成年後見制度見直しに係る民法改正の概要とBtoC取引への影響
コーポレート・M&A
令和8年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号。以下「改正法」といいます)が第221回特別国会で成立し、同月24日に公布されました。同時に、関係法律の整備等に関する法律(令和8年法律第46号。以下「整備法」といいます)も成立・公布されています。改正法は、平成12年の制度創設以来最大となる成年後見制度の抜本的な見直しと、遺言制度の見直し(保管証書遺言の創設、押印の任意化等)を内容とするものです。
成年後見制度の見直しに係る改正部分の施行日は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、遅くとも令和10年12月頃までに施行される見込みです。
成年後見制度というと、高齢者・障害者の権利擁護や家事実務の問題として捉えられがちですが、判断能力が不十分な顧客と日常的に接点を持つBtoC事業者の取引実務と無関係ではなく、今回の改正内容について、取引実務の観点からも検討する意義があります。本稿では、成立した改正法の確定内容を踏まえて、改正の骨子と、BtoC取引実務への影響・事業者が準備すべき対応を解説します(遺言制度の見直しは本稿では扱いません)。
改正の概要
| 法律名 | 関連資料 | 所管省庁 | 経過 |
|---|---|---|---|
| 民法等の一部を改正する法律 | 法務省 | 令和8年6月17日成立 |
改正の背景と経緯
成年後見制度は、家庭裁判所が本人の事理弁識能力(判断能力)の程度に応じて支援者を選任する「法定後見」と、本人が判断能力を有するうちに契約であらかじめ後見人を定めておく「任意後見」の2つに大きく分かれます。
法定後見を利用すると、本人は判断能力の程度に応じて単独で確定的に有効な法律行為を行う能力(行為能力)が制限され、後見人等の同意を得ずに行った行為を後から取り消せるようになります(日用品の購入など日常生活に関する行為は除きます)。任意後見は、本人があらかじめ代理権を与える契約であるため、法定後見のような行為能力の制限は原則として生じません。今回の改正の中心は前者の法定後見です。
現行の法定後見制度は、事理弁識能力の程度に応じて「後見」(能力を欠く常況)、「保佐」(能力が著しく不十分)、「補助」(能力が不十分)の3類型を設け、各類型について画一的な行為能力の制限を定めています。
最高裁判所の統計によれば、令和7年12月末時点の利用者数は後見18万828人、保佐5万8,162人、補助1万8,078人であり、利用者の約7割を後見類型が占めています 1。他方、認知症高齢者は約443万人、軽度認知障害のある方は約559万人と推計されており(厚生労働省研究班による令和4年時点の推計 2)、制度の利用者数はこれらの数字に遠く及びません。平成28年には成年後見制度利用促進法が施行され、利用促進策が講じられてきましたが、それでも利用が伸びない背景には、制度自体の「使いにくさ」があると指摘されてきました。
具体的には、以下のような課題がありました。
- 一度開始されると本人の判断能力が回復しない限り事実上終了できない(終身利用)
- 後見類型では包括的な代理権・取消権が付与され、本人の自己決定が必要以上に制限される
- 本人の状況変化に応じた後見人等の交代が実現しにくい
令和4年10月には国連障害者権利委員会から、意思決定代行制度の見直しを求める対日勧告(総括所見)もなされました 3。
こうした問題意識を背景に、令和6年2月の法務大臣諮問を受けて法制審議会民法(成年後見等関係)部会で約2年にわたる審議が行われ、令和7年6月の中間試案・パブリックコメントを経て、令和8年1月27日に要綱案が取りまとめられ 4、同年2月12日の法制審議会総会で要綱が採択・答申されました。同年4月3日に法律案が閣議決定・国会提出され、6月17日の成立に至っています。
改正までの経緯

改正内容
改正の趣旨を一言で表せば、判断能力が不十分な方の保護を「本当に必要な範囲で、必要な期間だけ」提供する制度への転換、すなわち「画一・終身」から「個別・必要な期間」への転換です。本稿では事業者の取引実務への影響を以下の6点に整理して説明します。
| 主な改正点 | 参照条文 | 企業への影響度 |
|---|---|---|
| 3類型の廃止と「補助」への一元化 | 9条(及び13条から19条までの削除) | ◎ |
| 包括的代理権の廃止 | 11条 | ◎ |
| 同意権・取消権の個別付与化 | 9条 | ◯ |
| 「特定補助人を付する処分」の創設 | 10条 | ◯ |
| 「終われる制度」への転換 | 12条 | ◯ |
