シティライツ法律事務所の3人が語る、理想の姿とこれからの法務パーソンのあり方

法務部

目次

  1. 設立から1年、3人が取り組んでいること
  2. もし、合わないクライアントからの依頼が来たら?
  3. それぞれが理想とする弁護士像
  4. 法務は司令塔になれるチャンスがある

シティライツ法律事務所は2013年1月に水野 祐弁護士が開設。平林 健吾弁護士、塩野入 弥生弁護士、倉﨑 伸一朗弁護士と共に、機動性と個性を重視し、弁護士を取り巻く既存の状況や価値に対する「カウンター」としての存在感を示す弁護士事務所というイメージでした。

設立から5年を迎えた2017年12月、「カウンター」から「次のスタンダード」に飛躍させる機会として、水野弁護士、平林弁護士に加え、独立を考えていた伊藤 雅浩弁護士の3人が新しい事務所を設立。事務所名は従前の「シティライツ法律事務所」を受け継ぐも、新しい法律事務所の設立であると3人が口を揃えています。

異なる個性を持つ3人が「法を駆使して創造性、イノベーションを最大化する」というミッションを掲げた先に目指す、リーガルサービスの「次のスタンダード」とはどのような形なのでしょうか。

設立から1年が経過し、3人が目指す理想の姿と弁護士の本質的な価値、これからの法務パーソンのあり方について伺いました。

シティライツ法律事務所 インタビューの様子

設立から1年、3人が取り組んでいること

新生シティライツ法律事務所が誕生して1年が経ちました。伊藤先生から声をかけられたという事なのですが、この1年を振り返っていかがでしたか。

伊藤氏:
もともと独立する事は決めていたのですが、1人でやるよりは複数人でやりたいと思い、声をかけました。

当時は弁護士になってまだ10年も経っていなかったのですが、マネジメントの役割が増えていました。それはそれでよい経験でしたが、まだもう少し自分で手を動かしたいと思っていました。エンジニアでいえばもう少しコードを書きたいという感覚に近いのかな。

これから最低でも10年、長ければ20年仕事をやっていくのに、実務の現場を10年もやっていない。スキル的にはまだまだ伸ばさないといけないという事も思っていました。この1年はその思いが叶って(笑)、現場仕事に忙殺されています。

最初の頃はシティライツ独自のサービスを作りたいね、という話もしていましたけど、忙しさもあり、正直あまりできていないです。

水野氏:
同じクライアントの顧問を共同で担当したり、紛争案件を一緒に受任したりという機会は徐々に増えてきていますね。2人から色々吸収したいという思いが私は強いです。

水野先生の所に来る相談には、企業の経営企画や新規事業などの部門の方が法務部を説得するために来るという話も聞いた事があります。

水野氏:
私の場合、法務部からの相談もありますが、新規事業部や経営企画、そして役員から直接依頼を受ける仕事の割合がけっこう多くて、たしかに特徴的かもしれないですね。その中には一定の割合で、法務部に案件を持っていくためのロジックを一緒に作るという仕事があります。私自身がメディアなどでそういう戦略的な法務の重要性を語っているから、ということもあると思います。

伊藤先生、平林先生は主にどんな案件を担当されていますか。

伊藤氏:
前の事務所ではスタートアップも大企業の案件もやっていました。事務所を移るタイミングで大企業の案件は減るかなと思いましたけど、ありがたい事に継続しているものもありますし、独立してからも大企業からの新たなご依頼があります。今はスタートアップと大企業の案件は半々というところですかね。大企業からのご依頼はほとんど紛争、訴訟です。良いバランスだと思います。

平林氏:
私は、インターネットに関係するサービスやプロダクトを提供している企業からのご依頼が多いです。数人のスタートアップから大きな上場企業まで、規模は様々です。契約関係のご相談とサービスやプロダクトに関するご相談が大半で、ベンチャーの資金調達やExitの仕事もある程度やっています。訴訟は少ないので、今後やってみたい分野です。

それから、日本法人に法務部門がなかったり、あっても小規模でアウトソースに頼る必要がある外資の企業から、半ばインハウスのような立ち位置で仕事をするよう依頼されるケースもいくつかあります。

自分は外資系の法律事務所でプライベートプラクティスをやってから、事業会社でインハウスを経験して、再びプライベートプラクティスに戻ってきました。

こういう経験があると、インハウスの方のニーズもうまく拾い上げられるかなと思っています。

塩野入先生はニューヨークにいらっしゃるんですね。

水野氏:
塩野入は弊所の海外案件をバリバリやってくれていて、チャーミングだけど、すごいハングリーかつ努力家で、人間としても尊敬していますし、刺激を受けます。彼女はニューヨークのスタートアップのジェネラル・カウンセルも兼任しているんですが、彼女がいる事で弁護士としてのプラクティスとしても、スタートアップのスピード感としても、ワールドスタンダードというか、グローバルな目線も持てますし、現地だと何時なの?みたいな時間にもSlackでコメントや反応をしてくれます。海外の法律事務所に依頼メールして、見積りしてもらって、受任して、みたいな流れを経ないで、Slackやメールにccを入れて「この案件、ジョインして!」っていう形でスピード感をもって海外案件ができるのは本当にありがたいですね。

シティライツ法律事務所 水野 祐弁護士

シティライツ法律事務所 水野 祐弁護士

もし、合わないクライアントからの依頼が来たら?

