2018年企業法務に関するアンケート結果 注目トピックスや活躍した弁護士を一挙公開
法務部
目次
2018年11月末から12月にかけ、BUSINESS LAWYERSは「2018年企業法務に関するアンケート」を実施しました。
2018年は働き方改革関連法案の成立や、改訂コーポレートガバナンス・コードの施行をはじめ、法務部門の業務に関わる大きなトピックスが複数ありました。また5月にEU一般データ保護規則(GDPR)が施行されたり、GAFAなどのプラットフォーマーのあり方が話題になったりするなど、個人情報の取り扱いについても注目が集まった1年でした。
本稿ではアンケート結果をもとに、2018年が法務部門の方にとってどのような年だったのかを振り返ります。
2018年の注目トピックスは「GDPR」
「2018年に気になった企業法務の出来事(複数回答可)」への回答は、以下の結果となりました。
選択肢 | 回答数 |
---|---|
GDPRの発効と海外の個人情報保護に関するルールの整備 | 50 |
日本版司法取引制度の導入 | 38 |
働き方改革関連法案の成立 | 37 |
データの取り扱いに関する法改正と実務対応 (不正競争防止法改正、著作権法改正、AI・データ契約ガイドラインの公表) |
34 |
「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」報告書の公表 | 16 |
CGコード、SSコード、CGSガイドラインの改訂などに伴うガバナンス強化 | 14 |
フェア・ディスクロージャー・ルールの導入 | 14 |
SDGs(持続可能な開発目標)への対応 | 13 |
GAFAに代表されるプラットフォーマーに関する規制 | 11 |
ICOによる資金調達 | 7 |
サイトブロッキングに関する議論の動向 | 7 |
グレーゾーン解消制度、規制のサンドボックスなどの活用 | 5 |
事業承継円滑化法改正 | 2 |
「人材と競争政策に関する検討会」報告書の公表 | 1 |
その他 | 2 |
最も多くの回答が集まったのが「GDPRの発効と海外の個人情報保護に関するルールの整備」でした。回答理由としては、「海外との取引がある」「プライバシーポリシーの改定等、GDPR対応をしたから」などが寄せられ、対応に追われた法務担当者の方が多かったことが伺えました。
そのほか2018年6月に施行された「日本版司法取引制度」、同月に成立し、2019年4月より施行される「働き方改革関連法案」などにも注目が集まりました。
大洞 健治郎氏「GDPR施行後に日本企業が取り組むべき課題」
影島 広泰弁護士「GDPR施行後、EU域内の委託先から個人データが漏えいした場合に日本企業はどう対応するべきか」
日本版司法取引制度に関するBUSINESS LAWYERS掲載記事
早川 真崇弁護士「【連載】「日本版司法取引」が企業にもたらす環境変化」
山内 洋嗣弁護士「法務担当者のための日本版司法取引制度 - 企業が平時から準備しておくべきこと」
働き方改革関連法案に関するBUSINESS LAWYERS掲載記事
大槻 健介弁護士「【連載】働き方改革関連法が目指す社会」
BUSINESS LAWYERS読者が選ぶ、2018年に活躍した弁護士は?