| 意思表示の受領能力の対象縮小と意思表示の受領のための特別代理人制度の新設 | 98条の2、98条の3 | △ |
今回の改正のキーワードは「個別化」と「柔軟化」です。本人の権利擁護・自己決定の尊重という観点からの大きな前進であると同時に、事業者には、画一的な処理から個別の状況把握へという、実務オペレーションの質的なアップデートが求められます。
施行スケジュール
成年後見制度の見直しに係る改正部分の施行日は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、遅くとも令和10年12月頃までに施行される見込みです(具体的な施行日は本稿執筆時点で未定です)。
なお、現行制度の利用者のために、改正法附則において経過措置が定められています。経過措置の詳細については後記3-1で解説します。
改正の骨子 − 6つの構造的変化
3類型の廃止と「補助」への一元化
後見・保佐・補助の3類型が廃止され、制度は「補助」に一元化されます。民法から成年後見・保佐に関する規律は削除され(未成年後見は存続します)、これまでの成年後見人・保佐人に相当する支援者はすべて「補助人」となります。これにより、本人ごとに、必要な権限を必要な範囲で設定する個別設計型の制度への転換が図られます。

包括的代理権の廃止
現行民法859条1項に基づく成年後見人の包括的代理権は廃止され、代理権は特定の法律行為ごとに、必要性を吟味したうえで個別に付与されます(代理権付与の審判)。「後見人と話せばすべて完結する」という現行後見類型の運用は通用せず、選任された補助人に「どの行為について代理権があるか」を確認するという個別対応が原則となります。
同意権・取消権の個別付与化
同意権・取消権も、原則として特定の行為ごとに個別に付与されます(補助人の同意を要する旨の審判)。改正法は、設定可能な行為として、以下の11項目を列挙し、家庭裁判所がこの中から本人に必要なものを選択して設定します。同意を得ないでした行為は本人または補助人が取り消すことができ、日用品の購入その他日常生活に関する行為は対象外とされる点は現行と同様です。
- 預貯金の預入れ・払戻しの請求
- 元本の領収・利用
- 借財・保証
- 居住用建物の大修繕の請負契約その他の重要な役務提供契約の締結
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- 訴訟行為
- 贈与・和解・仲裁合意
- 相続の承認・放棄・遺産分割
- 贈与の申込みの拒絶等
- 民法602条の期間を超える賃貸借
- ①〜⑩を本人が他の制限行為能力者の法定代理人として行うこと
個別付与の仕組み自体は現行の保佐・補助にも存在するもので目新しくはありませんが、利用者の大半を占めていた後見類型が廃止され、全件が個別付与となる点に量的なインパクトがあります。
「特定補助人を付する処分」− 例外類型の創設
補助への一元化を図る一方で、現行の後見類型が対象としていた、事理弁識能力を欠く常況にある方の権利擁護のために、例外的な仕組みとして「特定補助人を付する処分」(特定補助の仕組み)が創設されます。この処分を受けた本人が特定補助人の同意を得ることなく上記11項目の行為(日常生活に関する行為を除く)をした場合、本人及び特定補助人がこれを取り消すことができます。さらに家庭裁判所は、必要があれば11項目以外の特定の行為にも取消しの対象を拡張できます。
現行後見類型との違いとして実務上決定的に重要なのは、特定補助人の権限が「取消権」「意思表示の受領」「財産に関する保存行為」に限定されており、代理権を当然には持たないという点です。代理権が必要な場合は、別途、個別の代理権付与の審判が必要になります。現行の成年後見人のイメージで「特定補助人と話せば契約締結も解約もできる」と考えることはできません。
「終われる制度」への転換
現行制度では、本人の判断能力が回復しない限り制度はほぼ終了しませんでした。改正法の下では、判断能力が回復していなくても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権により審判が取り消され、制度利用が終了します。
たとえば、遺産分割や保険金請求など特定の目的のために制度を利用し、目的を達したケース(いわゆるスポット利用)や、家族信託・任意後見等の代替的な支援体制が整ったケースなどが典型と考えられています。補助人には年1回の家庭裁判所への定期報告が義務づけられ、この報告が必要性見直しの契機として位置づけられています。
「終われる制度」への転換は、補助制度を利用する本人や補助人と取引する事業者にとっては、補助人の権限の確認が一度きりでは済まないことを意味します。
意思表示の受領能力の対象縮小、意思表示の受領のための特別代理人制度の新設
