株主総会はどう変わるのか、2018年度の傾向から見る 問われる企業のガバナンスと投資家への姿勢

コーポレート・M&A

目次

  1. 多様化・実質化する株主総会
  2. 機関投資家による議決権行使の厳格化
  3. 個人株主の出席者減少
  4. 来年度の株主総会の動向予想

「コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップコード」の制定、改正により株主総会に変化が見られている。
今年度の株主総会では、機関投資家による会社提案への反対、アクティビストファンドによる株主提案や経営者への責任追及など、さまざまな点に注目が集まった。
近時の株主総会はどのように変化し、その背景には何があるのか。来年度の株主総会ではどういった動きが想定されるのか。森・濱田松本法律事務所の河島勇太弁護士に聞いた。

多様化・実質化する株主総会

今年度の6月総会について、振り返ってあらためて特色について教えてください。

全体としては、株主総会の在り方自体が大きく変化をしていると感じています。
私は、今年で弁護士としてちょうど10年目を迎えましたが、弁護士になりたての頃は、株主総会というと、不祥事等の例外的な事象がないかぎり、ひな型的な招集通知・シナリオに基づき、淡々と会社提案について可決をして終わることが大半でした。
これに対して、近時の株主総会は、会社のコーポレート・ガバナンスや投資家に対する姿勢が問われる場へと変わりつつあり、会社ごとの個性に応じた多様化・実質化が進んでいます

このように株主総会が多様化・実質化している理由は、いくつか考えられますが、大きなものとしては、安定株主の減少と、株主側(特に機関投資家)の行動の変化が挙げられるかと思います。

安定株主が減少した原因はどこにありますか。

我が国の上場企業においては、伝統的に取引関係の維持等を目的とする株式の政策保有(持合い)が行われており、会社側にとっては、これらの株式が株主総会における安定株主としての役割を果たしてきました。
しかし、2015年6月から適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードの原則1-4においては、政策保有株式の保有方針の開示等を求めることを通じて、政策保有株式を減少させることが企図されており、実際に、2015年以降、政策保有株式の比率は減少傾向にあります。

2018年6月に東京証券取引所などが公表した2017年度株式分布状況調査の調査結果によれば、2015年度と2017年度の投資部門別株式保有比率を比較すると、信託銀行が18.8%から20.4%、外国法人等が29.8%から30.2%へとそれぞれ保有比率を増加させているのに対し、都銀・地銀等が3.7%から3.3%、事業法人等が22.6%から21.8%へとそれぞれ保有比率を減少させており、信託銀行や外国法人等が政策保有の解消により市場へと放出された株式の受け皿となっていることが窺われます。

なお、今年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード原則1-4においては、より明確に政策保有株式の縮減に関する方針等の開示が求められており、安定株主の割合は今後も減少していく可能性が高いと予想されます

機関投資家による議決権行使の厳格化

株主側(特に機関投資家)の行動については、どのような変化があったのでしょうか。

2017年5月に改訂されたスチュワードシップ・コードにおいては、機関投資家が議決権行使結果を個別の投資先企業および議案ごとに公表すべき旨が定められており、現在、ほぼすべての国内大手運用機関を含む70を超える機関投資家が自ら公表を実施しています1

また、同コードの指針5-3においては、機関投資家が議決権行使の賛否の理由について対外的に明確に説明することも可視性を高めることに資すると考えられる旨が定められており、かかる賛否の理由の公表についても、一部の機関投資家が公表を開始しています。

この結果、機関投資家においては、合理的な議決権行使を行っていることを示すため、議決権行使基準の内容および運用に関して、厳格化・精緻化を図る傾向が顕著となっており、一部の機関投資家においては、会社提案に対する反対率が明らかに増加しています。
また、これらの機関投資家に対して助言を提供するISS(Institutional Shareholder Services Inc.)やグラス・ルイス(Glass, Lewis & Co.)などの大手議決権行使助言会社においても、役員選任議案を中心に、助言基準は厳格化の一途を辿っています。

上記のとおり、安定株主が減少し、かつ、機関投資家による議決権行使が厳格化した結果、会社提案に対する賛成を得ることは必ずしも容易ではなくなってきています
特に、経営トップである取締役や社外役員の選任に関しては、業績不振や独立性の欠如等を理由に反対票が投じられるケースが散見され、従前は90%以上の賛成率が普通であったのに対し、現在では70~80%程度の賛成率に留まる例も珍しくありません。

会社提案への賛成を増やすには、どういった施策が考えられますか。

近時は、会社提案に対する賛成率を向上させる観点から、様々な工夫を凝らす会社が増えてきています。
6月総会における速報値2を元に具体例を挙げるならば、株主側の検討期間を確保するため、招集通知の早期発送ウェブサイトでの開示を行う例が増加しており、法定期限である14日前に発送した会社が15.2%であるのに対し、15~20日前に発送した会社は61.4%、21日以上前に発送した会社は23.5%、発送前にウェブサイトに掲載して開示した会社は1859社(77.5%)となっています。
また、機関投資家による議決権行使の便宜のため、議決権電子行使プラットフォームを利用する会社は740社(前年比58社増)、招集通知を英訳する会社は779社(前年比40社増)と、いずれも引き続き増加傾向となっています。

