所在場所に変更が生じたときの支店の所在地における変更登記等に関する会社法の条文を削除する
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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