意思表示の受領能力に関する現行民法98条の2は、意思表示の相手方が意思無能力者、未成年者または成年被後見人であったときには、その意思表示をもってその相手方に対抗できないことを定めています。
改正法は、同条の適用対象を「意思能力 5 を有しなかった者」「未成年者」「特定補助人を付する処分の審判を受けた者」に限定しており、通常の補助開始の審判を受けた本人は、受領能力の制限を受けません。つまり、通常の補助を利用している顧客に対する通知は、意思無能力でない限りは、本人宛てに行って本人に到達すれば足り、受領能力の制限を理由にその対抗を否定されることはありません。他方、特定補助人を付する処分を受けた本人に対しては、特定補助人への到達(またはその認識)が必要です。
また、事理弁識能力を欠く常況にあるが誰も支援者がいない相手方に意思表示をする必要がある場合のために、表意者 6 の請求により家庭裁判所が「意思表示の受領のための特別代理人」を選任する制度が新設されました(受領特別代理人制度。改正民法98条の3)。契約解除通知を送達できないという事業者側の隘路に対応する制度であり、実務上注目されます。
その他の改正点
このほか、実務に関わる改正点として以下の事項が挙げられます。
- 補助人の解任事由に「本人の利益のため特に必要があるとき」が追加され交代が容易に
- 補助人に本人の意向把握(情報提供・陳述聴取等)の義務づけ
- 報酬決定の考慮要素として事務の内容等を明文化
- 火葬・埋葬契約の締結や相続財産の保存行為など死後事務の権限を整備
- 任意後見制度の柔軟化(予備的受任者の仕組み、補助との併存許容、監督人を選任しない直接監督の許容等)
BtoC取引実務への影響
以上の構造変化は、小売・EC、通信、金融、保険、役務提供など、消費者と直接契約を締結する事業者の実務にどのような影響を与えるでしょうか。以下では事業者が押さえるべきポイントを5点に整理します。
既存の後見・保佐類型の顧客への対応 − 経過措置を正確に理解する
前述のとおり、現行制度の利用者の大半は後見類型です。事業者は、後見類型を利用している既存顧客の施行後の位置づけを知るために、経過措置(附則)の規定を理解しておく必要があります。
本改正に伴う経過措置の整理は次のとおりです。
第一に、施行日時点で利用中の後見・保佐は、基本的には現行法の内容のまま利用が継続されます(附則2条1項・3条1項)。既存の成年後見人の包括的代理権が施行日に消滅するわけではありません。ただし、解任事由(本人の利益のため特に必要があるとき)と本人の意向把握・尊重義務については改正後の民法が適用されます(附則2条2項3項・3条2項)。これに対し、既存の補助は、施行日以後、自動的に改正後の補助制度に移行します(附則4条)。
第二に、新制度に移行したい場合は、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人・保佐人等の申立てにより改正後の補助制度の審判を受けることができ、この場合、従前の後見・保佐開始の審判は取り消されます(附則2条4項6項・3条2項)。
第三に、制度利用を終了したい場合は、後見・保佐開始の審判の取消しを申し立てることができます(附則2条7項・3条2項)。「終われる制度」への転換は、既存の後見・保佐利用者にも及ぶということです。
事業者の取引実務において重要なのは、施行後しばらくの間は、〈旧法に基づく後見・保佐〉と〈新法に基づく補助〉が並走するという点です。しかも、旧法に基づく後見を受けている顧客がある日突然、新法に基づく補助に移行したり、制度利用を終了したりすることがありえます。「この顧客は成年後見の利用者だから後見人に連絡すればよい」という固定的な運用は通用しなくなり、取引時点での権限確認がこれまで以上に重要になります。なお、制度利用の終了後に本人と取引する場面が増えることも見据え、取引記録・確認記録の保存体制を整えておくことが望まれます。

「特定補助人=何でも代理できる人」ではない − 社内リテラシーの定着
改正後の実務で最も誤解が生じやすいのが特定補助人の位置づけです。特定補助人は現行の成年後見人の後継的な存在に見えますが、前述のとおり成年後見人とは異なり代理権を当然には持ちません。
たとえば窓口に特定補助人を名乗る方が来店し、本人のための契約締結や解約を求めてきても、その行為について代理権付与の審判を受けていなければ、特定補助人は代理できず、締結された契約は無権代理 7 となります。
したがって事業者としては、以下の運用を徹底することが必要です。
- 「特定補助人」という新カテゴリーの存在と権限の限定を社内に周知する
- 代理権の有無・範囲を登記事項証明書(代理行為目録)で個別に確認する