水野先生が開設したシティライツ法律事務所に、平林先生が参画された2013年頃には、どういう事務所を目指していたのでしょうか。

平林氏:
明確に言語化されていたわけではないのですが、現在の「法を駆使して創造性、イノベーションを最大化する」というミッションステートメントとそんなに変わってはいません。

水野氏:
インターネットビジネスやカルチャーを大学の頃から浴びてきた世代として何ができるか、ということは2人とも考えていたと思います。いい意味で軽く、スピード感をもってハンズオンのサービスを提供する事は意識してきました。

とにかく一般のリーガルサービスが遅くて、周りのエンジニアやスタートアップのスピードに追いつけていない感覚がありました。一方で、法律家だってもっとやれるんじゃないか、とも考えて、スタートアップのスピード感に必死に食らいついていったというのが実感ですね。

平林氏:
今でもそうですが、楽しい仲間と楽しい時間を過ごせる事務所にしたい、という思いも強くありました。

どういう状態の時に楽しいと感じますか。

平林氏:
「楽しい」にもいろいろあります。自分が尊敬するクライアント、作品やプロダクトの仕事に携わることができればそれだけで楽しくなります。知的好奇心を刺激するような法的問題に直面したときも楽しいと感じます。それから、気心の知れた仲間と一緒にストレスなくいられる状態というのもとても大切で、これも楽しい状態だと思います。

水野氏:
仕事でも自分らしくいられるっていうのはわりと重要なテーマで、私は「オン・オフ」という概念が嫌いなんです。
このままのスタイルでスタートアップともクリエイターとも、大企業の社長とも話しますし。官僚だって、政治家だってそうです。

ステレオタイプな弁護士像ってあると思うんですけど、もっと多様性があっていいじゃない、と思っています。

伊藤氏:
クライアントのキャラクターやビジネスに共感できたり、仲間同士でストレスがないというのは重要だと思いますね。

もし、合わないクライアントからの依頼が来た場合はどうされますか。

伊藤氏:
おそらくクライアント側もうちに頼まないと思います(笑)。

水野氏:
やっぱりヒゲの弁護士はちょっとねえとか言われたりして。平林だってこの髪型ですよ(笑)。

平林氏:
いや、(水野)祐くんに言われたくないし(笑)。

水野氏:
まあ、でもうちはブランディングというか、こういう弁護士たちで、こういう法律事務所ですっていうこともある程度発信しているので、意外にミスマッチはないですね。

伊藤氏:
外見は自分が一番まともに見える(笑)。

平林氏:
(伊藤)まささんは、常にドレッシーですよね(笑)。そして、速そうな車に乗っておられる(笑)。

シティライツ法律事務所 平林 健吾弁護士

シティライツ法律事務所 平林 健吾弁護士

それぞれが理想とする弁護士像

先生方の理想とする弁護士像を教えてください。

伊藤氏:
何かで日本一になる、とかそういう思いはあまりなくて。一番自分が快適な状態でいたいですね。自分の事を気に入ってくれるクライアントと、自分の気に入った仲間と過ごし、時間のバランスも程よく、というささやかなものです。

そういう意味では、今はだいぶ理想に近づいているかな(笑)。

自分や仲間が満足できることが第一ですが、きちんと市場に認知されていて、実力もあると思われたい、という外からの見た目も気にしてしまう部分もありますが。

平林氏:
自分が納得でき、クライアントにも納得してもらえるクオリティの高い仕事を目指しています。クライアントにはその差がよくわからない技巧的部分、手を抜こうと思えば抜けてしまう部分というのはあって、そういう部分は「ムダ」と割り切る考え方もあるとは思いますが、プロとして一定の矜持を持って仕事をしたいです。

水野氏:
(平林)健吾さんが一番職人的な気質があるように思いますね。

平林氏:
気の合う仲間と力になりたいクライアントに囲まれて、幸せに過ごせる時間ができるだけ長く続けば良いですね。

将来どうなるか全然見えないし、弁護士という仕事がどこまで続けられるかもよくわからないなと思っていて。長い人生を考えるとどう生きるか不安だったりしますけど、当面楽しくできているのはハッピーです。この生活をどうやって長く続けるか、もしくはもっとよくするか・・・。野心的なものはあまりないんですよね、残念ながら。

力になりたいクライアントってどういう方なんでしょう。

平林氏:
世の中に成し遂げたい事があって全力で頑張っている人や、面白そうな事をやっている人たちだと、自分もそのエネルギーを分けてもらえる気がします。

あとは、クライアントに限らないかもしれないのですが、フェアな人が好きです。自分より立場の弱い人に対しても礼儀正しい振る舞いをするとか、権威や権力と対峙したときにも態度を変えないみたいなフェアネスを大事にしています。