さらに、招集通知の内容についても、コーポレートガバナンス・コードや投資家の関心を踏まえ、法定記載事項以外の任意的記載を盛り込む会社が増加しています。具体的には、コーポレート・ガバナンスに関する考え方や体制、役員報酬の概要や方針、取締役会評価の結果、社外役員の独立性基準、ESGに関する取組みなどを記載する例が見られます。

加えて、機関投資家の理解を得るとの観点からは、自社の株主構成を把握したうえで、主要な機関投資家について、その議決権行使基準を分析・検討するとともに、対話等を通じて会社提案の合理性を説明することが必要となっています。今年の6月には、コーポレートガバナンス・コードの改訂とあわせて、金融庁から、投資家と企業の対話ガイドラインが公表されており、今後は、かかるガイドラインも踏まえ、さらなる対話が促進されることが予想されます。

6月総会における株主提案が過去最多に上ったとも報じられていますが、どのような傾向が見られますか。

まず、目についたのが、いわゆるアクティビスト(物言う株主)による株主提案です。6月総会においては、オアシス・マネジメント・カンパニーからアルパインに対する剰余金の配当等の提案や、アセット・バリュー・インベスターズからTBSホールディングスに対する東京エレクトロン株式の現物配当の提案などが行われました。
また、近時の傾向として、個人株主からの株主提案も一定数存しており、たとえば、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループに対しては、役員報酬の個別開示等を求める提案がなされています。

これらの株主提案は、結果として、いずれも否決されたものの、中には4割近い賛成率を集めた議案もあり、会社側としては、予断を許さない状況となっています。
上記したとおり、政策保有株式の縮減による安定株主の減少や機関投資家による議決権行使の厳格化を踏まえると、株主提案が一定数の賛成を集めることは必ずしも珍しくありません。株主提案を受けた会社としては、自らのコーポレート・ガバナンスや資本政策・株主還元等に関する考え方を、適切に株主に伝えていくことが必要となるかと思います

個人株主の出席者減少

では、個人株主の動きについてはいかがでしょうか。

個人株主自体は全体として増加傾向にあります。2017年度株式分布状況調査の調査結果によれば、2017年度の個人株主数は5,129万人となり、4年連続で増加するとともに、初めて5,000万人の大台を超えたとされています。

私が担当させていただいている株主総会においても、前年に比べて株主数が増加した結果、当日の出席株主数が大幅に増加したケースが散見されました。特に、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の影響かと思いますが、若年層の出席者が増加しているように感じました。また、議場における質問も、質の高い質問が増えており、会社の企業価値向上に向けた取組みや資本政策・株主還元について、核心を突くような質問が多く見られました。

一方で、個人株主の出席者が減少しているとの報道もありました。

既に報道等されているとおり、お土産を廃止した会社を中心に、出席株主数が大幅に減少したケースがあり、多いところでは、8割~9割減少した会社もあるようです。お土産については、ここ数年、コスト削減や遠隔地の株主との公平性を理由として廃止する会社が増加しています。実際のところ、受付でお土産をもらってすぐに帰る株主や、議決権行使書の枚数に関わらず1人1個とされているのに何度も列に並び直して複数のお土産をもらおうとする株主が一定数いることは確かであり、株主総会の実質化という観点からは、廃止に踏み切る会社が出てくることもやむを得ないのかもしれません。

上記のとおり、安定株主が減少し、機関投資家の議決権行使が厳格化する状況下において、会社を応援してくれる個人株主の存在は、ますます重要なものとなっています。ただ、個人株主を呼び込むという観点からは、お土産は必ずしも唯一の手段というわけではありません。会社としては、剰余金の配当や自己株式取得等の株主還元策、株主優待や個人向けIRカンファレンスの実施など、他の選択肢を含めて、どのような施策が適切かを検討することが必要と考えられます

来年度の株主総会の動向予想

来年度の株主総会ではどんな動きが予想されるでしょうか。

まず、直近の動向として、上場企業は今年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードについて、遅くとも12月末までに改訂後の内容を踏まえたコーポレートガバナンス報告書を開示することが求められています。かかる改訂の内容としては、上記した政策保有株式の縮減に関する方針の開示に加え、任意の諮問委員会の設置(補充原則4-10①)やジェンダーおよび国際性の面を含む多様性の確保(原則4-11)等が求められており、来年の株主総会においては、これらに関する開示内容を踏まえた質問等がなされることが予想されます

また、会社法については、現在、改正に向けた議論が進んでおり、今年2月には、会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案が公表されました。来年の株主総会までに改正法が施行される可能性は低いものの、今回の改正においては、株主総会資料の電子提供制度や株主提案に関する提案数および内容の制限等に関する見直しが議論されており、株主総会実務に重要な影響を及ぼす可能性が高いことから、改正の動向については引き続き注意が必要となります。

加えて、上記したとおり、安定株主の減少および機関投資家による議決権行使の厳格化は、今後も傾向として続くと思われるところであり、会社としては、これまで以上に緊張感を持って事前の準備や当日の運営を行うことが必要といえるかと思います。


  1. 金融庁「スチュワードシップ・コード改訂への対応状況について」(2017年12月21日) ↩︎

  2. 三菱UFJ信託銀行法人コンサルティング部会社法務コンサルティング室「速報版本年6月総会のトピックス」(資料版商事法務412号6頁以下) ↩︎

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