登記事項証明書は後見登記等ファイルに基づき法務局が発行するもので、誰が・いつから・どのような権限を持つ支援者であるかが記載されます。不動産登記と異なり、取得できる者が本人・一定の親族・補助人等に限定されているため、事業者は補助人側に提示を求めて確認することになります。この確認フローを、契約締結時・解約時・高額取引時の標準プロセスに組み込んでおくべきです。
通常の補助への対応量の増加 − 確認実務の体制整備
後見類型の廃止により、中長期的には、判断能力が不十分な顧客の多くが「通常の補助」の利用者として事業者の前に現れることになります。確認実務の中身自体は、現行の保佐・補助対応で既に存在するものです。すなわち、「補助人が代理人として来店すれば登記事項証明書の代理行為目録を確認し、補助利用中の本人と直接取引する場合は同意行為目録を確認して、当該取引が同意権の設定範囲に含まれるかを判断する」という既存実務が、件数として大幅に増えることへの備えが求められます。
個別確認が特に重要になるのは、同意権の対象となりうる高額・長期の契約類型です。典型例としては以下のような類型が挙げられます。
- 小売・ECにおける一定額以上の高額商品販売(家電、家具、貴金属等)
- 通信における長期サービス契約や端末の分割払い
- 金融機関における多額の預貯金払戻し・各種ローン・投資信託や保険商品の販売
- 保険契約の締結・解約
- エステ・フィットネス・学習塾等の中長期役務提供契約
ここで2点、強調しておきます。
第一に、過度な萎縮は適切ではないということです。同意権の設定範囲外の行為は、補助開始の審判を受けた本人が単独で有効に行うことができます。「補助を利用している」という事実のみをもってあらゆる取引を拒否したり一律に慎重化したりすることは、ノーマライゼーションという制度趣旨に反し、顧客対応としても不適切です。重要なのは、当該取引が同意権の設定範囲に含まれるか否かの個別判断を行うことです。
第二に、事業者が「本人が行為能力の制限を受けていることを知らなかった」という抗弁は通用しないということです。行為能力の制限を理由とする取消しは、取引の相手方の善意・悪意や過失の有無を問わず認められるのが原則です。だからこそ、事業者としては、事前の登記事項証明書確認が欠かせません。また、取り消しうる行為の相手方には催告権が認められます。改正法は民法20条4項の規律を整備しており、相手方(この場合は事業者)は、同意を要する旨の審判を受けた本人に対し、所定の期間内に補助人の追認を得るべき旨を催告することができ、その期間内に追認を得た旨の通知が発せられないときは、当該行為は取り消したものとみなされます。取引の効力を早期に確定させる手段として、催告書のテンプレートを整備しておくことも実務的な自衛策となります。
意思表示の到達ルールの整理 − 通知実務はむしろ簡素化
前記2-6のとおり、本改正によって、通常の補助を利用する顧客への意思表示は、本人宛てに行えば足り、受領能力の制限を考慮する必要がなくなります。月次請求書、契約解除通知、料金改定通知、契約更新通知等の各種通知について、現行の後見類型で必要だった「後見人への到達」という考慮が、通常補助の顧客については不要になるのです。これは事業者にとって実務簡素化の方向の改正です。
もっとも、特定補助人を付する処分を受けた顧客については特定補助人への到達が必要であることと、通常の補助を利用する顧客でも、受領時に意思能力を有しなかった場合には意思表示を対抗できないこと(民法98条の2本文)には注意が必要です。
施行までの準備事項としては以下が挙げられます。
- 通知管理システムや業務マニュアル上、顧客の属性(通常補助/特定補助)に応じた宛先ルールを区別して整備する
- 支援者が誰もいない意思無能力の顧客への重要な通知(解除通知等)については受領特別代理人制度(前記2-6)の利用を検討する
意思能力確認の重要性増大と代替制度への接続
最後に、やや中期的な視点です。制限行為能力制度の網が「個別・必要な範囲」に縮小することの裏返しとして、意思能力(民法3条の2)の問題が相対的に前面に出てきます。同意権の設定範囲外の行為であっても、取引時に本人が意思能力を欠いていれば当該行為は無効であり、これは改正の前後を通じて変わりません。
しかし、後見類型が消え、判断能力が不十分な顧客の多くが限定的な保護しか受けないことになれば、同意権の設定範囲外の取引について、意思能力の有無がより直接的な紛争リスクとなる可能性があります。たとえば高額取引時の意思確認記録の作成、家族同席の運用、必要に応じた録音・録画といった意思能力確認の実務は、改正後むしろ重要性を増すものとして、継続的に整備すべきです。