水野先生の理想はいかがですか。

水野氏:
最近はテクノロジーコンシャスなロイヤーも増えていて、若手でも私の目からみて「魅力的なロイヤーだな」と思える方が増えているように思います。

伊藤も平林も私から見てすごくかっこいい、というと語弊があるかもしれませんが、本当にスペシャルなロイヤーなんです。そう思える人はあまり多くないのですが、自分が今まで一緒に働きたいと思った人とは働けているんですよ。そういうロイヤーと一緒に働くことで刺激も受けますし、自分自身をより高められる。それって本当に幸運なことだと思うんですよね。そういう、自分にとって特別に思える、尊敬できるロイヤーたちが集まって、個性で勝負している事務所が理想です。

個人的な興味としては「弁護士や法律家のクリエイティビティ」に興味があって、今後、弁護士や法律家の本質的な価値ってどんどん変わっていくと思うんです。昨今の話題に合わせて言えば、「AI時代が来た時に残る法律家の創造性」。そこに興味があるし、さっき私が言った「かっこいい」という言葉もそこに集約されると思っているんです。

弁護士の本質的な価値について、伊藤先生はどう考えますか。

伊藤氏:
問題発見と問題解決だと思います。最終的なアウトプットを契約書の文言修正だとした場合、リーガルテックの進歩などで代替されていく部分があったとしても、問題発見、問題解決はAIにはなかなかできない事だと思います。

ビジネスコンサルタントも、クライアント企業の問題を解決する立場なので、重なり合いますが、彼らが取り扱う領域はもっと広い。

もちろん、弁護士とコンサルタントは視点も違うのでうまくすみ分けられていると思いますが、弁護士だからこうだ、というように壁を作るのではなく、それぞれがプロフェッショナルとして個性を発揮していければと思いますし、そうでなくてはならないでしょうね。

シティライツ法律事務所 伊藤 雅浩弁護士

シティライツ法律事務所 伊藤 雅浩弁護士

法務は司令塔になれるチャンスがある

BUSINESS LAWYERSの読者には法務担当の方が多数いらっしゃいます。これからの法務パーソンに向けたメッセージをいただけますか。

伊藤氏:
法務には社内にばかり目を向ける人、もっと言えば法務部内や事業部のことを気にしすぎている人が多い印象です。マーケットやお客さんの方を向いて、答えを出すことを意識しても良いかなとは思います。

法務は、ほかのバックオフィスと違って、他社の同じ部門である法務と交流している人が多いのですが、逆に、法務以外の所に出ていかない人が多いですよね。

法律を知っているというのは、とても大きなアドバンテージだと思っていて、それを活かしてソリューションを出せる力があるなら、キャリアの可能性は広がるように思います。

平林氏:
リーガルマインドを持っているメンバーがリーダーシップを発揮し、事業をドライブしていく役割を担うパターンは今後増えていく気がするんです。

大きなグローバル企業でも、法務のキャリアを築いていた人が事業側に転身したり、ジェネラルカウンセルの人がCOOになったりしている例はいくつか見聞きします。

法務は情報も集まりやすく、会社全体を見渡せます。事業をゴールに導くために必要なものや、ジャッジをするタイミングが見えやすい部署なので、物事を決める立場に近いポジションを目指して、判断をする経験を増やしていくと「法務のスペシャリスト」にとどまらないキャリアが築けるかもしれません。

水野氏:
スタートアップ的な企業だと、法務の人がそういう働き方をしている事がけっこうありますよね。経験を積んだ人材の中から、最終的には法務や弁護士ではないキャリアを築く人も増えるかもしれないですね。

21世紀は、稼ぐ一辺倒では企業は立ちいかなくなってしまうのではないかと思うんです。

最近は「利と義」という言い方をしているのですが、利益と大義の両立が企業のサステナビリティを支えるときに重要です。そして、フェアネスやリーガルマインドを駆使すれば微妙なジャッジを正しい方向に導けます。大義の実現に寄与できる部分は大きいはずなので、ちゃんと磨けば法務の価値は高まるのではないか、というのが私の仮説です。

一方で、そこに目を向けないでこのまま内にこもっていると、法務という仕事は消滅する方向へ向かってしまうではないか、というのが私の考えです。法務の本質というのはファンクション(機能)であって、セクション(部門)ではない。

もっと色々な部署と溶けていって、法的なマインドや視点は持ちつつも違う能力を備える人材に転化していく事が、これからの法務パーソンの価値になるのではないでしょうか。

伊藤氏:
昔、情報システム部門はシステムのお守りをするだけで社内での地位が低かったんです。でも今はITと経営が切り離せなくなり、システム部門のプレゼンスも高くなっています。

法務もスペシャリストではあるので、マネジメントの方向をしっかり向けば発言力や地位も高くなっていくんじゃないかな。

水野氏:
法務部の人は優秀な人が多いし、できる法務部の人って会社のインテリジェンス、諜報部隊みたいになっていますよね。今の日本の伝統的な大企業はセクショナリズムが強くて、政治が企業戦略を無効化してしまう。私は法務部に限らず、法的素養をもったビジネスパーソンが企業経営にもっと必要だと思うし、そのような企業経営にあって法務部は司令塔のような存在になれるチャンスがあると思っています。その気があれば。

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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