2018年に活躍したと思う弁護士としては、中村・角田・松本法律事務所の中村 直人弁護士と牛島総合法律事務所の影島 広泰弁護士が同数で、もっとも票を集めました。中村弁護士は、不正融資が発覚したスルガ銀行の第三者委員会委員長を務めて事態の究明にあたったことを支持する声が多く、影島弁護士はGDPRをはじめ、個人情報に関わる知見の豊富さが、回答理由として挙げられました。
次いで票数が多かったのは西村あさひ法律事務所の有吉 尚哉弁護士で、「民法改正に関するセミナーや書籍を数多く出しているから」といった回答が寄せられました。そのほか「中小企業買収の法務―事業承継型M&A・ベンチャー企業M&A」を出版し話題となった柴田・鈴木・中田法律事務所の柴田 堅太郎弁護士やシティライツ法律事務所の水野 祐弁護士を推す声もありました。
読んでよかった記事は「民法改正関連」「AI・データの利用契約関連」「若手法務部員による座談会」
井上 治弁護士・猿倉 健司弁護士「民法改正(債権法改正)と不動産取引への影響」
山口 拓郎弁護士「製造委託契約書の書式例と民法改正に対応した条項見直しのポイント」
AI・データの利用契約に関する記事
柿沼 太一弁護士「【連載】法務担当者がおさえておきたいAI開発契約8つのポイント」
座談会「【連載】現場から見た「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」」
若手法務部員による座談会記事
座談会「若手法務部員が語る本音 修正できない契約書、マンネリ、上司・弁護士との関係も」
「2018年にBUSINESS LAWYERSで読んでよかった記事」に関する設問では、民法改正に関わる記事や、2018年6月に策定された「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」について、その作成に関わった弁護士と実際に利用する事業者の方々による座談会記事が人気でした。またAI開発契約のポイントを紹介した記事も選ばれました。
加えて、9月に掲載した若手法務部員による座談会記事を推す回答も寄せられました。同記事では、法務部で働くことに対し入社前に持っていたイメージと入社後の現実とのギャップや、上司への不満などについて赤裸々に紹介。それでも法務部の仕事は面白い、という意見も含めた率直な声が関心を集めました。
読んでよかった書籍には、幅広いジャンルの回答が集まる
2018年に読んでよかった書籍については多様なジャンルの回答がなされました。2018年の注目トピックスであるGDPR対応に関する書籍では、『Q&Aで学ぶGDPRのリスクと対応策』(中崎 尚 著、商事法務)が選ばれました。
BUSINESS LAWYERSの記事でも関心の高かった民法改正関連では、『一問一答 民法(債権関係)改正』(筒井 健夫・村松 秀樹 編著、商事法務)、『実務解説 改正債権法』(日本弁護士連合会 編集、弘文堂)が、AI・データの利用契約関連では『AIの法律と論点』(福岡 真之介 編著、商事法務)の回答が見られました。
また法務部員の日常業務に密接に関連する契約書の見直しについては『新民法対応 契約審査手続マニュアル』(愛知県弁護士会 研修センター運営委員会 法律研究部 契約審査チーム 編集、新日本法規出版)が、M&Aについては『M&Aの契約実務〈第2版〉』(藤原 総一郎 編著・大久保 圭・大久保 涼・笠原 康弘・粟谷 翔 著、中央経済社)がそれぞれ挙げられていました。
加えて、発刊後に法務パーソンの間で話題になった『企業法務革命―ジェネラル・カウンセルの挑戦―』(ベン・W・ハイネマン Jr. 著、商事法務)や、マネジメント、チーム作りという視点で『ヤフーの1on1』(本間 浩輔 著、ダイヤモンド社)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(前川 孝雄 著、ベストセラーズ)も票を集めました。
リーガルテックは、「契約書チェック」や「電子契約」、「AIによる契約書翻訳」から普及か
「所属組織でリーガルテックの活用に力を入れているか」という質問については、「はい」と答えた方が11%と、活用していると言い切れる企業は少ない印象でした。活用を進めている企業の方からは、電子契約サービスや、契約書チェックサービス、AIを用いた翻訳サービスなどを利用しているという意見が集まりました。
選択肢 | 回答数 |
---|---|
はい | 8(11%) |
いいえ | 44(59%) |
どちらともいえない | 23(30%) |
昨年11月には、AIを用いた翻訳サービスの導入によって弁護士業務を効率化し、より付加価値の高い業務に取り組んでいる日比谷中田法律事務所の山田 広毅弁護士にインタビューを実施しています。
「AIによる自動翻訳で業務を効率化し、新しい付加価値提供を目指す」
働き方改革は「テレワーク」「フレックス制度」「残業削減」への取り組みが進む
「働き方改革関連法案」の成立もあり注目が集まる働き方改革については、取り組んでいるとした回答者が半数を超えました。また働き方改革の具体策としては、「テレワーク・在宅勤務の活用促進」「フレックス制度の導入」「制度変更やツール導入による残業の削減」が挙げられています。一方で、BUSINESS LAWYERSで8月にソフトバンクの取り組み事例を紹介したような「副業制度の導入」については、1件の回答にとどまりました。
選択肢 | 回答数 |
---|---|
はい | 41(55%) |
いいえ | 13(17%) |
どちらともいえない | 21(28%) |
実施時期:2018年11月21日〜12月27日
調査対象:BUSINESS LAWYERSの登録会員(有効回答者数 75名)
調査手法:記述/インターネットによるアンケート調査