また、「終われる制度」の下で、家庭裁判所が必要性消滅を理由に審判を取り消す際には、本人の権利擁護に欠けることのないよう、任意後見契約への移行、家族信託、財産管理委任契約、親族による支援体制といった代替的な支援体制の存在が確認されたうえで判断されることになると考えられます。
改正後は、任意後見人・家族信託の受託者・財産管理の受任者と取引する場面の比重が増す可能性が高いといえます。各制度の権限確認の方法は以下のとおりです。
- 任意後見:登記による公示あり
- 家族信託:信託契約の内容次第
- 財産管理委任:登記制度がなく書面の信頼性が論点
このような各制度の法的根拠と権限確認の方法を踏まえた確認実務を整え、社内リテラシーを高めておくことが望まれます。
BtoC事業者の対応ポイントと施行準備チェックリスト
BtoC事業者の対応ポイントとして改めて強調しておきたいのは、改正は事業者を萎縮させるものではないということです。同意権の設定範囲外の行為について、本人は通常どおり有効に取引できます。3-3で述べたとおり、制度の趣旨はノーマライゼーションであり、判断能力が不十分な方の経済活動を不当に制約することはかえって制度趣旨に反します。事業者には、リスク回避のための過度な萎縮ではなく、制度の趣旨に沿った合理的な実務設計を進めることが求められます。
施行までの2年余りの準備期間を、そのための助走期間として活用していただきたいと思います。
施行までの事業者対応チェックリスト
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社内周知・研修(3類型廃止、特定補助人の権限限定)
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登記事項証明書の確認フロー整備(契約・解約・高額取引時)
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催告書テンプレートの整備
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通知宛先ルールの更新(通常補助/特定補助の区別)
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意思能力確認実務の整備(記録・家族同席・録音録画)
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代替制度(任意後見・家族信託・財産管理委任)の確認実務整備
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既存後見・保佐顧客のステータス管理(移行・終了の把握)
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最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 − 令和7年1月〜12月 − 」 ↩︎
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厚生労働省令和5(2023)年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究報告書」(研究代表者:二宮利治) ↩︎
-
国際連合「障害者の権利に関する委員会 日本の第1回政府報告に関する総括所見」8頁 ↩︎
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法制審議会民法(成年後見等関係)部会「民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案」(令和8年1月27日決定) ↩︎
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意思能力とは、自分の行為の結果や意味を認識・判断できる能力のことをいいます(民法3条の2)。意思能力を欠く状態で行った法律行為は無効となります。 ↩︎
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表意者とは、契約などの法律行為において、自分の意思を相手に伝える「意思表示」を行う側の当事者をいいます。これに対し、意思表示を受け取る側は「相手方」と呼ばれます。 ↩︎
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無権代理とは、代理権を有しない者が、本人に代わって契約締結などの法律行為を行うことをいいます。原則として本人に効果は帰属せず、本人が追認しない限り、行為をした者自身が責任を負うことになります(民法113条以下)。 ↩︎
堂島法律事務所